劇場公開日 2024年5月24日

「頭クラクラです。。」関心領域 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5頭クラクラです。。

2024年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

東京の映画館の多くは毎週火曜に上映スケジュールが更新されます。私の場合、多くの上映作品の中から「劇場で観る」と決めた作品の中でも「(サービスデイではない)初日(金曜)に」が付く場合は、それなりに特別な作品であることが多いです。本作は賞レースで話題になったこともあり、やはり初日を狙っておりました。その結果、上映時間の都合と安価に観るための手段(リピータークーポン使用)を考慮し、本日は久しぶりに新宿まで足を延ばしました。(実際に往復歩いています)公開初日の新宿ピカデリー、朝一回の大きめのシアター2はほどほどの客入りです。或いは、公開規模からしたら若干淋しいかな、と。
で、観終わった直後の率直な感想は「あったま痛…」。事前に凄いとは聞いていた劇中にずっと鳴っている「音」と、ポイントで執拗に鳴り響き続ける音楽。アカデミー賞音響賞は納得ですが、実際かなり削られました。半端ないです。
一方で、内容についてはと言うと、怖からずに正直な言い方をすれば、「好きな作品とは言えないし、早々にはもう一度観たいとは思えない」なのですが、「斬新な表現に見えて、これが特別ではなく誰にでも当てはまる(ハンナ・アーレント的な思考)」と思わざるを得ず、好き嫌いだけで評価は下げられない圧があります。或いは、我慢してでももう一度観ればまた新しいものが見えてくるだろうと思いつつ、逆に一度観ただけに、より一層の覚悟が必要だと解り、そのハードルの高さを感じます。
そもそも、この場所やそこで行われている所業と、それを何食わぬ顔で取り仕切る人間たちを見れば、はっきりそこに向けて怒り、そしてそれを責める気持ちで自分の正当性を確認できた気になれるのですが、見せられる多くは普通の生活と多くの子供を含む家族の様子。周りには奴隷同然の立場であるお手伝いの人たちの存在と、時折、その距離感すら生々しく感じる怒声、そして銃声が聞こえる生活。そこで淡々と暮らしている様子を信じられないと思いながらも、ふと考えれば「レベルの違い」こそあれ、現代の自分たちの世界と生活にだって置き換えられないかと気が付いてゾッとします。
そして観ているうち徐々に、同じ家で生活する家族にもそれぞれ違いが見られるのですが、なかでも妻であり母であり、且つ娘でもあるヘス夫人・ヘートヴィヒ(サンドラ・ヒュラー)の執念と発言にはさすがに言葉を失います。或いは、その異常さに「自分は彼女とは違うし、この世界観はどうかしている」と思えばこそ、これが映画だと思えるのかもしれません。また、一点、説明のしようもないため観ていただくしかないのですが、終盤に差し込まれるシーンがまた違った意味でゾッとしますよ。
いやいや、観終わってクラクラしつつ暑い中2時間歩いて帰ったけど、何なら頭の方はそれくらいがクールダウンに丁度いい作品です。これからご覧になる方は覚悟してどうぞ。

TWDera