劇場公開日 2023年12月15日

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ポトフ 美食家と料理人のレビュー・感想・評価

全106件中、1~20件目を表示

4.0目と心を満たす、滴るような味わいを宿した秀作

2023年12月26日
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『青いパパイヤの香り』『夏至』で人々を魅了したトラン・アン・ユン監督が、あれから20年以上経って、かつての滴るような味わいを宿しつつ、さらなる次元へ進化を遂げている。時代は19世紀。ここには料理に情熱を注ぐ男女の弛むことのない究道があり、美食家たちの文化や様式に関する興味深い描写の数々、そして決して止まることなく巡りゆく季節と生命がある。時間を割いて織りなされる調理シーンは、まさに言葉を超えた吐息と滴る汗と所作の連続。香りや味わいと相まって男女の間でほのかに交わされる感情すらも繊細に沁み入ってくるのがとても感慨深い。依存し合うわけでも、甘い言葉を囁き合うわけでもなく、ただひたすら至高の一皿を求め続ける。その真剣な眼差し、信頼しきった表情、その果てにたどり着く感情が美しい。食して終わりではなく、永遠にも等しい理想を生涯かけて求め合うかのような、二人にしか表現し得ない愛がそこには刻まれていた。

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牛津厚信

4.0料理が紡ぐ人間関係が行き着くところは

2023年12月21日
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鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

代表的なイメージショットは、今年9月に公開された同じフランス発のグルメ映画『デリシュ!』と同じなのだが、描くテーマはほぼ正反対。『デリシュ!』は宮廷を退いたシェフが謎めいた女性料理人の助けを借りて、それまで貴族のためにのみ存在したフランス料理を民衆に解放する物語。その過程でシェフと料理人の間には愛が芽生えていく、という展開だったが、本作『ポトフ』は同じフランスの定番料理の名前をタイトルにはしているが、主人公の美食家と、彼の希望を具現化していく料理人は、もっとクールで、だからこそ強い絆で結ばれている。見ていてそこにぶっ飛んだ。食を介して人間関係を描くと、どうしても情緒に傾きがちだが、トラン・アン・ユンの演出は最終的にその種の傾向とは無縁なのだ。

しかし、次々と登場するフランス料理の完成度は『デリシュ!』以上。東京でもフレンチレストランを経営する三つ星シェフ、ピエール・ガニェールが監修した舌平目のクリームソース、子牛のポワレ、アイスクリームが中に入ったノルウェー風オムレツは、映画の後味はどうであれ、視覚から食するに値するもの。このシーズンに打って付けの作品だ。

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清藤秀人

4.0繊細で深みのある愛情表現は元パートナー同士ゆえか。調理を流麗にとらえる映像に引き込まれる

2023年12月18日
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鑑賞方法:試写会

幸せ

萌える

優れたダンス/ミュージカル映画が冒頭に素晴らしいパフォーマンスのシークエンスを配して観客の心をがっちりつかむのと同じように、「ポトフ 美食家と料理人」も始まって早々、美食家ドダン(ブノワ・マジメル)と料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)がアシスタントのヴィオレットを指示しつつ手際よく食材をさばいて加熱し仕上げていく過程を、流れるようなカメラワークで躍動感いっぱいに撮影している。トラン・アン・ユン監督の演出意図を体現した俳優たちの演技と、彼らの表情、手や調理器具の動き、そして調理が進むにつれ音を発しながら色と形を変えていく食材を優雅に踊るようにカメラのフレームに収めた、撮影監督ジョナタン・リッケブールの貢献も大きい。

マジメルとビノシュは1999年に『年下のひと』で共演した縁でパートナーになり女児をもうけたが、2003年に別れている。彼らが演じるドダンとウージェニーも公私にわたるパートナーでありながら長年結婚しないままだったという設定であり、互いを想う繊細な感情の表現はそうした私生活の過去の経験がプラスに働いた印象を受ける。

ズアオホオジロのローストを食べる時に皿の真上に寄せた頭の上からナプキンをすっぽりかぶるという、変てこでユーモラスなマナーも描かれている(美食家でない評者は今回初めて知った)。ネットで理由を調べたら、香りを保つため、恥ずべき行為を神の目から隠すため、骨を吐き出す姿を他人に見られないようにするためなど、諸説あるらしい。

絶対味覚を持つ少女ポーリーヌを演じたボニー・シャニョー=ラヴォワールの無垢な魅力もいい。作中では料理の職人技の継承を担う役どころだが、フランスを代表する大女優ビノシュから未来のスターへバトンが渡されたような気にさえなる。本作が映画初出演のようで、今後の成長と活躍が楽しみだ。

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高森 郁哉

4.0腹が減る 映像で満たされる

2025年1月27日
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腹が減る
映像で満たされる

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eiga.comer

3.5ラ・フランス

2025年1月17日
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人間というものは食べる為に一体どれだけの手間をかけていくのだろうと考えさせられる。映像で味までは分からないが、美しさで伝えられる。まぁそうは言っても実際には食べた事のない料理のオンパレード!こってりフレンチはあんなには食べれそうにない。でも食べてみたいなあ。
ポトフを作るお話かと思ったら恋愛物だったので、あれれだったが二人の関係はちょっと羨ましくもあった。

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GAB I

4.5ドタンとウージェニーの晩餐会‼️

2025年1月5日
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泣ける

楽しい

幸せ

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活動写真愛好家

4.0トラン・アン・ユン「ポトフ 美食家と料理人」冒頭30分間の調理シー...

2025年1月1日
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トラン・アン・ユン「ポトフ 美食家と料理人」冒頭30分間の調理シーンが映像、音響含めて圧巻で完全に引き込まれる。単に料理しているだけなのにすごいよね、完全に映画。美食家と料理人、恋人という関係も超えて、芸術としての料理で結びついた対等な2人のドラマも良し。2人食事シーンは官能的でした。

終盤、次々と料理にダメ出しするドダンは一歩間違えると海原雄山。

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ピンボール

3.0美味そう

2024年12月1日
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洋風の温かい料理がずっと。お腹減るし食べたくなる。料理をずっと観てる映画でした。
そして妻を愛しぬいたドラマ。

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ノブ様

3.0一つ一つの料理が美味しそうで、空腹の時には観てはいけない作品。 パ...

2024年11月24日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

一つ一つの料理が美味しそうで、空腹の時には観てはいけない作品。
パートナーの女性は病弱そうではあったが、あれほど急に亡くなるようには見えなかった。
ドラマチックにするために無理やり死なせたような印象を受けた。
あと最後の会話が印象的。
女性が尋ねる。
「私はあなたの料理人?それとも妻?」
男性が「料理人」と答えると、女性は満足そうな笑みを浮かべる。
妻として愛されるよりも、料理人として認められる方が嬉しいわけか。

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省二

3.0お腹空いてきてなんか食べたくなる、そんな映画です

2024年10月15日
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鑑賞方法:DVD/BD
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Oliver

全幅の信頼が置けるシェフ

2024年9月15日
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鑑賞方法:映画館

 19世紀フランスの田舎で穏やかに暮らす美食家とそれを支える女性シェフの物語。光の回り方が優しく、物語に落ち着きが醸し出されます。そして、出来上がる料理以上に、それを作り上げるまでの丁寧で流麗な過程が見ていて気持ちよかったなぁ。先だって『ショコラ』を観たばかりジュリエット・ビノシュは全幅の信頼が置けるシェフです。次々出来上がるお料理に、まるで上級ミステリーを観る様な緊張感がありました。

 でも、ポトフは結局どうなったのかの決着と、下働きの少女ポーリーヌが次代のシェフを継ぐ未来の予感を見せてほしかったかな。

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La Strada

4.5目と耳、そして心へのごちそう。

2024年6月30日
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鑑賞方法:DVD/BD

青いパパイヤの香りの監督、繊細で豊か、一瞬一瞬を慈しむように見つめてしまう、余計なものがない作品でした。

余計なものとはなにか。
無理なドラマ展開や
過剰な音楽、オーバーな演技がない。

画面の外を感じられるような、
虫の音や鳥の囀り、
見えないものが重層的に、あたかもパイの生地のように仕組まれていました。ちょっと例えがヤボですが。

冒頭から圧巻の調理行程のスペクタクル。
バベットの晩餐会のクライマックスを先にたっぷりと見せる。
俳優たちは、ドキュメンタリーのようにただひたすらに手を動かす。

そとからさし込む陽光、厨房の薄明かり、蝋燭のランプの灯火。
作る、作る、食べる、食べる。

セリフも極力排され、食べる場面なんぞ。芝居で一番難しい。俳優の人間の素がばれてしまうから。

あのレオスカラックス作品で世に出た美少女ビノシュが、見事に歳を重ね、いまや世界の大女優だ。

しかし、それを全く見せない。

いちばん弱い立場の後ろに隠れるようにして生きてきた人間として、
一品一品をたいせつにたいせつにたいらげていく佇まい。

それまでの人生や、現在の状況、作ってくれる人への感謝、愛情、見つめ合う、凝縮された名場面でありました。

ブノワも、仕事しているだけなのに、背中に男の色気というものが現れて。
この表現!
白黒かつてあったフランス映画の伝統、映画らしさを継承した。

大胆なカメラワーク、動くところがちょっと他に見られないようだったり、音では、音響が雄弁で、かつ寡黙でもあるという、一度では観尽くせない魅力に溢れていました。

思いは胸に秘めて、
言葉は口にするならばとっておきのものに、
まなざしは優しいものにして。

こうするしかなかった、しかし悲嘆に暮れる事なく、また明日から
毎日毎日毎日を最善を尽くして生きていくのでしょう。
出会いと別れ、愛すること、泣くこと、笑うこと、そして、大好きなものへのひたむきさ、情熱。

それだけあればいいのだ、と。

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青樹礼門

3.5美と食と愛を嗜んで

2024年6月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

幸せ

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近大

3.0「食」で繋がる二人の関係性が素敵な一本。

2024年5月27日
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鑑賞方法:映画館

映画の世界でも、撮影機器の小型化・軽量化が進み、カメラが直接に厨房に入ることができるようになったと言われますが、その「フットワーク」を活かして映し出される料理の数々も、本作に華を添えます。
総じて、映画作品として、画面の配色が美しい一本でもありました。

料理人としての技量にドダンから全幅の信頼を置かれているウージェニーと、病をおしても、ドダンのその信頼に応えようとするウージェニー。
その二人の関係性の、何と美しかったことか。その美しさがスクリーンを通じて輝くようにも思われました。評論子には。
(実社会で、この世の中の誰かと、こんな関係性をもし築けたとしたら、それはそれは、どんなに素晴しいことでしょうか!)

「美食」をモチーフとして取り上げながらも、ドダンとウージェニーとの関係性に焦点が据えられているので、違和感(普段は貧食のやっかみ?)もなく、ストーリーの中に入っていくことができた一本でもありました。
「美食」にも「料理人」にも、とんとご縁がなく、食品スーパーでは閉店間際の半額シールから目が放せず、見切り品のカゴの中に野菜類の調達を頼っている評論子にも。

充分に佳作としての評価が可能な一本と思います。

(追記)
最後の厨房での長回しのワン・シーン。
ドダンの回想を表現するのもでしたけれども。
作品上の時間を短時間で遡るという意味では、これも一種の「省略法」と称して差し支えないかと思いますけれども。
映画として、こういう撮影の撮影技法もあったのかと驚きました。
そんなことも印象に残った一本になりました。評論子には。

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talkie

5.0愛に溢れた映画だった!

2024年5月22日
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鑑賞方法:VOD

幸せ

日差しが差し込むキッチンの中で、料理するシーンから始まる。肉や野菜が焼ける音、キッチン用具がぶつかる音…映像と音が相まって、ずっと見ていたいくらい美しいシーンだ。

ドダンがウージェニーだけのためにもてなすフランス料理、ドダンをベッド待つウージェニーの後ろ姿、散歩や食事をしながらの2人の語らい、愛が痛いほど伝わってくる。

一方で、ウージェニーを女と愛しつつ、料理人としてのリスペクトを忘れない、ドダンの気遣いが素晴らしい。

ウージェニー役のジュリエット・ビノシュは、今年60歳になっても美しいボディ。後ろ姿だけで、男をその気にさせるセクシーさがある。

「愛している」という直接的な言葉ではなく、料理や会話を通して愛を語る。この愛の表現を描かせたら、フランス映画はピカイチだなと思う。

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うさぎ

3.5フランス料理の深さがわかる

2024年5月11日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

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rie

4.0【”ガストロノミー、そして美味礼賛。”今作は料理への情熱で強く結ばれた美食家の男性と女性の料理人の愛と人生を味わい、劇中供される美味そうな料理を目で愛でる作品なのである。】

2024年5月10日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■19世紀末の仏蘭西郊外に住む、美食家・ドダン(ブノワ・マジメル)と、彼がひらめいたメニューを完璧に再現する料理人・ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)。
 2人が生み出した極上の料理は人々を驚かせ、類まれなる才能への熱狂はヨーロッパ各国にまで広がっていた。
 ある時、ドダンはユーラシア皇太子から晩餐会に招待されるが、ボリュームはありながらワインを出す順番も含め、満足出来なかったと漏らす。
 そして、ユーラシア皇太子に対して、仏蘭西の庶民食であるポトフを提供しようとウージェニーに提案する。

◆感想

・序盤20分の、ドダンの友人達を招いた昼餐会のためにドダンとウージェニーが協力して料理を作るシーンが圧巻である。
 言葉は少ないが、2人の料理への愛、お互いを大切に思う気持ちが凝縮されているように思えるからである。

・更に二人は、近所で農家を営む夫婦の娘で、味覚の鋭いポーリーヌにも料理を教えつつ、料理を食べさせ感想を聞くのである。
 取分け私の興味を引いた料理はデザートで出された”ノルウエー風オムレツ”である。

・贅を尽くした料理を食べながら会話は、カレームの話に移って行く。外交官タレーランの料理人としてウィーン会議で度々晩餐会を開き、仏蘭西の存在感を高めたと言われる伝説の料理人である。
 ドダンの友人達が、単なるグルマンではなく知性と教養がある人である事が分かる。

■秋になり、ウージェニーは漸くドダンの求婚を受け入れるが、虚弱だった彼女はある日、早逝してしまう。
 食欲もなく、項垂れて暮らすドダン。
 友人達は、彼を励ますために様々な女性料理人をよこすが、ドダンの口には合わない。序でにポーリーヌも・・。

<だが、ある日友人が料理を持ってドダンの家に掛けこんで来る。
 その料理を口にしたドダンは、友人からその料理を作った料理人の名を聞き、家を駆けだして行くのである。勿論、ポーリーヌを連れて。
 今作は、料理への愛や思入れが凝縮された、トラン・アン・ユン監督が、“食”の深さと楽しさを堪能させてくれる作品なのである。>

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NOBU

4.0料理という芸術、たゆたう様な心地よい映画

2024年5月4日
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鑑賞方法:映画館

料理は芸術だというが料理という芸術が映画という芸術と見事に相乗効果をなしている。
食に少しでも興味のある人はあのめくるめく調理シーンに惹き込まれて時間を忘れるのではないだろうか…
この映画は大きく3つの料理シーンで成り立っている。「料理人」ウージェニーが圧巻の腕を振るう冒頭40分あまりの友人との夕食シーン、逆に「美食家」ドダンがウージェニーを饗するシーン、そして「その後」ドダンがもがき苦しみ再生する調理シーン。そのいずれもが息を呑む。
特に最後の再生のシーンは厳密に計算された無駄と冗長を極限まで省いた感嘆すべき演出。
どん底に喘ぎ料理に関するあらゆる関与を拒否していたドダンが次のシーンでは何の「説明」もなく少女ポーリーヌとチームプレイで料理人のオーディションを行っているというあの見事な省略には心を揺さぶられうならされる。
逆光を意識した照明は終始素晴らしいが、最後ポーリーヌとドダンの「再生の料理」シーンでは明かりが時を追うごとに生気を帯びてくる!
効果音も素晴らしい。
とにかく非常に繊細でドラマティックな映画。
『青いパパイヤの香り』のあのたゆたう様な心地よいテンポを思い出した。

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百万両

4.0女装映画鑑賞第5回 貧乏がアカンねんで…貧乏が…

2024年4月8日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

女装映画鑑賞も、もう5回目になりました。
「もう止める!」とか言ってませんでしたっけ?知らんがなそんなもん。スカート穿いて映画観るの楽しぇもん。
そんな準備をするため、しばらく.com様をお休みしていました。
「いつもこんな恰好で観に来て申し訳ありません」とのテンプレ謝罪対して「いえいえ、楽しんでいってくださいね」と、とても優しいアンサーをいただきまして。
そのお言葉に、大福餅をハチミツで三日三晩煮締めたほど、甘えに甘えて観てきましたよ。あまり困らせたらアカンぞ。
以前にこちらも女装で観てきた『秘密の森の、その向こう』と同じく、インテリ向きのおフランスの映画なので、さっぱり楽しめないかも…と危惧していましたが、そんなことはありませんでした。
相も変わらず起・承・転・結がわかりにくかったのですが。
それでも2時間ちょいを、十分に楽しませていただきました。

物語が始まって早々に参ってしまったんですよね。SEが思いっきりいい仕事していると感じたの。
農園の野菜を根元から刈る「ザクっ…サクっ…」という音だとか、汲み上げる井戸水の「ザバザバ…ビチャビチャ」の音だとか、スゲー臨場感あったの。
鍋を火にかけ、「コトコト」と煮込む音やら、肉を焼く「ジュワー!」って音とかも。
見てると、お腹空いてきたの。
その逆に、咀嚼音の一切はカットされてたのね。このあたり、おフランスのマナーを徹底させていたのね。
刃牙でのジャック・ハンマーがステーキ食べる時の「ガプ…ギュイーン…ナポ…」みたいな音は出ないのよね。
???ってなって強烈に印象に残ったーシーンがあるんですよ。
ウズラ?か何かの小鳥の丸ごと煮込みみたいな料理を食べる時、頭からナプキン被ってた例のあのシーン。
あれ、何ぞや?と思って調べてみたです。どうやら「オルトラン」という料理らしくて。
食べる時に香りを逃がさないようにするためだとか、神聖な食事を行う際の敬意を表すためだとか、この料理は一部で非難されているから、その行為を隠す意味合いもあるだとか。←禁じ手かよ!
などの理由で、ナプキンで頭を覆うらしいですね。ただ単に咀嚼音をシャットアウトするためかと思ってました。
フランス料理のマナーって小うるさい!中華みたいにドババーっと盛って、ガガガガガ―っと一気に食すスタイルの方が好きなの。ごめんなさい、また本筋から外れちゃったですよね。

そのお話なんですが、料理人のウージェニーが病で逝っちゃたじゃないですか。てっきり主人公だと思い込んでたのに。
「こんなんでお話どう続くねん!」と思っていたら、美食家のドダンが主人公だったのですね。タイトルからして、こちらもてっきり海原雄山みたいなわがままオヤジなんかなーって思っていたら、わりと優しい人っぽくて安心しました。新しい料理人の選抜試験では、結構辛辣でしたけれど。
その場所に同席していた女の子がウージェニーの後を継ぐのかな?と思ったら、投げっぱなし。
そして、最も肝心のポトフの件も投げっぱなしですやん。そこまで描くんかなーと、勝手に思い込んでたんですよ。
思い込み激しいぞ自分。
そして、料理人の腕前がどうとか、グルメがどうとかじゃなくて、この物語って、純粋なラブストーリーだったことに最後の最後に気づかされたの。

ラストシーンでウージェニーの「私はあなたの妻だったの?それとも料理人?」みたいな問いかけにドダンは、きっぱりと「料理人だ」と答えたじゃないですか。病床の妻を前に、どんだけ雄山やねん!と思っちゃったんですよ。そこがどうにも引っかかって。
鑑賞後にあれこれと考えてみたです。ドダンにとってのウージェニーは、最も大切な舌を満足させてくれた人だったと思って。なのでウージェニーこそ自らが全幅の信頼を寄せていた人だったと思って。
そんな期待の全てに応えてくれた彼女こそ、彼の人生を一番彩どってくれた人だと思って。
「愛する妻だ」と言っちゃうのは、とても簡単で、当然のことで。そこをあえて「調理人だ」と万感の思いを込めて、言い切ったんだと思って。
何言ってんだか自分でもよくわからないんですが。

でもね…フランス料理って、やっぱり苦手なの。
美味しそうではあるんだけれど、余白の方が多いお皿をちまちまと小出しにされたり「なんでそんなややこしいねん!」っていうカラトリーの使い方に「しゃらくせぇ!」って思っちゃうの。外側から順に使うって基本中の基本しか知らないの。
やっぱり中華みたいにドババーっと盛って、ガガガガガ―っと一気に食すスタイルの方が好きなの。
和食みたいに箸一膳で完結される料理の方が好きなの。
貧乏がアカンねんで…貧乏が…
牛丼の食べ比べ程度しかできん財布の事情がアカンねんで。
ちなみに牛丼は、さっぱり味の松屋推しです。お味噌汁付いてるし。
そして、評価の印象に“美味しい”って項目がないのが惜しいです。

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野球十兵衛、

3.5食を芸術まで高めた美食家と天才料理人

2024年3月5日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

19世紀末のフランスの田舎で、食を追求した美食家ドダンと、彼のメニューを再現する天才料理人ウージェニーの評判はヨーロッパ中に広まっていた。ある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招かれたドダンは、ただ豪華で品数の多いだけで統一性のない退屈な料理にうんざりして帰ってきた。お返しとして、最もシンプルな料理・ポトフで皇太子をもてなすことを決めたドダンだったが、そんな矢先、ウージェニーが倒れてしまった。ドダンはすべて自分で料理を作り、愛するウージェニーを元気づけようとしたが・・・さてどうなる、という話。

スタートからしばらく、料理を作って出すだけのシーンが続き、そんな単調な作品かと思ってたら、なかなか奥深かった。
ウージェニーとドダンの関係がなかなかわからなかったが、籍を入れてない夫婦みたいなのかな、って思ってたら、当たらずとも遠からず、だった。お互いを大切に思い、深く愛し合ってたのがよくわかった。
しかし、なんの病気だったのかな?心筋梗塞みたいな急に息を引き取るような病気だったのだろうけど。
素晴らしい感性と味覚を持ってた少女・ポーリーヌだが、やはりまだ若すぎて苦味の奥深さやワインの良さまで教えるのは幼すぎて難しいよね、って思った。あと10年くらい経てばウージェニーの後継者になれるかも、なんて観てた。
住み込みで使えていたヴィオレットは食の才能がなかったようで気の毒だった。

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りあの