劇場公開日 2023年12月22日

「公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手」PERFECT DAYS marcomKさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手

2024年1月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

中年独身男性トイレ清掃作業員の規則正しい日常。その作業場は、複数の建築家が丹精込めてデザインした一品もののデザイントイレ。中が丸見えで、鍵をかけるとガラスが一瞬で不透明になるトイレや、杉板小幅型枠のテクスチャの美しいRC打ち放しのトイレ、
童話に出てきそうなキノコ型や逆円錐型トイレ等々、その中には最新型のシャワートイレが設られていて、それらを職人芸のようにピカピカに磨き上げるのが彼の仕事だ。早朝街路を清める竹箒の音で目覚め、霧吹きで植栽に水を与え、自販機で缶コーヒーを買い、軽自動車で出勤する。東京渋谷、複数のトイレを車で移動。その移動の際に車内でかけるのがカセットテープで、激渋のセレクション。昼は鎮守の森の樹下で昼休みとフィルム写真撮影。仕事は日が暮れる前に終えて、銭湯の開店と同時に風呂を浴びて、レトロな地下街の飲み屋で晩酌、寝る前に本を読む。
そんな清貧を絵に描いたようような日常に、大事件が起こるわけでは無いけど、ざわざわと割り込んでくるのはやはり人間達だ。先ずはトイレの利用者、掃除中の看板を倒したまま去る若い男性、個室に閉じこもってた男の子を手を繋いで出してあげるけどそこに登場する余裕の無いヒステリックな母親・除菌ティッシュ。クズのような同僚清掃員、その耳が好きな子、なんか抱えてそうなガールズバー嬢。突然現れる親戚の女の子、その母親は運転手付きの車で女の子を迎えに来る。そう、彼は昔はそっち側に住んでいたのだろう。
休日には作業着をランドリーに持っていき、写真を現像に出し、引き取った写真を選別する。木漏れ日の撮影はファインダーを見ずに撮るので偶然の産物。そして小料理屋で一杯。そこのママがギターの伴奏で歌うんだけど、めちゃ上手いんだ、それは見てのお楽しみ。三浦友和もいい仕事してます。

公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手。東京の中でも再開発されたピカピカの建築群でなく、小さなデザイントイレと、人々の息遣いがある下町、街中の鎮守の森、それらを繋ぐ首都高...を上手く絡めてくれた監督に拍手。エンドクレジットの最後に、小粋なオマケがあるのでお楽しみに。

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marcomK