「観客を選ぶ映画だった。高評価が多いからと観た人のなかには、がっかりした人もいるだろう。」PERFECT DAYS いなかびとさんの映画レビュー(感想・評価)
観客を選ぶ映画だった。高評価が多いからと観た人のなかには、がっかりした人もいるだろう。
上映初日に観たかったが仕事の都合で観れなかった。予告編を見て、素晴らしい映画だとの直感が働いたからだ。新作映画の予告編で、このような感覚を持つのは年に1本・2本あるかないかだ。
東京都内のモダンなトイレを清掃する主人公の日常生活を淡々と描いていく。同じルーティンワークをしていても、日々変化や異変が起こる。子供がトイレに隠れていたり、迷子がいる。同僚が遅刻してきたり、清掃員とのオセロゲームのやり取りを楽しむトイレ利用者がいる。公園のホームレスや公園で昼食を取るといつも同じOLが隣に昼食を食べている。この人達はどんな生活をしているだろうと想像すると楽しくなる。
この映画の監督は観客に想像力を要求していて、それがないと楽しめない。何の代わり映えもしない日々だけれど、それを受け入れ生きる糧にすれば、人生そんなに悪いものではないと訴えかけている。
タレントのせんだみつおが言う「生きているだけで丸儲け」。そんな境地に私もなりたいけれど、世俗の欲を断ち切れる状況にはない。私には死期でも迫っていないとなれないだろう。
妹は高級車レクサスを運転手付きで家出した娘(姪)を迎えに来ているから、実家はかなり裕福だと推測できる。施設に入った父親の見舞いを断ることから、父親との確執があって主人公の今の境遇が想像できる。また、妹を抱いて嗚咽する場面は感動させられる。もしかすると
母親の死が今の境遇を招いたきっかけかも?
心を寄せていた居酒屋のママ(石川さ)が知らぬ男と抱き合っているところを見て、やけ酒をあおる場面は笑わせさせる。男はママの元夫で、癌が転移し余命僅かで死ぬ前に別れた妻に謝りに来ていたのだ。こういう細かな場面を想像力を補って(癌と告白したから、謝罪したから、ママと抱擁した)楽しむことができると高評価になるだろう。
どうしても有名な映画監督がメガホンを取ったから、彼に注目が集まってしまうけれど、共同脚本を書いた高崎卓馬のアイデアもかなり採用されているのではないかと思う。
コメントありがとうございました。田中泯サン良かったですね。星はおっしゃるとおり同感ではあります。
お菓子のくるみっこ【袋から推定 有料パンフに詳述】から鎌倉の模様です。鋭いですね。ありがとうございます。