「おひとり様天国」PERFECT DAYS U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
おひとり様天国
生きてく上で、必要なものを教えてくれる。
信念を持てる仕事と趣味と恋心と。
多少の諦めもあるのかもしれない。
全ての事が1人で完結してて…人は死んでいく時は1人だもんなぁと。それなのに右向け右でコミュニティを拡げる事にやっきにならんでもいいよなぁと、そんな事を思う。
作品を観ながら思うのは「退屈な日常だなぁ」って事だった。そして、その退屈がもたらす弊害を考える。
ああ、そうか、と。
平穏と変化は裏表で、変化を求めれば対価を支払わなければならない。時間だったり、プライドだったり、金銭だったり。
その変化こそを生きる命題にしてる現代では、ある種「世捨て人」のようにも映るのだろう。
だけど、彼の日常は「完璧な日々」なのだ。
完璧だからこそ変化を求めない。
言い訳だと切り捨てる人はいるとは思う。
けれども、そういう生き方や価値観はあっていい。
そして、幸も不幸も人が運んでくる。
それは変化ではなく起伏であり、退屈な日常に見えても平坦なわけではない。
彼は人が嫌いなわけではない。彼の世界から他の世界への干渉の仕方が臆病なだけなのだろう。
適切な距離で、人と関わる。
踊るホームレスは自分よりも完璧な日々を送っているのかもしれない。リスペクトが見える。
家にも時間にも縛られない。自分の人生のみを謳歌してるようにも映るのだろうか?
自分はそこまで欲を捨てきれないとでも言わんばかりだ。
と、ここまで主人公にフォーカスして書いてはみたが、ラストカットは街並みの俯瞰で朝日が昇る。
新しい1日が始まる。
そこで、ふと思う。
完璧な日々は、全ての人に訪れる。
考え方や、視点を変えればそういう環境も訪れるという事なのかもなんて事を思う。
びっくりする程、台詞がないのは、そんな視点を提示しているのだろうと思う。
そして、その沈黙を埋めてしまえる役所さんは、やはり名優なのだろうと思う。
卑下するなと言う事かもしれない。
多様性が叫ばれる以前の社会は、提唱される幸せの形はほぼ一種類だけだった。
結婚して子供を持ち、家と車があって、多忙な仕事を抱えながらも家庭に帰れば一息つける、みたいな。
でも、現実はそんな事ないよねー。
理想だけを押し付けられても苦しいだけじゃない?
自分の手に届かないものを人生かけて追い求めるよりも、自分の手の届く範囲を少しづつ広げていく方が幸せじゃないのかな?
「夢」とかがあると別の話だけれど。
本作の主人公は、その拡げる手に満足したのだと思う。
だからこその「完璧な日々」なのだろう。
それは勿論、彼にとっての、である。あんな人ばっかりだったら人類は死滅する。
きっと「欲」を整理すればいいのだろうと思う。
こんにちは。
本作、ワタクシ、とても刺さってしまいまして。。特にU-−3153さんのレビューは何度も噛み締めて拝読させて頂いております。
とてもグッッと来ています〜