「映画的でない法廷もの」落下の解剖学 あげ玉さんの映画レビュー(感想・評価)
映画的でない法廷もの
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いわゆる法廷もの。映画としてどうやって面白いショットを作るのか難しいジャンルだが、この映画は成功はしていない。
映画ではなく演劇を観ている気持ちになる。俳優に頼り切りでショットの楽しさがまるでない。
とって付けたように自動車の中、運転席からの曲がりくねった道など映画的ショットが差し挟まれるが、そんなものでは貧しいショットを補間しきれない。
脚本もキャスティングもよいが、残念ながら映画としての魅力には欠ける。
結局のところ、自殺なのか事故なのか妻が殺害したのかという真相は明らかにされないが、裁判では息子の証言によって自殺だろうということで妻は無罪となる。
まず事故の可能性だが、室内に断熱材を貼り付ける作業をしていたのに誤って胸より高い位置にある窓から落ちることはありえない。事故の可能性は映画の中でも問題外とされていた。
そして自殺の可能性。何度も屋根裏部屋から地面を見たショットを繰り返すのは「あの高さで自殺は無理」だと誰にでも分かるように説明するため。普通に考えて自殺はありえない。頭を納屋にぶつけるように計算して落下することは不可能。
やはり妻による殺害しか考えられないのだが、最愛の飼い犬を危険にさらしてまでねつ造した息子の計算高いウソにより、辛うじて無罪となった。というのが真相だろう。しかし演出的には妻の殺害を匂わすショットはまったく見せない。これはなかなかよかったのでは。
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