「やはり今見ると古い」アル中女の肖像 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
やはり今見ると古い
1978年の作品である。ベルリンの壁はあと10年と少し存続するが冷戦はほぼ終末期に入っていた。千鳥格子の服を纏った3人の女性が狂言回しで登場するが彼女たちはいわば社会のメージャーの象徴である。つまり社会を動かすのはイデオロギーではなく統計や予測値になったことを示している。ちなみに英国のみならず全世界に新自由主義の波をもたらしたサッチャー政権はこのあと1979年に成立する。
さてこの映画はそういった時代背景のなかで個人と政治の対峙について語っているのだと思う。
古い話となるがベトナム戦争の時はベトナムの僧侶が戦争に抗議して焼身自殺した。この映画は酒をとめどもなく飲み続け緩和に死を図る女の話である。しかし本人は何も語らず、またその非協調的な態度と暴力性(飲んだグラスは必ず割る)から周囲の理解も得られない。(ショッピングカートレディを除いては)
つまり極めて内向きなのである。何と戦っているのか明確には提示されない。これは当時の社会の閉塞感の表れではないかとも思うが今となってはよく理解できない。
主演のタベア・ブルーメンシュタインは当時のファッションアイコンであったとのことだが色白ながら武骨な体型で先端ファッションが似合っているようにはみえない。カメラワークにみるべきところはなくベルリンの夜も暗く田舎臭く魅力的にみえない。残念ながら現在の観客としてはあまり面白い映画とはいえない。
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