劇場公開日 2024年5月24日

「無関心の未来」関心領域 きのこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5無関心の未来

2024年5月26日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

アウシュビッツ収容所の所長ヘスは、あまりにも有名な人物なので、名前ぐらいは知っていたけれど、この映画で本当に恐ろしかったのは、彼の奥さんでした。
家の横で、ユダヤ人が虐待され昼夜問わず焼かれているのに、壁一つ隔てた家を楽園と呼び、子供を育てるのに理想の環境と言う彼女は、もはや異常としか見えませんでした。
でも、それはユダヤ人を人ではなく「何か動く物体」程度にしか認識しておらず、存在そのものを無視しているからだと思いました。
映画の収容所のユダヤ人は一切映りませんが、昼夜問わず響く「音」が、中の状況を雄弁に物語ります。
初めはもしかしたら、彼女や彼女の子どもたちも、その「音」に恐怖していたのかもしれません。
そして、そこに住むためにはその「音」を無視しないと、普通の神経では住むことが出来なかったんだと思います。
慣れや無視することは、しばしば自分を守るために大事なことかもしれませんが、本当にそれで良いのか?と言うことを、問い掛ける映画だと思いました。

この映画では、家族の中で唯一、ヘスだけが収容所内でのことを目で見ているのですが、映画の最後、収容所に戻ると分かった後に、吐き気を催すシーンが印象的でした。
因果報応と言うのが合ってるのかどうか分かりませんが、もしかしたら奥さんがアウシュビッツを気に入らなければ、戦後ヘスの人生も変わっていたかもしれません。
もしかしたら、奥さんの無関心がヘスを戦争犯罪者にしたのかもしれません。

私達は、この時代より、簡単に世界で起こっていることを知れるようになりました。
遠い何処かで起こっている戦争も映像で簡単に見れるし、知ることもできます。
遠い所で起こっていることを関係ないとするのか、関心を持って知ろうとするのか、そして行動に移すかで、未来が変わるのかもしれないということを、映画の最後に思いました。

きのこ
かばこさんのコメント
2024年5月28日

奥さんの異様な鈍感さ、無神経さはどこから来たんだろうかと考えてしまいました。

かばこ
Mさんのコメント
2024年5月28日

関心を持ち、知りたいと思うことは大切ですよね。
でも、(私にとって)行動に移すのはとても難しいです。

M