「ささやかな感動作」PERFECT DAYS masaさんの映画レビュー(感想・評価)
ささやかな感動作
1人の男の日常を淡々と描いたなんとも退屈な映画?寝てしまうのを覚悟に観ていた私は退屈どころか、いつの間にかその世界に深く引き込まれてしまいました。私の地元の比較的地味な場所がロケ地だったからなのか?自分の年齢のせいなのか?何故か心に滲みる映画でした。
小津安二郎をリスペクトするベンダース監督らしく、往年の邦画を思わせる様式美に満ちた静の世界ではあるものの、微妙に変化する一日一日を短編小説の様に丹念に切り取った脚本と編集が素晴らしく飽きさせません。そして、ひたすら無口な男を演じる役所広司の抑制の効いた演技力が、ややもすると単調になりがちかな物語を強く支えています。
「ゴジラ−1.0」「鬼太郎誕生」等の大ヒットの裏で、この様なささやかな感動作に出会えた事の喜びに浸りながら映画館を後に、年末の寒空に自転車を漕ぎながら私はこの映画の主人公の様に幸せな涙を流すのでした。
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