劇場公開日 2024年2月23日

「自身を省みる教訓にもなる」落下の解剖学 moroさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5自身を省みる教訓にもなる

2024年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

スリリングな法廷劇としても、夫婦関係の崩壊を描くメロドラマとしても、息子の成長物語としても、如何様にも味わえる濃厚な作品でした。
152分と長丁場ですが、それ相応の見ごたえがあります。

証拠としてあげられる「事実のようなもの」は、ある人やある出来事の一面でしかない。
群衆は正確な事実よりも、より面白いものを信じたがる。
劇中で語られる言葉ですが、とても納得できます。

我が家のある日のエピソードを友人に話すと「家族で仲がいいね」と言われるのですが、また別の日のエピソードを同じ友人に話すと「家族仲、悪いの?」と心配そうに言われたことがあります。
私にとってはどちらもありふれた日常の一コマですが、その部分だけ切り取ってみると、とても良好/険悪なものに見えてしまうこともあるのだなと体感したことがありました。

手に取った石ころ一つで山のすべてが分かるものだろうか。
そんな裁判で、人を裁くことに意味なんてあるのだろうか。
事実らしいものはたくさんあるし、どれもそららしく思えるけれど、重要なのは何を信じると決めるか。

本作で起きた出来事の真実、事故か自殺か殺人かは、まったく重要ではないように思えてきます。
エンターテイメントとしてだけでなく、自身を省みる教訓としても非常に参考になる、おもしろい作品でした。

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moro