「ゆれて、重なる」PERFECT DAYS ruさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆれて、重なる
とても静かで、穏やかで、笑いもあったりして
でもずっと、何か不穏なものが現れそうで もしかして既に、取り返しのつかないことが起きてしまっているのでは とスクリーンから目が離せず。
すべてを見届けた後は、名前のついたいかなる感情もわかず。
そのまま珍しく本屋に向かおうと、映画館を出て歩きだすと、ゆらりゆらり自分の中で何かが動き
どういうわけか!目から何かがこぼれた。
その時、さっきまで観ていたのは本物の映画だったのだと悟った。
そこに映っていたのは、今にも消え去りそうな、もしくはすでに失われているものばかりだ。
もし渋谷で本作を観て、帰り道に振り向いたとしてもそこには違う街があるだろう。
男たちが自分らで弦を張って、良くわからないケンカばっかりしながら鳴らした音とか
なんかもう、はかなくてせつない。
ひとがご飯を食べて、1300グラムの脳を動かして考えた物語を、ひとが演じ、ひとが撮る。そういう映画ばかりが観られるのも、実はあと10年ぐらいではと思っている。
だから本作もバービーもバビロンも、観ていてヒリヒリするし、たまらなく愛おしい。
2時間自分を預けると、ずっと残る何かがもらえる(こともある)不思議な場所だね、映画館。
本作同様、胸にくるレビューでした。一字一句漏らさないようにしたいと感じました。
そしてわたしも限りある時間に1回でも多く映画館に足を運び、不思議を味わいたいものです。