「穏やかそうで複雑な普通の人の人生の機微を、鮮やかに描いた傑作」PERFECT DAYS まっちゃまるさんの映画レビュー(感想・評価)
穏やかそうで複雑な普通の人の人生の機微を、鮮やかに描いた傑作
毎日を淡々と過ごす、また同じような日々が過ぎていく一週間、特別な出来事なんて無い、大多数の人が何となく日々を生きている、という印象を抱くが、人と積極的に関わらずに生活しているこの主人公でさえ、毎日いろいろな事を考え、感じて生きている事がスクリーンを通して理解出来る。人間は常に考えているのだから、ちょっとしたことに楽しみを覚えたり、嬉しくなったりするものだ。トイレ清掃という仕事のプロフェッショナルであるこの主人公を通して、普通の人の生態を鮮やかに描いていると感じた。とてもセリフが少ないのに、理解出来る、説得力があるシーンが多い。なんだか、共感できるのだ。
主人公ヒラヤマの見ている夢のような幻のような映像が度々映し出されるが、凄くヴィム・ヴェンダースぽい。そしてほんの少し、ヒラヤマと言葉を交わす人達が出てくるのだか、その交錯の仕方もそう、ベルリン天使の詩や、数々のロードムービーを思い出していた。なんだか嬉しくなってしまう。ヒラヤマが1人、笑みを浮かべるその表情に胸が温かくなった。これは名作です。
凄いと思ったのが田中泯を配置していたこと。まさに踊っていて、その佇まいが、ヒラヤマだけが見えている人なのかも?と思わせるその演出に唸ってしまった。
コメントする