「作為的」PERFECT DAYS かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
作為的
トイレ清掃員として働き、裕福でもなく特段の変化があるわけでもないが豊かで満ち足りた、男の日常の「幸せ」が淡々と描かれている、そして同じように見えても、毎日何かしら起きて、一日たりとも同じ日はないことが分かった、などの評価、というか感想を想定して作られたような映画と思いました。平山のような生活は、理想の生き方のひとつでしょう。
映画そのものに関して、辛辣になってしまって申し訳ないですが、いろいろ、あり得ない。
強引にきれいごとを並べただけ、な気がする。
リアリティーが感じられなく、いちいち作為的で、なんか鼻につく。
主人公が住んでいるアパートがこれでもかとボロい(取り壊し待ちのレベル)、相棒に金を貸したらガス欠になり大事なカセットを売りに行くとか(どう考えても位置的にムリがある)、姪を迎えに来た妹が、運転手付きの高級車を使っていたり(今どきこんな人いる?)、いい加減なやつと思った相棒が障害者に優しい、(実はいいところもある、の描写に障害者を出してくるんだ?)とか、なんかもう、作為的です。
役所広司の年代なら、年金をもらいながら清掃業すれば、風呂なし洗濯機置き場なしだが都内に立地するボロアパートの家賃を支払い、自家用車を持ち、駐車場を借りて、銭湯へ行き、コインランドリーで洗濯、毎日コンビニでお昼を買い、その上行きつけの居酒屋で毎日のように一杯やって、時々美人のママのいる飲み屋にも行くような生活ができるかもしれない、とそこだけは妙に納得しました。
何度も挿入される木漏れ日の映像、ただ木漏れ日を撮るのが好きなだけ?
主人公が眠りについたときに現れる心象風景のような映像も、特に意味もなく肩透かしでした。
トイレ掃除するのに素手で始めるのにびっくりした。手袋しないのか? 特に、コロナ禍を経た今、素手というのはありえないと思う。汚れた作業着を洗わずに吊っておくだけっていうのも、衛生観念上大きく違和感があり、こういう人がいたら本人的には完璧に幸せかもしれないが、あまり近づきたくない。
毎日の描写が延々続くが、いつになったら終わるんだろうかと思ってしまった。
そもそも、日常の小さな幸せに満足して満ち足りて生きている人を描写するのになんで「トイレ清掃員」なんだろう。底辺に見られがちだが実は満ち足りて幸せです、というテンプレみたいだけど、トイレ清掃員の何を知ってるんだろう。上から目線で失礼な感じがする。
そこそこのお年を召した外国人映画監督が思い込んだ美しい日本と日本人な感じで、私には違和感が多々ありました。
(追記)
星をつけたときになにかのはずみで1.5になっていました。
大変失礼しました。
多くの人にとって、PERFECTな日々を送るには生活の心配がないことだと思うので、意外と浪費家な平山の生活を支える収入の点で説得力のある描写があれば、それと掃除するトイレがあんなにおしゃれで綺麗じゃなくてありがちな汚さ臭さの描写があったら、もっと星多くつけられるのにと思いました。(トイレプロジェクトの一環なのでそれはムリでしょうが)
全く同じく感想でした。
なんだかジム・ジャームッシュの「パターソン」(大好き)に良く似た物語で、しかしこちらは始終白人目線というか日本贔屓の白人監督が撮ったトーキョーのガイドブックみたい。
四畳半風なのに二階建てっぽい謎間取りのアパート。。
素手での掃除もあり得ませんが、作業中以外でユニフォームを着っぱなし(不衛生のばらまき)。。
なぜ今どきまだカセットテープ。。
独特な日本語として割と有名な「木もれ陽」の多用。。
主人公の俳優がでんでんとかならまたイメージが違ったかもしれませんが、最初っから違和感ばかりが目についてしまい終わりまでが長かったです。
底辺の職業を描きたかった意図にトイレ清掃員っていうのがね。。
かばこさんその通り!
全くもって大した映画ではないですね。おまけに、とってつけたように、ある方が遊びで出演していらっしゃいます。なめとんか!と思ってしまいました。(笑)
MMさん
共感とコメントありがとうございます。
「日常の生活の描写」がキモになるような映画なのに、肝心の日常の生活にリアリティがないのは致命的な気がします。おじさんの願望、ということで納得する向きもあるのでしょうが、少なくとも私のハートには響きませんでした。そもそも、それほど大した映画とも思えません。
制作サイドの外人向けの賞狙いが垣間見えてしまいました。
役所さんの演技に最大限助けられてはいますが、おそらく駅のトイレや、街中の公園、雑居ビルを使ったことのない裕福な方が作ったらこうなるのでしょう。
ハッキリいって嘘くさい。言いたいことはわかる気もしますが、それを感じさせるにはそれなりの本当のリアリティがでなければハートに響かない気がします。
talismanさん
差し色の赤、そういう視点でみたことがなかったので、とても新鮮です。ありがとうございます。
「モテたい」は願望の中でも密かに最強なのかもですね、そっか、そっか。
なんか微笑ましくなりました
トイレ掃除の最初のゴミ片付けを手袋無しでやってたことに私もとても驚きました。あとご指摘の「なぜか女にもてる」問題!男性の果てしない夢なんでしょうね。それから自炊しないこと、自販機の缶コーヒー、コンビニ(?)のサンドイッチ、毎晩の飲み屋通いとか、車は必要としても駐車場代含めてお金かかる日々だなあと思いました。小津監督を敬愛してる監督が作った小津的映画と思って見ました。だから差し色の赤色探しばかり最初はしてました
fさん
コメントありがとうございます。
清貧でありながら枯れてない、女性にモテる。
「モテる」って男性にとっては重要なポイント!と思われます。
これはもう、おっしゃるとおり、「おじさんの夢」だって気がしますね。(おじさんにはもちろん監督も含まれてます。)
ツッコミ入れてるかばこおばさんは、無粋かもです(笑)
あまりの高評価に私の感性がおかしいのか?と思っていたところにかばこさんのコメントを拝見して、だよね!!と声が出てしまいました。
平山さんの日常から感じるのはこだわりの強さとプライド高さしかなく、頑なに自炊しないところも地に足ついた生活ができない人なんだろうなーと、何より毎朝髭を整えてるのがこのおっさん全然枯れてないなーと笑ってしまって、その証拠にやたらモテるし、美人ママとこれから何か起こりそうな匂わせもあり、なんというかおじさんの夢を凝縮したようなファンタジー映画だなという感想。ファンタジー映画なのでツッコミ入れるのは無粋なのかもしれないなと思ったりしてます。
こちらにもコメントありがとうございました! いえいえ気を悪くなんてもちろんしませんですよ! 僕も今は亡き某映画サイトで、たまに新版のサスペリアとか実写版アラジンとかに1とか付けたりしてたので(笑)。なにに我慢ならないかは人それぞれです。まあ僕は根が単純なので、日本の良いところを褒められたら、それだけでほっこりします。ダメな日本人の典型ですね……。むしろ、いずれのご指摘も的を射ていておっしゃるとおりだと思いました。
femme fatalさん
コメント返し、ありがとうございます。うれしいです。
ここだけの話ですが、実は私も欲と煩悩の塊です。
映画は映画館で見たいし、美味しいものも食べたい、旅行にも行きたい。自分の気分が良くなるよう買い物もしたいです。
平山さん、エッセンシャルワークで適度に働いてあれだけの生活ができるなら幸福度高いと思います。私はフルタイムで働いていますがコンビニのサンドイッチなんてめったに買えません。毎日手作りのお弁当です。
かばこさん
コメントありがとうございます。
私は欲の塊だし、まだまだ人生長いと思っているのに、この年だとあの境地に達しないといけないのか、と実は愕然としておりました(笑)
masaさん
コメントをありがとうございます。
リアリティーだけでは面白くならないというのは、私も同感です。
メルヘンであっても、(どんな傾向のものかにもよりますが)説得力を持つ程度のリアリティーがあれば、より共感が持てるものになると私は思います。
映画にしろ、小説にしろ、リアリティだけでは面白くならないのでは?
個人的には、この作品は日本人や文化の美化というより人間としての生き方の理想を描いたメルヘンとも取れましたが…
トミーさん
こちらこそ、共感とコメントありがとうございます。
トンデモ日本と日本人も多いのに、日本人の美しさをリスペクトして好意的であるのは嬉しいですが、外国人から見たいいところを完備した架空の日本人像に近いような気もするんです。
ジュンヤさん
サッカーの遠征試合で日本の観客が、たとえ負け試合でも観客席をきれいにして立ち去るような、日本人の美しさに目が行って、平山にそれを投影した感じはあります。外国人ゆえの日本人感で、好意的なのは間違いないのですが、描きたい日本人像を成立させるために無理くりが目立つし、諸々作為的で、素直に素晴らしいとは言えないんですよね。
共感&コメントありがとうございます。
トンデモ日本を描いた映画は多々有りますけど、今作は細部に出てるのかもしれませんね。まぁ外国人の目ですから、真っ先にキレイな所が飛び込んで来るんでしょう。
コメントどうもです。
木漏れ日の心象風景の意味のなさは、私もポカーンとしました。
ほぼ同意なんですが時間をおいて少し考えると、外国人から見た日本の姿に強引に理由をつけると、こういう解釈もあるのかなと思いました。
日本のエッセンシャルワーカーは先進国の中ではかなり薄給なのに、働いている人は礼儀正しくて、仕事は真面目。
だからトイレは綺麗だし、飯は安くて美味い。独身者も多いが犯罪は少ない。
この条件を満たそうとすると、平山さんみたいな人物像になるとかね。
まあ仰る通り、作為的で素直に素晴らしいと思えないですね。