「映画にならないものを映画にした」PERFECT DAYS ブログ「地政学への知性」さんの映画レビュー(感想・評価)
映画にならないものを映画にした
日本人だけの世界を外国人監督が制作したこの映画を自分なりにどう表現したらいいのか、考えさせられる。映画を見てしばらく考えても、答えが見つからない。この映画が高く評価されたのは平山さんを演じた役所広司氏をはじめとする質の高い俳優たちのさりげない日常を自然に演じ切っているところだけではなく、脚本や日常の風景の描写に至るまで映画通の心を動かす要素があったということなのか。
たいていの映画で表現されている世界は非日常的なものである。日常的な要素がないわけではないとは言わないがここまで日常の表現に徹する発想は新鮮であった。
平山さんの愚直なまでのPerfect Daysはいつの間にか鑑賞する人の心を捉え、味方にしてしまう。そのPerfect Daysを大き過ぎないー大笑いするようなものではなく、拳を握るほどのことでもなく、涙が出るほどでもないー喜怒哀楽が揺さぶろうとする。そんな日常を平山さんは記憶に刻みつけていく。それでもPerfect Daysは続いていく。ただ、そのPerfect Daysは木漏れ日のように同じように見えても同じものは一つもない。
普段映画を見るときに持つ期待感は全く裏切られたが、生きている人の背中を優しく押してくれている気がした。こんな映画を好きになれる人たちと友達になりたいものだ、と感じたのは筆者だけではないだろう。
humさん、共感とコメント・フォローまでありがとうございます。私もhumさんの映画へ深い洞察に感心しています。大きすぎない喜怒哀楽と私は表現しましたが、この映画のなかで起きていることはPerfect Daysを揺さぶる程度の出来事、これまでの人生で必死に何かを積み重ねて、それが崩されてというような経験を経てきた人にとっての出来事と言うことを端的に書いたつもりです。私の一番のお気に入りシーンは「三目並べ」のコミュニケーションです。
日常を愛でることができる平山さんのまなざしの温かさが胸にのこります。樹木(大きな友達)や断って貰ってくるひこばえの盆栽(小さな友達^_^)を大切に想う姿は生命への慈しみや愛に満ち、周りの人々対しても同じ。おそらく2度と会えない父を想う気持ちも根っこの部分では同じなのでしょうね。ラストの複雑な表情に、誰しもが折り合わなければならない事がある人生を感じ胸が締め付けられ、〝生きている人の背中を優しく押す〟。共感いたしました。