「珍しいくらい非常に教育的な映画」落下の解剖学 僧ヶ鍬崎さんの映画レビュー(感想・評価)
珍しいくらい非常に教育的な映画
ここまでまっすぐ青少年の成長に向かい合った映画は、昨今多くないと思う。
ほとんど状況証拠しかない状態で進行する裁判の鍵を握るのは、第一発見者の視覚障害の子供。
事故により視力が低下して以来引っ込み思案になった繊細な彼を守るのは、心の病を抱えた父と傍らの犬だけ。
彼の目線でそれまで隠されていた家庭の真実を明らかにしていく裁判は、子供から大人へなるための通過儀礼である。
最後の証人として自ら選んだ「真実」を話し裁判の趨勢を決めるのは、大人として人生を選択した証に他ならない。終盤、それまで抱きしめられていた母親を逆に抱きしめるのは成長と精神的別離を表している。
ラストシーンで母親へ犬が寄り添うるのは、独り立ちした子供をそれまで守っていた守護者=天使が一人になった母親の保護者となる、カトリック的な演出だろうか。
アメリカンニューシネマ以前、1950年代のようなテーマに対し非常にまっすぐな佳作。その割に説教臭くなく順当に面白いのは、演出の優秀さや脇を支えるキャラクターによるものだろう。序盤のタルイ展開に耐えられるなら、ご家族で鑑賞するのにもおすすめ
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