劇場公開日 2024年2月23日

  • 予告編を見る

「真実よりどう思ったか」落下の解剖学 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5真実よりどう思ったか

2024年2月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

パルムドールを取ったこともあり、どんなラストを見せてくれるんだろうと、期待しすぎてしまっていた。フランス映画なので、結構ぬる〜っと終わる。まぁなんと言うか、思ったのと違った。やっぱり、できればアカデミーやカンヌで賞を取る前に、公平な目で映画は見たいよね。

この映画はどちらかというと絶壁に立たされた時の人間の心理描写等が秀逸な作品であるため、どんでん返し・衝撃のラストを彷彿とさせる予告自体、ナンセンスなんだろう。タイトルの「落下の解剖学」も微妙にズレている気がしたけど、原題の直訳なんだね。にしても、映画は靴紐のようにきちんと結んで終わって欲しいたちなので、本作のように緩いままだと締まりが悪くてスッキリしない。観客に投げかけるような作りでは無いものの、作り手なりの解釈・回答は作品の性質上示して欲しかったなぁと思ったり。

2時間半越えかつ、会話劇と言っても過言では無い法廷ドラマなのに、退屈を感じさせない作りになっているのは凄い。音楽の色やタイミング、多方面から読み解く展開も見事だった。盲目の男の子の非常にリアルな演技には驚かされたし、彼の心情をそっくりそのまま代弁するピアノも、家族の崩壊を暗示しているようで恐ろしかった。更にはワンちゃんの演技にも目を奪われる。品質に関しては申し分無くて、ノミネートも納得。観客の心を掴む、作り込まれた映画的な表現は素晴らしかった。

ただ、もっと<正義とは何か>みたいな思い悩まされるメッセージが込められていると想像していたから、この点数になってしまった。正直、テーマとしては在り来りのように見えてしまうし、この作品ならではの斬新な切り口で見解していたら好きになれたんだろうなぁと思った。

サプライズ