「商業映画にはまねできない」PERFECT DAYS たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
商業映画にはまねできない
78歳のヴィム・ヴェンダースが東京のトイレ清掃員の「完璧な日々」を描いたものすごく小さな世界のものすごく卑近な物語である。たいした事件が起こることもない淡々とした日々を主人公がコレクションしている洋楽カセットの曲にのせて124分見せられるのだが、これが驚くほど映画の魅力にあふれており役所広司の超はまり役というか普通に朝起きて布団をたたんで歯磨きして・・というそのまんまをドキュメントしたようなほとんどセリフもない演技でカンヌ男優賞を獲った(海外の方には字幕を追わなくて済む分演技が分かりやすいのかも知れない)。まず見始めて思うのは西川美和「すばらしき世界」のその後を描いたのではないか?ということ。しかし安アパートで自分で炊いたご飯を食べる喜びはタイトルにもなっているル・ーリードの「Perfect Day」(すばらしき日)であってどちらかというと「特別な一日」で、すぐにそんな「素晴らしき世界」なんて嘘っぱちであることが分かる。「PERFECT DAYS」は真逆で、特別なことは何もなくただただルーティーンが維持されていくことの心地よさを提示する。私の世界はあなたの世界とは違う姉の住む世界とも違い交わることは無い。発展しそうな事件が起こるふりを振るだけ振っておいて肩透かしをくらわす。ホームレスの田中泯。公園で出会うランチタイムのOL。三目並べゲーム。最大の事件たる家出してきた姪っ子にしてもあっけなく収束し、夜ごとに観る夢にも全く意味は無い。ドラマのない映画の傑作が生まれた。銭湯と湯上りのチューハイ、週に一冊の文庫本だけで人生は十分に楽しいのだ。
フォローありがとうございます
私の方からもフォローさせて頂きます
私、10年位前から、キネマ旬報、kinenote、Yahoo映画レビューなどに映画レビューを投稿しています。現在の目標は2回目のキネマ旬報掲載です。
宜しくお願いします。
>特別なことは何もなくただただルーティーンが維持されていくことの心地よさを提示する。
同感です。
ー以上ー