劇場公開日 2024年10月11日

「諦念なのか擦り切れた希望なのか」二つの季節しかない村 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

諦念なのか擦り切れた希望なのか

2025年1月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『雪の轍』『読まれなかった小説』と、「こんな重苦しくドロドロした映画をなぜ3時間も観続けねばならないんだ」と窒息しそうになりながらも、強い印象がいつまでも尾を引くイランのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の新しい作品です。今回もやはり、イランの地方都市を舞台に村社会の因襲・人間の狡猾さ・経済的閉塞感にがんじがらめになって身動きできない人々のお話で、198分の長編です。

 こんな田舎は早く出て都会に赴任したいと願う美術教師が、もがけばもがくほど地方の泥沼にはまって行く物語。その泥沼の泥一粒一粒を顕微鏡で観るように微細に描いて行くのが監督の手腕です。この教師の心象風景と同じく、この村も荒涼としているのですが、それが荒涼ゆえに美しいというのも皮肉です。

 重い絶望に押し潰されそうになって絞り出される「諦念」をも「擦り切れた希望」と呼び変えようとする男が他人とは思えなくなって来るのでした。

La Strada