「人間が最恐であることを思い知らされた作品」エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間が最恐であることを思い知らされた作品
ユダヤ教の子どもを国のお墨付きでさらうキリスト教。
家政婦が子どもに洗礼をしたため、というのがその理由です。
洗礼ってそんな軽いものなの?誰でもできるの?あるいは言いがかり?
人間って本当に恐ろしいなと率直に感じましたし、どんなホラー映画に出てくる怪物の類よりも
群を抜いて怖い存在だと思います。
さらわれて少しの期間は実家への思慕があるエドガルドですが、
徐々に少しずつキリスト教に感化されていきます。
6歳でしたから、ユダヤ教からキリスト教を上書きインストールすることができる年齢というのも
あったのでしょうね。
しかしながら、徐々に変化していくエドガルド少年に恐ろしさも感じた次第です。
子どもはこの頃の教育次第で、どういう大人になるのかが決まっていくのでしょうね。
そういう示唆もあるのかもなと思いました。なくとも私はそう受け取りました。
青年になってから、教皇を押し倒したり、教皇の死後に棺を運んでいる最中、
教皇への暴言を吐いたりするシーンは、キリスト教の信心はあるものの、教皇には恨み的なものがあるため
そういう行動に至ったのかな!?と、ちょっと考え込んでしまいました。実にエドガルドの矛盾を表現しているなと思い、
その真意は何だったのだろう?と考えてしまいましたね。それもまた映画の面白いところです。
母親の死に際に、キリスト教の洗礼をしようとするエドガルドですが、
母は凛とした態度ではねつけます。この母親の表情には死に際と言えど気概・迫力がありましたし
まさに信念を感じることができました。素晴らしいなと思いましたね。
ここが最大のみどころでしたし、ここでラストを迎えるというエンディングも素晴らしいと思いました。
19世紀末でもまだこういうことが事実として起きていることが驚愕でした。
今は表面上なかなかこういうことは表出しませんが、あるのかもしれないですよね。それはわからないなと思いました。
ある意味ホラー映画よりも現実の方が奇なり。
恐ろしい映画作品だと思いました。