「おかえり」PERFECT DAYS ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
おかえり
行こうとしていた劇場が激混みだったので、急遽違う映画館での鑑賞。なんとか左右誰もいないとこを確保してリラックスしながらの鑑賞でした。
恥ずかしながらヴィム・ヴェンダース監督作品初鑑賞です。遅れてやってきた映画ファンならではの楽しみ方をしています。
役所広司萌え映画でした。役所さんはイカつい役で多く観てきましたが、こんなにおっとりした役所さんを観るのが新鮮で新鮮で…!どのシーンを切り取ってもニヤけてしまうくらいに最高でした。
トイレ清掃で生計を立てている平山という男の日常をそのまま映していて、その中で起こる静かな波を強く描いていました。
全くと言っていいくらい同じ日々を過ごす流れは、どこか退屈だとコンテンツ溢れる現代に生きる自分は思ってしまうんですが、その繰り返しでさえも楽しんでいる平山の姿は本当に愛おしかったです。
その日常がたまたま出会った赤の他人との何気ない会話や様子見で彩られたり、姪が来てから日々のスピード感が加速したり、少し変わった生活でさえも楽しんでしまうと、素敵と大好きがたくさん詰め込まれていました。
古き良きが多く詰め込まれていて、カセットテープならではの音楽の良さだったり、ボロアパートの佇まいだったり、1発勝負のカメラだったり、まさにな見た目な銭湯だったり、おかえり〜と言ってくれる居酒屋の店主だったりと日本ならではを体験していない世代の自分にとってはどれも新鮮で、どれも愛おしく思えました。
見知らぬ人との○×ゲームだったり、おっさん同士の影踏みとか、なんだかキュートでした。
石川さゆりさんが演じるママなんてそりゃもう美声轟かせるでしょーと思って観ていたら、本当に感じの良いママで、話す会話も軽くも重くもない絶妙なバランスで素晴らしく、ポテトサラダこそ至高!と言わんばかりに盛り盛りのポテサラにワクワクさせられました。
東京の公共トイレはオシャレなものが多いというのは噂で聞いていましたが、本当に個性的な外見をしており、ドアの開閉でスケスケな扉がバンっと全部隠してくれたりと、進化してるんだなーと東京の街の凄さを日本人ながら改めて体感することができました。
映画内で流れる楽曲も本当に心地の良いものが多く、邦ロックをメインに聴く人間なので、こういった優しい音楽も良いなと思えました。
役者陣はもう最高すぎました。役所さんの表情がどれも微笑ましくて、ボソッと呟くセリフはどれもどこかに刺さるものばかり。監督がこれでもかと魅力を引き出していて、監督の力すげ〜と痛感させられました。
何気ない日常、どこか退屈に思える繰り返しの生活の中で生まれる変化の葛藤や幸せをスクリーンいっぱいに堪能できます。
色々抱えながら生きている現代人にそっと寄り添ってくれてほっこりしました。
今年の映画納めにもピッタリだと思います。どうぞ劇場で。
鑑賞日 12/26
鑑賞時間 16:55〜19:10
座席 B-9