「平山さん、もっていくよな~。」PERFECT DAYS TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
平山さん、もっていくよな~。
繰り返す日常。まさにこれぞ「ルーティーン」な行動の平山(役所)のそれは、兎に角丁寧の極みで隠しきれない品があり、すべての行動に嘘や欺瞞を一切感じません。そして女性はしっかりそういうところ見抜くんですね。平山さん、世代関係なくしっかりモテてます。で、周りの男たちもそれを認めざるを得ません。平山さん、もっていくよな~。
かく言う私は全くもってモテませんが、年齢を経てようやくミニマルな生活に対する理解や憧れを感じますし、またルーティーンを取り入れることによる「余計な変化による刺激に対する自己防衛」は、意図することなくとも選択している自分に気づきます。それでも、結局のところ同じ毎日なんてないし、社会に出ていれば他人との関わりによって避けられないストレスがあります。歳を取ると、それほど「社交性」に対する重要性より生き易さの方を選びがちですが、それを完全に避けることはできません。でも、それでも日常は微妙な変化をもって繰り返し、時折感じる新鮮さや充実感に喜びや感謝を感じる、そんな当たり前だけど自覚しているわけでないことを描いてくれたこの作品に激しく共感出来て、観ていてとても心地のいい作品だと思います。
また、個人的には知っている「土地カン」も大きいですね。平山の仕事エリアである渋谷・代々木方面は何となく「あそこかな」と判るレベルですが、生活エリアである向島・浅草周辺は雰囲気も含めて知っている地域でもあり、観ていて入り込みやすいのは大きく影響しているかもしれません。
なんなら普通過ぎて退屈に感じそうなのに、平山と言うキャラクターを味わい深く演じる役所さんの演技を見れば、カンヌで男優賞を受賞する意味が解りすぎるほどで思わず感謝すら感じます。普通の人生で劇的なことは殆どありませんが、それでも日常は「常」で片づけることが出来ないほど変化があり、平山のルーティーンがそれを気づかせてくれる面白みがある作品です。隠し切れない傑作。