関心領域のレビュー・感想・評価
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何も起こらないのにずっと緊張を強いられる
スクリーンの中では何も起こらないのに、裏では凄惨なことが起こり続けている音がしている。だからずっと緊張を強いられる。隣の家から悲鳴や銃声が聞こえてきたら、その度にビクッとなるのが普通だけど、登場人物たちはそれらが壁の向こうから聞こえてきても平然と生活している。悲鳴や銃声もそれが日常になると、犬の鳴き声や宅配便のエンジン音ぐらいに気にならなくなるんだろうか。耐えられず家を出て行くお母さんがまともな人の感覚だよね、と思いつつ、自分自身は日常の中で聞こえてくる悲鳴や銃声が気にならなくなってはいないだろうか、と再点検したくなる映画。
知っていることの責任
しかたがないのだ。 そう言ってしまうと身も蓋もないが、誰もみな関心領域のなかで生きているのだ。 あの家族と、ガラスケースに入ったユダヤ人の靴を見る現代人と、この映画を見ている私と、どれほどの違いがあるのか。それを痛切に感じた。 しかたがない。 それでも知ることと知らないことの差は大きい。 知っている人々は(私は)、知っていることの責任を感じて生きていかねばならない。
256 そんなに見つめないでよ
オープニングの画面でいきなり睡魔が。 レビューを見てあーそういう意味ね。 人間の業が出まくりなのは笑った。 だって大きな家の方がいいもん。 プールに滑り台でっせ。 転勤?!イヤよ、あんただけ行って、 あんたは好きだけど。 オカン凄い家でしょう。え?実家に帰った? なんで? まあ、拙は人間ってそんなもの。 同調圧力って跳ね返せない、とも思っているので 作品としては素晴らしいと思うも 人間的にはなかなか改善改革は困難なんだよねー とどこか冷める。 A24作品なのでどこまで攻めるかと興味が あったがなかなかなものであるのは事実。 監督のジョナサン・グレイザー 「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」でも我々の 認識を一歩ずらす演出で 本作も一筋縄ではいかない様子。 70点 2024年8月13日 京都シネマ
今の世界中に繋がる無関心という恐怖
この作品は、音とアウシュヴィッツ収容所の隣で暮らすごく普通の家族を通じて、無関心という事が本当に恐ろしい事を訴えています。 ヘートヴィヒがベッドに隠しているコートを自分の物と思い込み、着こなしてかつ、ポケットに入っていた口紅を塗る場面、ルドルフ司令官とその子供が川でレジャーを楽しむ内に沈んでいた処刑された人の骨が当たり、あわてて家に戻り、シャワーを浴びる様子、赤ちゃんが泣き叫び、誰も止めず、隣接する収容所の環境に耐えきれず、実の母親がいきなり出ていく所、銃声、怒鳴り声、悲鳴が最初から最後まで途切れる事なく響いている状況、仕事と家庭で起きている軋轢、命懸けでりんごを置いて行く姿、塀の外でまかれる人骨の灰、最後に出てくるアウシュヴィッツ収容所記念館のおびただしい受刑者の遺品、ガス室、司令官が吐き気をする所等...阿鼻叫喚です。 紛争、格差、気候変動等ポリクライシス=複合危機が世界中でリアルになっている中、この映画「関心領域」は無関心がいかに自分自身の生活へ跳ね返り、リスクを背負う事への警告を訴えています。
私にもあるヘスとの共通性
8/15が今年もやつて来る。毎年、この時期には戦争とヒトとの、戦争と国家との、戦争と民族との関係性を考える機会として来た。昨日、山口市で「関心領域」という映画を見た。 映画を見に行き途中で寝てしまった事や途中で退出した事はあったけど、昨日は途中退席し、しかし意を決して再び戻り続きを見た。そうした体験は初めてだった。 退席した直接的な理由は緊張感のあまり尿意を催し、それが最大尿意に達したからだけど、一度外の空気を吸わずにはいられなくなったからだ。 映画はアウシュビッツの所長を務めたルドルフ・ヘス家族の日常を綴ったものだ。壁を隔てた向こう側には生存率10%と言われるユダヤ人等絶滅収容所がある。壁のこちら側ではヘス所長家族らが一見すると優雅で贅沢な日常を送っている。映画Schindler's Listとは違い、ユダヤ人に対する虐殺の直接なシーンは一切ない。しかし煙突から上がる炎、川に流れてくる白い灰、それを浴びた子どもたちが不浄なものを拭うように風呂場でゴシゴシと擦られる場面、何度も何度も出てくる汽笛、射殺音、ユダヤ達の悲鳴とむせび泣く様な声、そうした音の通低音として鉛を流したような音。こうした環境でも正気を保つていた様に描かれていたのは妻のイルセ・ヘスだ。女は強し。 私は2017の夏にアウシュビッツ、第二アウシュビッツと言われるビルケナウ、チェコのテレジン収容所を訪れている。アウシュビッツでは日本人の公式ガイド員の中谷剛さんに案内してもらった。同じコースの英語のツアーにも参加した。行くにあたっては事前に何冊もの関連書籍を読み、DVDを見た。だからこの映画中のユダヤ人虐殺の場面が直接的に分かるというか感じられてしまうのだ。 私が退席した理由と再び鑑賞した理由はこの映画の映像と音が現地で見てしまったものを呼び起こし、でも最後までやはり見ないといけないと判断したからだと思っていた。 映画の後、アフターアワーカフェが行われ、話さずにはいられない私は参加した。話すとまた2017年に見たアウシュビッツを思い出す。映画のラストでは現実のアウシュビッツ博物館を清掃作業するシーン、その後にヘスが階段で吐き気を催しゲロを吐こうとするシーンが連続してた。カフェ参加者はあれはヘスのゲロを片付ける事の示唆ではないかとか、いやいや清掃員の日常はアウシュビッツで死体処理やその後の灰と骨の搬出をさせられたユダヤ人達の姿ではないかとか、清掃員にとって展示品は日常の光景で無関心になるのは当たり前だとか、そんな話が出てた。私はNIVEAの缶が展示してあった事を思い出した。 映画はヘスが螺旋階段を降りていくシーンでほぼ終わった印象がある。ヘスは自分がやってる事、この先待ち受けている事を理解しいたのだと思う。しかし私は何故、退席したのか、何故あそこまで緊張して映画を観たのか、今ひとつ合点がいかなかった。 山口からの帰りに私はセローのバイクで高速を走った。90km以上のスピードでトンネルを走ると、高周波帯の風切音となる。それは正に先程見た映画で聞いた人の悲鳴や慟哭だ。酷似した音だった。セローの様なバイクで高速を走ると風圧をまともに受けハンドル操作を誤ると死ぬ。しかしトンネル内はオレンジの光に照らされ他の情報がなく、正にゾーンに入っていた。一点だけ見つめて危機感は薄れ、狂気染みる。 アフターアワーカフェで私が話したことは壁の存在、壁を隔てた向こう側は想像でしか補えないことだ。情報は遮断され、加工されて、こちら側に都合の良いものしか届かないシステムとなっている。 私を震撼させたもの、私に緊張感を強いたものの正体は私の中にもあるヘス長官と共通する都合の悪いものは見ない様にする事や自己の保全を第一に考える脳機能、私の中にもある他者への残虐性なのではないかと思った。そう思えたのは高速道で体感したあのゾーン感覚だ。 関心領域をThe areaとは言わず、The zoneとタイトルしたのは、ゾーンに入れば他者への関心などなくなるからだ。それは私だけでなく、ヘスと同様、全人類のDNAに深く刻み込まれている人の属性なんだと私は思っている。シンドイ映画だった。
嫁
収容所所長の一家は、 ユダヤ系民族の大量虐殺が行われている真横で 愉快に暮らしている。 否応なく生活に染み入ってくる、 その音や、その匂いや、その明かり。 極限状態と隣り合わせにある 快適な暮らしの中で、 徐々に何かが蝕まれていく一家...。 でも嫁いできた嫁は超元気なお話。
サラリーマンの鬱
音響のすばらしさは他のレビューで語られていると思うので、ここではお仕事映画として徹底して主人公の鬱に焦点を置いた映画であった点を強調したい。 毎日人を殺して、効率的な始末の仕方を考え、肉の焼けた臭いを嗅いで鬱にならないでいられるだろうか? 作中漂ういたたまれなさの原因は、収容所に対する登場人物たちの白々しさもさることながら、誰も主人公のヘスの精神状態に対するケアがないことにも起因する。 妻は生活のことにしか、子供と犬は自分の不快にしか、部下や上司は第3帝国のことにしか興味がない。ここが地獄であると自覚し、ここを離れたいと思い、それを言葉にしているのは主人公だけである。 しかし、その言葉は最愛の妻に届かない。小川の前で妻に単身赴任を勧められ、性欲を自分の手で処理する主人公の精神状態は、おそらく世界中の勤め人がいつもどこかで感じているものだろう。なんという孤独だ。 ドライな映像は客観的にも主人公を突き放す。製作者と登場人物、両方からここまで疎外される主人公はそういない。いやな気分にさせる映画として本年度No1になりそうだ。
聴覚を刺激し、想像力を掻き立てる
この映画にストーリーはほぼ無い。 何気ない家族の日常を描いており、時たま家族内のいざこざが描かれているが、壁の向こうで起きていることを常に想像させられているので、家族内の出来事があまりにもどうでもいいことにしか映らない。次第に家庭内の雰囲気がヒリヒリしていくように感じるが、それが壁の向こうで起きていることに影響されているとは思えない。 かなり豪勢で贅沢な日常生活を送っている彼らと、テレビの向こうで起きている戦争を見ながら「ああ、大変だね」と呟いている我々にさほど大差はない気がする。 無関心は罪である、と改めて認識させられる。
遠くの銃声は軽い音に聞こえる
事前にどのような映画なのかしっかり調べて、なんならネタバレ感想も読んでから挑みました。 ショッキングなシーンが少しでもあると怖いので… とある特殊な撮り方をしているシーンだけ難解でした。後から解説を読んで納得。 心から万人に勧めたい作品とはいえませんが、少なくとも私は有意義な映画体験でした。
眠くなる
興味深いストーリーではあったけど映画として面白くない、眠くなる 直接的な暴力描写を使わずに音で隣で起きてる事を伝える手法は面白いし独特の間も良い でもアウシュビッツで起きた事に付いての正しい知識もないからイマイチしっくりこない きっとそれは私が「無関心」だから
ちゃんとした映像作品だった、、
関心領域 怖くない、が、何だろう? 音とか? 意外に平凡な演出とも、、、。 ですが、結局最後まで、 真黒なスクリーンをずっと眺めていた気分にさせられる作品。 長い始まりと自分史上最高にかっこいいエンドロール。 既に、最終章を序章に刷り込まれて観てしまう現代人のステレオタイプには、、、 オァウフィビダァゼェン。 無関心には主語なんて、、、、存在しない、、、事を教えてくれた。
ひさしぶりの金返せ
予告も見た上できっと最終的には何か仕掛けてくることを期待して鑑賞に至ったけれど、まさかここまで響かなかくてビックリ。悲惨さを音だけで感じとれる人は戦場にでも行ったコトあるんでしょうか😅 予備知識なく見たら、え、アウシュビッツってアノ? え、じゃあこの音は銃声💦とか衝撃を受けれたのかしら。 これくらいなら美術館で15分くらいの実験映像でいくない?
戦争が当たり前の時代に生まれていたとしたら…
今に生きてるから《絶対に反戦》と思いますよ。けど世が世なら…戦時中を生きてたら…自分だって気づくかわからないです。人として《理性》持ててるかわからない。国の思想、時代の思想に流されてるはず。とても怖い。人間て愚かな生き物。戦争に限らず《優勢保護法》とかさ、時代で人を不幸にしてきた事って沢山ある。ただただ亡くなっていった方に御祈りを捧げます。
靴の上から足を掻く
これを想像力というのだろうか。 物事を小難しく描く、というのはインテリの皆さんの好みなのか。 オッと思ったのは、現在のアウシュビッツの描写くらいか。 マニアックとも違う、変な難解さと周到な思わせぶりに、眉間にしわが寄った。 私にはその面白さが分かりませんでした。
無関心を超越している無感覚な人間達が恐ろしい
作り手が見る者に挑んでくるきわめて挑戦的な映画である。冒頭真っ黒な画面と音が約二分間続く。まるで見る者を暗黒面に誘うようにだ。ユダヤ人が毒ガスで殺されるアウシュビッツ収容所の壁一枚隔てて瀟洒な豪邸でアウシュビッツ収容所の所長家族が暮らしている。 その家には死にゆくあるいは死んだユダヤ人の衣服や食料が持ち込まれ、衣服を身体に纏い豪華な食事を楽しんでいる。このシーンを見ているだけで何か得体の知れない身の毛がよだつ感覚に襲われ恐怖すら感じた。 その要因の一つ目は、ユダヤ人を「人間」と思っていなことだ。軍人たちはユダヤ人を「荷」と呼ぶし主婦達はユダヤ人は抹殺されて当然な民族と思っていることだ。家族や仲間は、完全にナチスのユダヤ人排斥のプロパガンダに骨の髄まで染み込んでいることだ。 要因の二つ目は、ユダヤ人を一切映さない撮影技法だ。映像にはしないが、この家はアウシュビッツ収容所のすぐ隣である。ユダヤ人の叫び声やパンパンと響く銃声が聞こえているはずだ。加えて隣では、人間を焼却して炎が見えるし映画では感じられないがかなりの臭いもするはずだ。しかしここで暮らす家族は何も感じていない。もはや無感覚に なっているのだ。無関心を超越した無感覚さが恐ろしいのだ。 映像であえて映さない毒ガス室に送られユダヤ人の恐怖や落胆、死を見る者は想像する。それは、映画中盤に画面を真っ赤にしたことによって血流の断絶を想起させるからだ。たった壁一枚隔てて死にゆく者と豪華な生活を送る者の対極を作り手は見せつける。広い庭、温室、色とりどりの花々、滑り台付きのプール、豪華なベッド、部屋の内装を自慢する妻の感覚が恐ろしい。「自分がどこに住んでいるのか」を気にしない無感覚が恐ろしいのだ。 幼い娘が見る夢、モノクロで暗いトーンである。それが一瞬カラーに変わるのは何故か。ピアノを弾き歌うのは誰なのか。ラストシーンも再度真っ黒な画面で覆い重低音の腹の底に響く音楽が流れる。作り手は見る者に挑んでいるのだ。「この家族の未来はわかっているな」と。
#13 理想の棲家は
アウシュビッツは収容されている人たちにとっては地獄のような場所でも、司令官の妻からすれば理想の夢のような棲家だったんだ。 関心領域というか、私には中で起きていることに全く興味がない家族は無関心領域に生きてるようにみえた。 あのリンゴを夜中に運ぶ少女と妻の母が突然家を出て行った理由がわからなかった。 置き手紙には何が書いてあったんだろう?
計算された設定、ラストが見事
最初これで終わり?とも思ったのですが、エンディングの曲を聴いているうちに現代に通じるすごく意味のあるラストだったと感じるようになりました。 去年、同じ映画館で「pearl」を見て大満足だったのですが、同じ配給会社A24とは知らなかった。 思わずパンフレットを買いましたが、作中ちょっとわからなかった描写の解説があり、こちらも満足。パンフレット内で紹介されているこのご時世に対する監督のコメントにも気骨を感じました。関心領域というタイトルの妙にも唸らされます。 もしお財布に余裕があったら、パンフレットを買うのがおすすめです。
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