劇場公開日 2024年2月23日

「解剖されたのは、家族関係」落下の解剖学 bionさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0解剖されたのは、家族関係

2024年2月23日
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鑑賞方法:映画館

 あの切り札証言で勝負あった。って感じだけど、自分の心証を覗いてみるとどうも釈然としない。
 疑念を抱かせる微妙な表情をするザンドラ・ヒュラーの演技力と、英語とフランス語を巧みに切り替えるシナリオに惑わされてしまう。

 真実を解き明かすことがメインテーマではなく、夫婦間や親子間の心の揺れ、ひいては家族のあり方を解剖することが主題に感じる。
 とは言っても、裁判シーンは見応えがある。法服を着た1厘刈りの検察官、この人の舌鋒が鋭くて、被告人であるサンドラに殺意があることを参審員に印象付ける。
 守る側の弁護士は、ウェーブがかかった髪にスーツを着こなしているハンサム弁護士。検察官の攻撃を冷静にかわしながら、サンドラをがっちりガード。どことなくアラン・ドロン感がある。シーソーゲームを繰り返しながら、いよいよ判決。

 観た人はわかると思うけど、ダニエル役のミロくんがとんでもなく上手い。交通事故で、幼い頃に視力を失った少年の役なんだけど、耳にしたくない両親の負の部分を裁判で聞かされた時の困惑した表情のリアリティがすごいというか、守ってあげたくなる。

 夫婦喧嘩の最中にサンドラが夫を責める回想シーンがあるだけど、どうしても夫側で見てしまう。サンドラの芯を食った言葉が夫のハートを直撃し、追い打ちをかける体重の乗った言葉に夫のプライドはズタボロ。ホントのことを言うのは、やめてあげて。トドメはささないで。いつぞやの自分と重なって、胃がキリキリする。

 夫婦で鑑賞したら、気まずくなること間違い無しの作品でございます。

bion
TKさんのコメント
2024年6月2日

私は妻側視点で喧嘩のシーンを見てしまいました。ごめんなさい笑

TK
ゆ~きちさんのコメント
2024年3月22日

共感ありがとうございました。

夫婦喧嘩がつくづくいやになる作品でしたねw

ゆ~きち
U-3153さんのコメント
2024年3月14日

最後の一文に吹き出しましたw
おっしゃる通りだと思います。

U-3153
bionさんのコメント
2024年3月3日

コステロさん
コメントありがとうございます。
解剖してみたはものの、見なかったことにしたくなるような家族関係でしたね。

bion
コステロさんのコメント
2024年3月3日

おっしゃる通り、解剖されたのは死体ではなく、家族関係ですね。

コステロ
The silk skyさんのコメント
2024年2月27日

Bionさん、いつも真っ先に共感入れて頂き有り難うございます。
楽しくレビューを拝見させて頂いてます。☺️

The silk sky
ニコさんのコメント
2024年2月24日

サンドラは頭がいいことが災いして、相手を追い込んでしまうやり方をしていましたね。正論のうえ暴力は最悪です。
家族の喧嘩は、逃げ道を残しておかないと家庭が崩壊するだけだと思います(自戒)。
私も夫側で見てしまい、胃がキュッとなりました。

ニコ