「もっと悪をつくしても良かったのでは。やや中途半端な印象。」首 うさぎぐさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと悪をつくしても良かったのでは。やや中途半端な印象。
ストレスがたまっているのかもしれないが、人の気持ちや、自分だったらどうしよう、とか考えずに、欲望と悪虐の限りをつくす、というのは、それなりに魅力的なところがある。
劇中の信長は、尾張のおおうつけが、そのまま成長したような酷い男。今でいうなら、スーパーブラック企業のオーナー。色とか金とか、何か欲望に取り憑かれている、というよりは、もはや人の命を弄ぶ事が自己目的化している。
秀吉、光秀をはじめとする部下の諸将は、跡目をエサに従わされているけど、結局、信長が自分の息子にあとを継がせようとしているのが露見して、本能寺の変に向けた陰謀が動きだす。
光秀は、人ではない者として、崇めて従ってきたが、所詮、肉親への愛情に囚われていたか、という恨み言を述べる。
このあたり、脱人間化の願望と、人間であらざるをえない事のせめぎあい、みたいなところがテーマかと思って見ていた。
が、その光秀にせよ、最後は、武士としてカッコよく死にたい、みたいな人間的な(?)欲望に舞い戻っているように見える。
結局、一番のカタルシスは、信長の黒人従者である弥助が、本能寺で助けを求める信長をぶった斬るところで、単純に、ざまーみろ、と快哉を叫んでしまった私は、もう、べったり人間サイドなんだなーと思い知る。
普通の人には、普通に人間的なのが一番なんだから(当たり前か)、そこを突き抜けていくような悪が足りなかったのでは。登場人物が、少し人間的すぎた。迷うくらいなら、迷うサイドに軸足をおいてくれればいいのに(それじゃ、よくあるヤツだけど)。
予告編とか見ながら、勝手に、悪と非人間性を尽くした最後に残るキラキラ、みたいなものを期待してしまったけど、そのだいぶ前で引き返してる印象があった。
まぁ、期待しすぎで、だいぶ見落としてる所もあると思う。