「アナログに囲まれ浮かび上がる生活の美しさ」PERFECT DAYS shige0052さんの映画レビュー(感想・評価)
アナログに囲まれ浮かび上がる生活の美しさ
この映画の画面サイズは4:3の昔のアナログテレビサイズになってます。
フィルム写真のように切り取られた美しさを狙ったのか。アナログの世界感を強調したかったのか。
寡黙な平山(役所広司)の触れるものは、仕事で使うガラケー以外徹底してアナログで統一されていて、アパートにはテレビも電子レンジも洗濯機も見当たらない。ミニマリストでさえ最低持つパソコンも当然ありません。
棚にあるたくさんの本、オリンパスのフィルムカメラ、カセット、ラジカセ、電気スタンド、布団、植木鉢、歯ブラシ、電気シェーバー。
最小限のアナログたち。しかし平山は充足しているように見えます。
アナログなものは自由を含んでいる。デジタルのような窮屈さがない。
東京の公衆トイレをカセットテープの音楽とともに清掃して回り、銭湯に行き、駅地下の酒場で夕食をとるというルーティンを僧侶のように繰り返し生活する。その生活をまるでドキュメンタリーのように淡々と見せます。
役所広司演じる平山の所作があまりに無駄なく、何十年もそのように生活してきんだろうと思わせ、私は平山の動作一つ一つに目を奪われ続けました。
あのような平山の生活を美しいと思えるか否か、この映画を評価する分水嶺はそこにある気がします。
ヴェンダース監督は彼の生活に恋したと語っています。
私も平山とその生活が大好きです。
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