劇場公開日 2024年5月24日

関心領域のレビュー・感想・評価

全355件中、201~220件目を表示

4.5決して好きだとは言えない傑作

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

スカーレット・ヨハンソンのフルヌードが鮮烈な印象を残した、しかしそれ以外は何も覚えていない「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」以来、8年ぶりとなるジョナサン・グレイザー監督作。

これは端正とも言える傑作だった。前作と違い忘れることができない作品になるのでは。

ナチス・ドイツによるホロコーストおよび強制労働により多くの犠牲者を出したアウシュヴィッツ強制収容所。

今作は収容所と壁ひとつ隔てた屋敷に住む所長のヘス中佐とその家族の暮らしをとらえた。まさに束の間の幸せ。

我々映画好きの多くは収容所の中の出来事を嫌というほど見てきたわけで、その音や臭いを思うと反吐が出る。

クリスティアン・フリーデルが命令に忠実で収容所の処理能力向上に努めるヘスを淡々と演じた。たくさんの人間の効率的な処分が求められた。

名演が続くサンドラ・ヒュラーがヘスの妻を演じた。最高の家にすべく尽力した。夫が転勤になっても家を明け渡すことはなかった。

そこを訪れた妻の母は早々に引きあげた。
まともな人間が住める場所ではなかった。
不穏な「音」が恐ろしい環境を表現した。
音響賞でオスカーを手にしたのは必然だった。

そう、これは決して好きだとは言えない傑作‼︎
未見の方は元気な時に観ることをお勧めする。

ちなみのにポーランドの南部にあった収容所は1945年の初頭にロシアにより解放され、ヘスは47年に処刑されている。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
エロくそチキン2

2.5期待しすぎたか?

2024年5月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

特にR指定になるような刺激的や目を覆う場面は皆無 隣に住む高官らの家族の日常を描いた作品で特にストーリーは無い?

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ゆたぼー

3.0映像はすごいね

2024年5月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

作品として文章化するとつまらなそうな作品になるが、映像や音響表現が素晴らしい映画。
単純に収容所を見せるのでなく、火葬場の煙?や遠くで聞こえる悲鳴で裏で何が行われているかが分かるのがよい。
星3.5くらいにしたいけどストーリーは本当に起伏なく平坦なので星3で。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
bahoru

4.0是非 映画館で。

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

口コミで大抵の方が恐ろしさを物語っているのが多いので鑑賞しました。
冒頭から 始まる不安にさせる音。なんともいえない居心地の悪い事。
不気味さ200%。
あと何回か不気味な音のみの映像。
最後のエンドロール。
しかし、庭、プールで家族が楽しんでいるけど、匂いはしないのかなぁ?
妻の母親がまともで救われました。
最後に博物館に見せられた鞄、靴の山々。
悍ましい。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
リモーネ

3.0修羅場を直接は映さない間接話法が流行りらしい。

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿

支持。
撮り手の策が前に出過ぎた感あるが。
企みが成功する程、テーマが奥に引っ込み弱まる皮肉。
先のオッペン然り、
阿鼻叫喚鬼の修羅場を直接は映さない間接話法が流行りらしい。
見るからに残虐だから痛いから虐殺は駄目、もありでは。
BGMの過剰な不快がやや下世話側に寄せた感も。

コメントする 1件)
共感した! 5件)
きねまっきい

3.0以前「縞模様のパジャマの少年」という、本作品と同じような設定の映画...

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

以前「縞模様のパジャマの少年」という、本作品と同じような設定の映画があった。ドキュメンタリーの様な「関心領域」に比べ「縞模様・・」は、少年の目を通した物語として・かなりショッキングな映画として創られていた。どちらも・・制作意図は善意の映画ですが・・あまり人に勧められないかも・・。
「縞模様・・」の奥さんなど、家族はちょっと良心が残っていたが・・「関心領域」は、悪名高い、ルドルフ・ヘスと家族のお話なので・ほぼ真実で、あのような感じだったのでしょう・・。
当時、優雅な生活を送っていた、ドイツの支配層、ナチスドイツは・・自らの利益だけに興味が向けられ・・終日聴こえる、何かを焼く焼却炉の音、煙。何かを運んでくる汽車の汽笛、怒鳴り声とそれに伴う銃声・・叫び声・・。それらは、豊かな生活を支えてくれる要因と認識し甘んじていたのか? それとも、感覚が鈍ってしまったのか?元々、そういう残酷で鈍感な人間たちだったのか???
「関心領域」の描く世界。実は現代社会の暗示?
優雅に暮らす、一握りの資本家、お金持ち、政治家。一方、奴隷の如く働く、一般人、労働者(頭脳も肉体も)ての関係の様でもある。彼らの「関心領域」には、我々は入っていないのです♪

コメントする (0件)
共感した! 0件)
J417

4.5この結果から、今現在へ

2024年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

美しい自然の中で和やかに暮らす家族、その暮らしが仲睦まじく明るく朗らかであればあるほど、塀の向こうとのギャップ、違和感や恐ろしさが際立つという、なんとも奇妙な感覚にさせられる構成でした。

強制収容所についての知識がある上での感覚だとは思いますが、冒頭から音を意識させられ、壁の向こうの不穏な音、不意に差しはさまれる不協和音などから、この和やかな暮らしが異様であることは強く意識させられます。
淡々と日常を捉える映像も、壁の向こうの煙や炎、夫婦の使用人に対する態度、子供たちへの影響など、違和感や不穏感がちりばめられています。

直接的な残酷な描写はありませんが、所長である父親がもたらす残酷な恐ろしい結果が示される場面は、やはり奇妙なインパクトがあり考えさせられます。
その結果は現実に今現在に繋がっている、今現在、その結果を忘れずに見つめ直し繰り返さないようにすべき、というメッセージかと感じました。

夜の少女は誰なのかなど分かりにくい部分もありましたが、淡々とした語り口や構成、映像や音楽などの演出も秀逸で、虐殺行為を非難する強い想いも伝わる、良い作品だと思います。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
nakadakan

3.5塀の外関心の外には収容所があり、虐殺が行われている

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

塀の中では幸せな家族の暮らしがある
虐殺の音は途切れなく、数となった人を焼く煙が立ち上る
この設定は私たちの現在を撃つ
そうだろう、イスラエルよロシアよアメリカよ日本よ
絵本の闇に動く少女が心にのこる
映画は盛り過ぎているように感じる

コメントする (0件)
共感した! 2件)
すぅ

4.5いつなんどきも思うのだがアウシュビッツの将校たちはその後どうなったのか、と。

2024年5月29日
スマートフォンから投稿

『落下の解剖学』で100点満点の演技を魅せたサンドラ・ビューラーが此処でも最低の糞女っぷりを見事に演じた。
後ろからドロップキックをお見舞いしたい様な歩きっぷりもこれまた良し。
そしてワンコは80点。
しかし内容的には・・・もう少し頑張れ。
いびき掻いて寝てた爺さんを隣の婆さんが起こしたのは100点。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
Psycho

3.0二度とするなよ

2024年5月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ずっとずっと不協和音。この映画の場合、星の付け方が分からないです。
壁に隔たれて見えないだけで環境音があれってどうかしてる。子供たちに最適な環境であるわけがない。軍事的な異動に夫婦の心を揺り動かされてるシーンで呆れるのはすぐ近くで何が起きているか知っているから。この映画がにおいもしていたら本当に恐ろしいものになるところだった。
残虐な歴史を知っていると鑑賞中キツイです。効率的にどれだけ大量に殺戮するか真面目に議論したり構造を考えたりキツイ。

エンドロールで客席が段々ざわめくのが分かって、つまらないから離席っていう感じではなかった。上映後がすごく静かでした。
二度とするなよという子供のセリフが印象に残っています。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
井も

4.0無関心人間の悪と滑稽さと儚さと、、、

2024年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

大胆な単色画面と示唆的な音響から始まる冒頭から、ミーハー心に思った。配信のみの作品を対象にしない、スクリーンで観て価値のある「カンヌが好きそうな」映画だな、と。
「リメンバー アウシュビッツ」的なメッセージを斬新な切り口で描いた作品かと思って見始めたのだが、途中から「違うそうじゃない」と思えてきた。見たいものしか見ない、自分の幸せが他人の不幸と隣り合わせ(というかその犠牲の上で)で進行していることに対する
無頓着さ、狭い世界の幸せを永遠の楽園のように捉えて支配しようとする(この場合は偶々)専業主婦の愚かさ、、、これは人間の愚かさを描く一例なのだなと。
「2度とするなよ」と、一番下の男の子は独り言で呟いた。収容所の子どもを厳しく折檻する親ナチスの声を耳にして。その他にも、染まってない子どもたちの言動が救いだった。
それにしても、あの奥さんを演じていた女優さん、「落下の解剖学」の時とキャラは違えど、ホントにそんな人みたいに人をイラつかせる演技力というか圧の出し方が実に上手いなあと思った。
蛇足になりますが、もっとわかりやすく切なかった映画「縞模様のパジャマの少年」を思い出し、改めて胸が締め付けられた。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
Kumiko21

2.5ん?観てるこっちを試してんのか?

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

なんだ?冒頭のなかなかの時間(たぶん数十秒)の放送事故のような黒い画面! 邦題、関心領域ってタイトルだというので、なんらかのメッセージなのか?とか色々考えてしまった。気をてらいやがってとちょっと腹も立ちました。
ちゃんと観れてたのか?ぼくには難しい映画でした。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
ain

3.0評価に迷う

2024年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アウシュビッツ収容所の隣で、優雅に暮らす収容所長一家を描いた問題作。
音などの間接表現に徹し、ストーリー性皆無なので、映画としてはどうなのかなあ、と評価に迷う。
モノクロ・ネガの画面で、少女がやっていたことは何だったのか、そこだけはさっぱり分からなかった。どなたか、教えていただけませんか?

コメントする 6件)
共感した! 21件)
ファランドル

5.0耳をすませよ!見えていない所こそ見よ!

2024年5月29日
Androidアプリから投稿

冒頭からのスクリーンを覆う無地の画面に度肝を抜かれる。
演劇で言うところの暗転だ。
映画では暗転する必要も無い。
演劇では限られた舞台で大勢の戦士や殺された人を出すことはできないから、見せずにナレーションやセリフで描くことが多い。
できないからそういう演出で物語性を高め感動を導く。
しかし、映画ではどれだけたくさんの数の兵士でも殺される人でも、エキストラを使えば直接的に描くことはいくらでも出来る。
あえてそれをしない。

そしてこの映画ではセリフは全く重要では無い。むしろセリフ以外のガヤ音の中アウシュヴィッツの収容所の状況が微かに表現されていく。
ぼーっと観ていたら聞き逃す音にこそ自分の関心領域以外の世界がありそこを感じ取り想像することが大事なのだ。
故にセリフ以外の音をちゃんと聴けよ!と注意喚起の異音が所々で鳴る。観客にさあ、耳を研ぎ澄ませよと言わんばかりに。
無映像の色だけのシーンもそうだ。
その背景で残虐なことや悲しいことが起きていることをさあ!想像せよ!とばかりに色分けも不気味さを増す。
舞台装置を転換するための暗転とは訳が違う。観客の頭の中に「想像」のスイッチを入れるための時間だ。

さて、現代の平和ボケ日本にいる私の関心領域はどこにあるのか。
ほぼ妻と似たような大人の女性としての幸せに関心がある。子どものことや美しいドレスや花や家やまつ毛が確かに大事。
だけど、夫には夫の、娘には娘の、ベビーにはベビーの、使用人には使用人の関心領域がある。
他人の関心領域にも想像を膨らませよ!
他国の関心領域に想像を膨らませよ!物事は一面では描けない。

最近観た戦争の映画三本。
ゴジラ-1.0は極めて日本的キャラクターのゴジラを使った、ファンタジーの中の日本目線の戦時中の人間ドラマ。
オッペンハイマーは科学者目線でもあるが広島長崎の描写はセリフ二言だけでおおむねアメリカ目線。
無名は日本と国民党と共産党の二重スパイの話で中国目線で長期にわたる戦争を描いた。
これらは1本の映画につき、ひとつの国からの目線。

戦争ではなくとも複数の視点でひとつのものごとを描いているのは芥川龍之介の「藪の中」であり黒澤明の「羅城門」で、それぞれの言い分や目線をひとつの物語の中で描き、真実は藪の中だ。何が正義は読んだ者、観た者に委ねて終わる。
それも素晴らしかったが、そこまでだった。

でも関心領域はそれとはまた違う視点で五感で感じろと投げかけてくる。
今、自分の関心領域の外にあることにもっと耳を傾け、見えないところこそ想像せよと。

赤ちゃんは物心着いておらず泣き叫ぶ事で自分を表現する。関心領域はほぼ生理現象だ。
女は美しいものや家や生活がいちばん大切だ。
男は戦争に加担したり子どもにヘンゼルとグレーテルの物語を読んであげたり妻が単身赴任先に着いてこなかったものだから女を連れ込んだり。
娘はまだまだ女にはなっていない。物語の世界の中で生きている。女になる前、大人になる前の彼女にしか見えない少女世界がある。
幸せな暮らしを共有している家族でもこれだけ見ているものが違うと見せつけてくれる。

今この瞬間にも紛争は起きている。
後から振り返ったら第三次世界大戦は既に始まっていたなんてこともありうる。
見えていないこと聞こえていないことにも関心領域を広げたいと思わせてくれた。

アウシュヴィッツを何もリアルに見せずに嘔吐と無数の靴や清掃のシーンだけで全てを語ってくれた。
監督の視点に感服。
エンドロールも侮ることなかれ。異音にどんどんかぶさっていく人々の声。それがまさに「世界」だ!
答えはひとつではない。

コメントする (0件)
共感した! 12件)
momo

2.0企画倒れか

2024年5月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

企画コンセプトは面白いが、戦況が悪くなってからもあの生活のままでは違和感があるので、ほんの一時を切り取った演出にすれば成立したのかも。
後半は「ヒトラーのための虐殺会議」みたいな内容で、夫婦のやり取りも邪魔にしか感じなかった。「希望の灯り」「落下の解剖学」のザンドラ・ヒューラーが見られてまあ満足。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
羅生門

1.0駄作。

2024年5月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

寝られる

ダラダラと描かれていて何も心に響かない映画。むしろ観ることに不快感と苦痛しかない。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
映画ネコ

2.5面白い映画ではない

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

現在進行形の戦争や紛争に対して、我々のほとんどはヘス家族と同様に無関心で見て見ぬふり。
言いたいことはよく分かるけど、面白い映画ではないです。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
やまぼうし

3.0私の関心領域って…

2024年5月29日
スマートフォンから投稿

 ほぼ予備知識なしで映画館へ。
 アイヒマンの名が登場しましたね。何気に映画マニアの琴線に触れます。
 妙にストーリーの流れが悪いと云うか、飛び飛び状態の映像になっているのは、やはり、この映画のタイトルが原因ですね。誰の関心領域を映像化しているかは、各自の判断に任せられているようです。良く言えば、御見物の想像力を掻き立てる。悪く言えば、不親切。どう思うかは、貴方しだいですけど。
 ここで、事前にお断りしますが、私は、ある特定の思想を否定するつもりはありません。ただ、私の最近の関心領域から、コメントします。この映画、誰が、何のつもりで創ったのか分かりかねますが、かつて、世界一、非道い扱いをされたユダヤの民。今後、同じ轍を踏まない為には、あらゆる犠牲を厭わない。無関心な世界を敵に廻しても、全て排除する。モーセの教えのみが、選ばれし民の証なのだから。それ以外に関心はない。…と、考えているヒトのバックボーンになっているような…。
 繰り返しますが、過去の出来事を否定するつもりはありません。ただ、過去の出来事が、傷つけ合うだけの未来を導くならば、それは、ちょっと…。
 傷負い人が傷を癒すには、他者を傷つけるしか方法はないの?。だとすれば、新たに傷を負ったヒトは、どうすればいい?。
 この映画に、罪があるわけではありませんが、今の私の関心領域から見える世界は、以上となります。

「アンネの追憶」
 アンネの日記を映像化するには、憚れる描写があるので完全にはできないとのことですが、アンネの関心領域は、本作でご確認下さい。余力のある方は
「縞模様のパジャマの少年」
「サウルの息子」
「ハンナ・アーレント」
「パラダイス・ナウ」
「オマールの壁」
をどうぞ。皆様の、領域展開の手助けになると思われます。

追記
 やはり、私の関心領域は、映画の外みたい。先日、ネット記事を拾い読み。ユダヤの迫害と言えばナチスドイツと思いきや、それ以前から、キリスト教圏では、多かれ少なかれ、迫害があったらしい。イスラエル建国に、欧米が強く関与したのは、言葉選ばずに言えば、厄介払いの側面が、見え隠れするとのこと。
 キリスト教圏の関心領域。ユダヤの関心領域。数千年にわたり、その地に暮らすパレスチナの関心領域。その全てが、1つの地域に集約された結果が、絶望的なテロと殺戮でしかないとすれば、私達の関心は、何処に向かえばいいの?。
 希望のともしびが、憎しみの業火に呑み込まれる様を、見ているしかないのかな。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
機動戦士・チャングム

4.5無関心の恐ろしさ

2024年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

「こんなんマトモやない!」

 劇場の明かりが灯った後に思うた感想です。それほどまでに、今まで観てきた映画とは違う斬新な衝撃を受けました。

 ストーリーの舞台は、第二次世界大戦中のアウシュヴィッツ強制収容所。そこの所長は、あろうことか収容所の真横になかなか豪華な家を構え生活している。所長の妻は言う、「望む以上の生活を手に入れた」と。子供たち共々と仲睦まじい生活を送る家族。しかしある日所長に対し、“転属”が言い渡される。今までの功績による栄転なのだが、理想以上の生活をこの家で得た妻は強く反対する・・・てな感じです。

・・・すでにおかしいと思うんです。アウシュヴィッツの隣にある家での生活が理想以上のものであり、しかもそこで暮らすだれしもが“当たり前”と感じて日常を送っているなんて。隣では大虐殺が行われてる施設があるというのに。
 しかし、それをこの家族が(所長は“仕事”なので別だが)その現場を見ることはない。だって収容所の周りをそこそこ高い塀が囲っている。だから見ることはない、が、

音は届いてくる。

ブォーンという不気味な、怒号や悲鳴が混じっているのか、ただの風なのか、しかしよくわからない音・・・。それだけは届き、観ながら塀の中では何が起こっているのか嫌でも気になり、想像してしまう。
 ここが自分の中では斬新な衝撃ポイント。本作は音、それも“環境音”に工夫を凝らすことで、見えているモノ(=塀の外)と見えていないモノ(=塀の中)を併せて不協和な感じを作り出していると思うのです。ゆえに本作は不気味なんです。
 不気味さはそれだけではない。意外と所長の顔がよくわかるシーンが少ない。ロングショットで何を考えているかわからないような、それとも感情をなくしたのかと感じてしまう。所長の妻は喜怒哀楽をきっちり表すが、所々で真面目な顔でマトモな内容やない会話を素でやっている。そして子供たちは、隣で何が起きているが、程度の差こそあれ薄々気づいているような。しかし結局全員が、「何かが起こっている」ことを感じ取りながら、それに対し興味を感じていない。

無関心ほど恐ろしいことはない。

無関心は、いつしか人を人と思わなくなってしまう。だってどうでもいいんやから。見捨てることに躊躇いなんてものはない。そして見捨てられたモノは消滅を待つだけ。これを人間に当てはめて行われたとしたら、恐ろしくないでしょうか。要は「いじめを気にしない」ようなものか。どんなけ酷い事が起きてようともどうでもいいんやから。無関心は必ず悪い方へ加勢する。本作はそれに対する警鐘を鳴らしていると思うんです。

無関心は最悪の事態を招くと・・・。

“音”と“無関心”で穏やか且つ強力な“不気味”さを醸し出している本作。自分は今まで戦争やホロコーストを題材にした作品を多く見ているが、本作のような雰囲気を持った作品を知らない。

コメントする 2件)
共感した! 8件)
asukari-y

4.0知ってもいるし、聞こえてもいるのに

2024年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

目に見える暴力は全く描かれないのだが、だからこそ壁の向こうで起きていることに想像力が向いていく。

知っていながら、聞こえていながら関心を持とうとしないことの暴力は、実はこの家族も蝕んでいるのだけれど、「関心」から最も遠い妻はそれにすら気づいていない。

幸せな家族の団欒も青春の思い出も全てこの場所で起きているということが本当にグロテスク。

そして世界は実はそういうものなのだ。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
Pocaris