「本当にいい映画なのに! 「トイレの清掃」というせっかくの舞台背景が渋谷区のプロジェクトのせいで、「ただの上辺だけのオシャレでキレイな映画」になりかねない残念さ。」PERFECT DAYS ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
本当にいい映画なのに! 「トイレの清掃」というせっかくの舞台背景が渋谷区のプロジェクトのせいで、「ただの上辺だけのオシャレでキレイな映画」になりかねない残念さ。
「トイレの清掃」を仕事にしている老齢で独り身の男の変わらない日常、変わらない毎日。
しかし、少しずつ小さな変化は毎日ある。
まるで木漏れ日の光と影が、一瞬ごとに違うように…。
この大きなことが何もないように見えるシーンの連続が大事な映画。
そこに「響く」人もいれば、何も起きない退屈でフランス映画風のスカした映画と思う人もいると思う。
それでいいと思う。
自分には深く響いた。
別にわかった風を気取るつもりもありませんが。
特に役所広司の表情を魅せる長回しのカット。
本当に難しいと思うが、よく、よく味わった。
主演の役所広司がエグゼクティブ・プロヂューサーを兼ねて、あのヴィム・ヴェンダースと組んで、納得のいく作品作りに動いたのも効いていると思う。
日本の役者も、もっともっと自分が演じたい作品を創るためにアクティブになっていいと思う。
その方が絶対面白い!
但し、惜しむらくは、「トイレの清掃」という、せっかくの舞台背景が、渋谷区のプロジェクトのせいで、「おしゃれできれいな映画」になってしまった残念さ。
もっと普通の誰もが見かける公衆トイレもたくさん出さないと、リアリティがない。
別に、汚いところを無理に見せる必要はない。
普通のトイレを清掃しているシーンをなぜ出さないのか。
何をカッコつけてんだ。
そんなにカッコイイキレイな部分だけを見せたいのか。
だから、役所や大企業が関わるとろくなことはない。
本当に台無しにしているという、凄く分かりやすいことになぜ気づかないのか。
皆、全力でいい映画を創ろうとしているのに!と怒りが込み上げてきた!!
kazzさんコメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、トイレ清掃員でなくてもいいお話でした。
『「TOHO CINEMAS BOAT」は TOHO シネマズと東宝が実施する、未来ある⼦供たちに向けた映画体験による「思考形成」プログラム』で、本作とコラボ、トイレの「清掃体験」、スクリーンでの「映画体験」などをしてるそうです。映画パンフレットで紹介されておりました。レビュー文を一部修正いたしました。
確かにあの綺麗な公衆トイレは違和感ありましたが、 トイレ清掃員だから…という物語でもなかったかな、と。
THE TOKYO TOILET プロジェクトのPR映画として企画が開始されたものらしいので、他のトイレというわけにはいかなかったのでしょう。
TOHOシネマズのプロジェクトではないと思いますが、そうなんですか?
ヴェンダースの初期出世作で3時間以上ある『さすらい』という作品の冒頭で、主人公が平原で野糞をするシーンでモザイクも何もなしでモロお尻からウンコが垂れるシーンがありました。あれから45年が経ち作風も上品に(特に日本企業に)塗り固められたんでしょうね。その次の『都会のアリス』という映画にもウンコをする少女が臭いを消す為にマッチを擦るシーンがありました。(こちらは直接的な排泄シーンはありませんが。)
三輪たかしさん コメントありがとうございます。ただ、この映画の企画自体が渋谷区の事業ありきの企画というジレンマを抱えているというのが難しいところです。
たしかに普通のトイレで良かったと思います。それこそ、江東区、墨田区、台東区にある公園のトイレで良かったでしょう。渋谷まで足を伸ばす必要はなかったかも。全体のトーンにそぐわない渋谷区でしたね。