「解剖され露出したはらわたは戻らない」落下の解剖学 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
解剖され露出したはらわたは戻らない
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カンヌとアカデミーで評判のサスペンス映画で、山荘で男性が転落死した事件で妻が殺人容疑で逮捕、起訴されるお話しだけど、なんとも後味の悪い作品でした。美しい雪山の風景の中、夫の謎の死で始まる出だしはいいけど、警察の調査や弁護士とのやり取りなどダラダラと続き、お話しのテンポが悪いです。後半の裁判になってやっと持ち直すけど、検察も弁護側も状況証拠と臆測だけで決め手がなく、夫婦の生活の暴露合戦になってきます。ここで、この作品はいわゆる法廷サスペンスでなく、審理の過程で夫婦関係を解剖していき、性的嗜好や不倫、鬱屈、暴力、病気など、他人には見せられない夫婦の内臓を曝け出していくことがテーマであることに気づきます。しかし、裁判が被告側の勝利に終わっても、一度晒された内臓を元には戻せず、息子や関係者との間の埋めようにも埋められない断絶が残るのも苦い結末です。脚本の着想は面白いけど、枝葉末節が多くて上映時間は長過ぎですね。役者では、サンドラ・ヒュラーが渾身の演技。ハリウッドでリメイクするなら、主演はケイト・ブランシェット、弁護士は伊勢谷友介かな。
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