「作家映画というよりブランド映画?」PERFECT DAYS シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
作家映画というよりブランド映画?
多分今年最後の劇場鑑賞作品ですが、さて何から話しまょうかねと少し迷ってしまう様な作品でした。
ヴィム・ヴェンダース監督って私には初期の名作しか記憶が無くて、どんな監督だったのか?、どんな映画を見て感動したのか?そうした問いかけに対して即答できない監督なので、嫌いではないが自分の中で消化しきれてない監督の一人なのでしょう。
本作も見終わって、嫌いではないし、鑑賞中も色々な事を考えたし、良い映画だとも思いましたが、感想となるとなにを言ってよいのか難しい作品ですね。
例えば、海をずっと眺めている人がいたとするじゃないですか。そういう人の頭の中って百人いれば百通りで、人それぞれに全く違う事を考えているのと同じで、この映画も多分そんな海を眺めている様な作品なんだと思いますよ。
ただし、映画サイトのレビューの高評価を見てしまい意地悪な見方になってしまったのですが、本作ちょっとお洒落過ぎの様な気もしましたし、本当に分かっているのかね?って気分にもなってしまいました。
よく村上春樹の本を出版されたら直ぐに、カバーもせずにこれ見よがしに純喫茶でお茶をしながら読書している2~30代のサラリーマン的な、ちょっと軽薄な感じも重なってきましたからね。
音楽の使い方もカッコイイしお洒落だしねぇ~(笑)
本来、この物語の設定と役者の演技には見る者によって全く違った感情を呼び起こすだけの複雑さを含んでいる筈なのに、通り一遍の絶賛レビューが並んでいるのを見てしまうと、ついそんな疑念を抱いてしまうのです。
私はたまたま主役の役所広司と同学年なので、本作の主人公の平山も同学年と仮定して見ていたのですが、今の自分が平山の境地に達することが出来るのか?を考えると答えは「無理」でしたね。60代後半にあの仕事であのシフトはキツ過ぎて、現実的には90%無理だと思います。あと、この年齢ならではの高齢の親の面倒という宿題があり、平山の様な生き方はかなり例外的なものであることは間違いない。
しかし、平山の生き方(スタイル)に対してこれほどに共感する社会とは、現実の日本人を眺める限り考え難いし、感想なども美化し過ぎの様な気がしました。
作品に共感・感動するのは勝手ですが、実際に彼の様な生き方に誰も憧れていないから今の日本(人)がある訳でしょ。
なので日本人の私にとっては作品そのものよりも、気軽に絶賛する(日本人)鑑賞者に対しての疑念を呼び起こす作品であったようです(苦笑)
まあ、日本好きの外国人監督が作ったのだから、当然日本に対しての敬意やら、自分の感じた日本の特質などを真摯に描こうとしているのは理解出来ましたし、この作品の根底にある哲学的な「幸福とは」についての示唆するモノに対しても賛同できるし、決して反対するものではありませんでしたが…