劇場公開日 2023年12月22日

「◇ Oh it's such a perfect day」PERFECT DAYS 私の右手は左利きさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0◇ Oh it's such a perfect day

2023年12月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

 ロードムービーは、旅の途中で起こる様々な出来事、出会う人々、偶然の出会いそのものを物語にする手法です。画面に繰り広げられる風景の変化の中で、人がそれぞれ抱える「疎外感」をテーマとしていることが多いです。

 この作品は、一人の男の変わりなく規則正しく繰り返される日常生活を、微細なまでに細部にこだわって丁寧に描いています。旅の醍醐味である風景の変化を日常の中の些細な変化に置き換える形でロードムービーを形成しています。

 砂漠のハイウェイを走り抜けるオープンカーのアメ車(「ナチュラル・ボーン・キラーズ」、「トゥルー・ロマンス」、「テルマ&ルイーズ」)は、曲がりくねった首都高を走るダイハツ軽ワゴンに置き代わっています。カーオーディオから流れる曲をそのままサウンドトラックとして用いるのは古典的な技法です。

♪朝日のあたる家 (浅川マキver. )🎤石川さゆり 🎸あがた森魚
♪The House of the Rising Sun
🎸The Animals
♪Pale Blue Eyes 🎸The Velvet Underground
♪(Sittin' On) The Dock of the Bay 🎤OtisRedding
♪Redondo Beach 🎸Patti Smith
♪(Walkin' Thru The) Sleepy City
♪青い魚🎤金延幸子
♪Brown Eyed Girl 🎸 Van Morrison
♪Sunny Afternoon 🎸 the Kinks
♪Feeling Good 🎤 Nina Simone
 場面場面の男の気分に左右されるように流れる音楽の心地よさは、この作品の魅力の一つになっています。

 他に男が好きなものは、ベランダの鉢植え🪴植物、銭湯、古本屋の100円文庫本。
📙『野生の棕櫚』フォークナー
📗『木』幸田文
📘『11の物語』パトリシア・ハイスミス
浅草地下商店街(日本最古の地下街)銀座線改札口から徒歩0分のセンベロ店・福ちゃん。

 ヴィム・ヴェンダースというフィルターを通して、改めて眺める東京の風景は逆輸入的なロードムービーを成しているのかもしれません。異なる角度から切り取られた日常は、日々の暮らしの中での人との繋がり、感謝の気持ちを改めて見直す機会を与えてくれたように感じる秀作でした。

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私の右手は左利き