劇場公開日 2023年12月22日

「スマホで下向いてばかりだと、木漏れ日に気づくこともできない」PERFECT DAYS momokichiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スマホで下向いてばかりだと、木漏れ日に気づくこともできない

2023年12月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

幸せ

近所の人が道を掃く音が目覚まし代わり。布団を畳んで隅に置き、隣の部屋で育てている鉢植えたちに霧吹きで水遣り。狭い階段を降り、狭い台所で歯磨きを済ます。髭を鋏と電気カミソリで整え、玄関に並べている持ち物を順番にポケットにしまいドアを開けてボロ屋の表へ。そこで空を見上げて微笑む。駐車スペースの横にある自販機でBOSSのカフェオレを買い、仕事道具を積んだ軽バンに乗り込む。本日のカセットを選び、シートベルトを締めて出発。早朝の東京の道路とカセットから流れる洋楽が合う。

担当する1件目の公衆トイレに到着。荷物を持って車を降り、「清掃中」の看板を立てて作業開始。まずゴミ拾いをクイックにおこない、便座、手洗い場と順に掃除していく。鏡をつかって裏側の汚れも確認。便器の中も拭き上げる。バケツに水をはり絞ったモップで床掃除。トイレのドアや取っ手も丹念に拭き上げる。これを何か所か移動しておこなう。

昼はルート上にある神社でサンドイッチ。大木の木漏れ日をフィルムカメラに収める。
清掃がすべて終わると自宅へ戻り、すぐに着替えて自転車に乗って銭湯へ。たっぷりのお湯に顔まで沈める。さっぱりして脱衣所で相撲を見ながら火照りを冷やす。帰りに自転車で地下にある大衆居酒屋に。ビールとつまみを頼み、TVから流れるプロ野球をみながら簡単な夕食。千円とちょっとを払い、自宅へ戻る。布団に入って休日に古本屋で買った幸田文やパトリシア・ハイスミスの本を電気スタンドの灯りで読みながら、うとうとして入眠。そして、朝がきて、また道を掃く音で目覚める。。。

仕事が休みの日は「フィルムを現像に出す&受け取り」「焼きあがった写真の選別」「コインランドリー」「古本屋で本を吟味」「ちょっと贅沢して小料理屋へ」になる。

慎ましいけれど、とても幸福で豊かな日々。(まさにPERFECT DAYS。)
自分に与えられた仕事・社会への貢献を全うし、充実感をもって銭湯とビールで労う。
植物を育て、様々なジャンルの古本で知的好奇心も満たし、音楽も楽しむことができる。木漏れ日や空をちゃんと感じることもできる。。何より木漏れ日に気づけるということは、うつむかずに上を見上げているということ。「上を見上げる」というのは気が良くなるよ。自分も見習おう。

高級車とタワマンをローンで買い、企画やプロジェクトやら1日で区切れない仕事にあくせくして達成感もなく、スマホのために下を向いてばかりで木漏れ日に気づくこともできない。肥大化して、余裕を失った日々。。
何のための人生か?何のために働いているのか?本当に幸せなことは何か?
忘れていたものを再度気づかせてくれた映画。
思わず笑みがこぼれる一服の清涼剤のような映画。

※関東平野の朝焼け。壮観な広大さ。綺麗。
※フィルムカメラ、現像、カセットテープ、ラジカセ、ガラケー、アナログ文化が滅茶苦茶かっこいい! スマホがない生活、いい。豊かだ。
※若い娘を銭湯に連れてきた平山を見た、銭湯の常連たちが微笑ましい。
※石川さゆりの小料理屋。絶対通うよ! むっちゃ似合う。歌うますぎ。(当たり前か。)
 「ギターでちゃったかあ~。」たまらん!
※三浦友和とのやりとり微笑ましかった。何も変わらなかった、意味はなかったなんてことはない。影は濃くなっている! (大人のオッサン二人の影踏み、微笑ましい)
「謝りたいではちょっと違う。会っておきたくなった。」この思い、なんとなく分かる。
※1日のルーティン。でもいつも同じ日ばかりではない。色々ある。
※家の戸締りをしないのは気になるよ。
※一緒に働いている若者のタカ、いい加減なやつかと思ったら性根の優しい面も。こりゃ憎めないわ。
※浅草の下町、いいわー。スカイツリーがいつも見える町。紫や赤の電気がまた似合う。
※トイレ掃除の格好をしていても、雨合羽を着ていてもカッコ良くなってしまう役所広司。
※色んな公衆トイレあるんだなあ。ドアが透明から色付きに変化するトイレには驚いた。

下記の涙の意味は大事に考えたい。
・軽バンの中でのアヤの涙
・平山の妹と、妹と別れるときの平山の涙。
・最後のシーン。車のハンドルを握りながら涙ぐむ平山の涙。(ここ名演だった。)

momokichi
みかずきさんのコメント
2024年7月31日

共感ありがとうございます

平山の生き方は、理想的なものです。

しかし、どんなに慎ましく生きても、
人間関係の柵からは逃れられない。
ラストの平山の涙に、思い通りにならない人生の悲哀を感じました。

平山の生き方を絶賛するレビューが多いですが、
平山の生き方は最小限の人間関係に支えられている。影響されるということを私は強く感じました。

では、また共感作で

ー以上ー

みかずき
bionさんのコメント
2023年12月27日

コメントありがとうございます。
木漏れ日の下で、何かをするなんてこと、いつのまにか忘れてました。
あの境内に行ってみようかな。

bion
ゆきさんのコメント
2023年12月24日

おはようございます。
コメントありがとうございます。
本作は言葉では表現しずらい作品でした。平山の様に、多くを持たずとも、日々の些細な事に幸せを見出す生き方に、心揺さぶられました。私には雑念が多過ぎて無理ですが(°▽°)
憧れというか、理想の生き方の様に思えました。シンプルに生きる事の美しいを感じました。
momokichiさんのお付けになったタイトル。本作のテーマを含んでおり考えさせられました。平山のこの生き方に至るまでの人生を想像し、、生きていく。。って奥深いですね♪

ゆき
NOBUさんのコメント
2023年12月23日

こんにちは✨😃❗️
嬉しいコメント有難うございます。私はヴェルヴェットアンダーグラウンドに学生時代にはまった事もあり、本作品は大変面白く鑑賞しました。これからよろしくお願いいたします。

NOBU