宇宙の彼方よりのレビュー・感想・評価
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H.P.ラブクラフトの世界
本作品を見る前に、H.P.ラブクラフトの短編小説の原作を読みました。この世に存在しない色というのをどうやって映像化するかというところに着目しました。モノクロにして宇宙の色だけ鮮やかにしたのは、見事です。ただし、原作は第二次世界大戦前にも関わらず、裏のテーマと思われる差別の問題を斬新に描いていました(感じた)。本作品は原作の雰囲気には近いのではないかと思いつつ、映像化するなら、もう少し忍び寄る恐怖が欲しい感じがしました。とにかく淡々と進むところが良いかもしれませんが。
禍々しさに満ちた色
薄れていく記憶の中ではっきりと覚えている"恐怖"にだけ色が着く、映像化としての着想の妙と、理解の及ばない存在に害される恐怖と禍々しさに満ちていました。
『カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-』と同じ「宇宙の彼方の色」を原作にしつつも、現代版にアレンジした後者とは全く異なるエッセンスが効いており『宇宙の彼方より』がより原作に近い恐怖を描いています。
原作の持つ"得体の知れない、遥か高次元よりの恐怖"が理不尽に降り注ぐおどろおどろしさを感じることの出来る、唯一無二の作品となっていました。
ローバジェットゆえの創意工夫
H・P・ラブクラフトの『宇宙からの色』の映画化だが、製作は2010年。2019年製作のニコラス・ケイジ主演『カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇』を先に観ていたので、それとの比較。ニコケイ版は時代設定を現代に、田舎に越してきた一家を主軸にしていたが、本作では舞台を第二次世界大戦前後の西ドイツ、そして主人公の息子が行方不明になった父親を探しに村を訪れるというあらすじになっている。
ニコケイ版は、もはや彼の十八番となったイッちゃっている演技が炸裂しており、スリラーとブラックコメディが同居したザッツ・ニコケイムービーになっていたが、本作ではヨーロッパの作品らしく、しっとりジワジワと主人公に謎の「色」が忍び寄ってくる演出が特徴。風や雨、時計や床板の軋みといった自然音や生活音が観る者の不安・不快感をさらに煽る。テレビ版『トワイライト・ゾーン』のテイストを狙った感も。ローバジェットゆえにいろいろな点での地味さ、乏しさは否めないものの、全編モノクロというのが「色」の怖さを高めている。
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