花腐しのレビュー・感想・評価
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不完全燃焼の男たちの腐っていく性(さが)
夢を追っても、それを実現できる才能や根気に欠け、そのうち自分は何しているんだっけと自信も失って、ますます才能を枯渇させていく人は多く、どこかで平凡なところで妥協して生きていく人が、ほとんどではないか。この諦めも着かぬ人は腐っていくが、その腐敗から逃げた平凡な私たちは、実際どこまで腐っていくか、覗いてみたい気もする。それを見せてくれる映画かもしれないが、自分が腐るだけでなく、他の人も道連れにするのが辛い。もちろん、綾野剛、柄本佑というキレキレの男優二人の共演であり、腐った人間といっても画面はキレイなものだが、力演している、女優としてはこれからのさとうほなみが、二人との対照で余計に切なく見える。虚実とり混ぜのエンディングは好き嫌いは分かれようが、一般映画には十分なエロス、酒場の雰囲気も十分に楽しめる。自分の人生の全体が見えてきた中高年にも染みる。
「さよならの向こう側」は反則技
2000年に発表され、同年の芥川賞を受賞した松浦寿輝の同名小説を映画化したものでした。原作未読で詳細は分かりませんが、映画の舞台は2012年から13年に掛けての時期であり、民主党政権から自民党政権への政権交代や、東京五輪招致と言った時事的な話題が、世の中が「腐る」という本作の主題の象徴的な出来事として挿入されており、荒井晴彦監督の政治的スタンスを多分にまぶして語られることから、原作に一定の手を入れた上での映画化だったと思われます。
物語としては、ピンク映画の監督である挧谷(綾野剛)と脚本家の伊関(柄本佑)がひょんなことから出会い、伊関のアパート、そしてスナックで互いに昔の彼女のこと、仕事(ピンク映画)のことを中心に話していくうち、実はお互いの彼女は桐岡祥子(さとうほなみ)という同一人物だったことが分かるというもの。観客は端からそのことを知っているため、互いの元カノが同一人物であることが判明したこと自体に驚きはありませんでしたが、2人がそれと認識することになった理由が、ピンク映画を題材にした映画らしく、ニヤッと笑ってしまうものでした。
また、祥子は映画冒頭で別の男と心中していますが、祥子と同棲していた頃の2人の回想シーンはカラーで、2人が語らう現在のシーンはモノクロで描かれており、これがまた非常に情緒深い演出でした。
俳優陣としては、綾野剛、柄本佑、さとうほなみの3人の登場シーンがほぼ全てを占めるものでしたが、3人とも表現が素晴らしく、かつ色気ダダ洩れでウットリとさせられました。R18+指定の名に恥じず、セックスシーンも惜しげないものでしたが、お三方とも非常に綺麗な肌艶をされており、これは見習わないとアカンなと思った次第でした。無理だけど(笑)
ところで題名である「花腐し」ですが、誰がどう読んでも「はなくさし」だと思われるところ、実際は「はなくたし」と読むそうです。これは、「卯の花腐し」という言葉から来ているものと思われます。この言葉は、旧暦4月の季語だそうで、この時期に白い花を咲かせる卯木(ウツギ)の花である「卯の花」が、長雨、つまり梅雨によって腐ってしまうことを表しているんだとか。
で、本作の主題はまさに「腐る」ということで、ここで腐るのは人であり、人と人の関係性であり、そして社会全体です。祥子は心中してしまったし、挧谷や伊関もピンク映画の斜陽によりお先真っ暗。また挧谷と祥子、伊関と祥子の関係も破綻してしまった。そしてそれらを取り巻く社会も沈み続けている。そんな状況を、実に叙情的に描いた作品であり、今年観た映画の中でも1、2を争う面白さでした。
そしてストーリーや俳優陣の活躍とともに本作を特に印象深い作品にしたのが音楽。ところどころで挿入されたポップスの名曲が、まさにこの曲以外に考えられないという選曲で痺れました。山崎ハコ本人がスナックのママとして出演して、彼女の唄が流れたのも良かったし、マキタスポーツが演ずる金昌勇が劇中ギターを弾きながら唄った「君は天然色」も出色。先ほども、現在のシーンはモノクロ、過去のシーンはカラーで投影されることに触れましたが、「思い出はモノクローム 色を点けてくれ」という歌詞の通り、本作では「思い出」に色を点けてカラーにしていた訳です。
そして心を射貫かれてしまったのが、ゲスの極み乙女の一員としてミュージシャンとしても活躍するさとうほなみが唄った「さよならの向こう側」。言わずと知れた山口百恵のラストシングル曲にして、ファイナルコンサートのラストでこの曲を唄い、最後にマイクをステージに置いて去って行ったのはあまりにも有名な話。これを劇中カラオケでさとうほなみ演ずる祥子に唄わせ、さらにラストシーンで、ラストステージの山口百恵よろしくウエディングドレスを祥子に着せてこの曲を流されては、泣かざるを得ませんでした。いずれにしても、「さよならの向こう側」をこういう風に使われてしまっては、「やられた」と言わざるを得ません。というか、反則ですよね(笑)
そんな訳で、本作の評価は文句なく★5です。
名シーンかな “カラオケデュエット”
綾野剛さんのくぐもったセリフ運びに多少の違和感を感じながらシーンは進んでいくのだが、人々とのやりとりを見続けるうちに、その内なる喪失と悔恨の心情が怒涛のように迫ってくる。これぞ役作り!
綾野剛さんは「自分の役は荒井晴彦さんそのものでいいのだと気づいた」とどこかに書いておられた。当の荒井さんは「なくなっていくピンク映画へのレクイエム」と仰る。でも綾野剛はスクリーンの中で、ピンク映画にレクイエムを捧げているわけではない。ピンク映画にレクイエムを捧げる荒井晴彦にリスペクトを捧げている。そこが何とも素晴らしいのだ。
ラストシーンは現場で急遽振られたというさとうなほみさんとのデュエットだ。そのことがここでも怒涛のように押し寄せてくる。
後悔は男のものと知るばかり。
ハナクタシ、、と読む。
「火口にて」の荒削り感が好きだったので見に来た。
監督のポルノオマージュファンタジーなんで、妙に安っぽい感もあるが、世知辛い現実部分モノクロが上手くそこらへんを救って質感補っていたような気もする。あとキノコ栽培ベッドルームはなかなか四畳半サイバーな感じがカッコよかった。
時代も変わり、柄本とか最近の若手俳優達が変に事務所に縛られず、地上波ふくめメジャーマイナー股にかけ、こういう低予算映画にチャレンジして行く姿はカッコ良いと思う。綾野もぼちぼち活動再開かな、この仕事続ける気があるなら身辺整理して良い仕事して欲しい。
実は、お恥ずかしながらさとうほなみがゲス極のほな・いこかだと初めて知った。裸見てても「ドラマーの裸」に頭で変換されて妙な気持ちだった。演技はまだいらん事してる感あるが脱ぎっぷりも気持ちよく、度胸ある人だからどんどん上手くなる気がする。出演作も2000年以降からだから、不倫事件きっかけでミュージシャンとして食っていくの不安になって演技始めたんだろうか?
多少経験あったのか?
まあ、女はみな女優って言うからね。
MINAMOやNinaも見れてラッキーである。
あと、ずっとハナフシって読んでたバカすぎる私。
この映画の昭和の雰囲気は好きなのだが‥‥
ピンク映画業界への挽歌。
デンシャデゴー‼️❓アヤノゴー‼️❓
余談ですが、リンリン役の子のDVDを含めて数百のAVのDVDを購入して観てるんですが、自分ではバイアグラでもないと無理ですね。
ところで、原作を監督がピンクで改変してるそうですが、ピンクとポルノとアダルトの違いがわからないのはともかく、監督の、火口の二人、を含めて、性愛を描くのが致命的にダメですね、皮層的です。
会話が中心ですが、綾野剛はすごいです、演技とゆうか、その人そのもののようです、こんな事ができるのは、あとは鈴木亮平か菅田将暉くらいでしょうか。
彼女との関係性も皮層的に描かれていますが、綾野剛がやると、、言葉が染みてくるんですよ、彼がいないと0点かもしれません。
綾野剛の演技を観るためだけに、どうぞ。
麻薬性のある仕事とセックス
鎮魂歌
「夢終わり朽ちてなお生きていく」という、夢破れた人々の生き様を描いた作品であり、「何者かになりたくて足掻いたが、何者にもなれなかった人々への鎮魂歌(レクイエム)」みたいで。
何者にもなれなかったかなぁという自分には、観ながら面白さ1/3、つらさ1/3、どうにか生きて行かねばという決意1/3、という、かなり微妙な心境に追い詰められる作品となっていました。
また、心中や自殺はしないまでも、田舎に帰ってしまったり、病気でリタイヤしたりという、元役者志望、元漫画家志望、元同じ会社の同僚などなど、さまざまな「夢を諦めてしまった」友人知人のことも、思い出したりして。
チクリと胸の奥に棘みたいに刺さる、不思議な感覚もありました。
大瀧詠一の歌『君は天然色』では「思い出はモノクローム」でしたが、本作では逆に夢を失った今がモノクロで、夢を追っていた過去を美しいカラーで描くという、この色の使い分けが面白く、上手いなと思いました。
失われていくものへ
はっきりしない。
書き直せないあの時- - 確かに愛していたあの時
暗くてエロくて長い
人生は再び色づく
もう一度見たくなりました。
最初の恋人の実家の玄関先のシーンで綾野さんがぼそぼそ喋るのを見て、「綾野さんはやっぱりすごい役者さんなんだなぁ。」としみじみ感じました。
どんな作品でも、その役者さんが演じる登場人物は画面にいることが当たり前ですが、
綾野さんに似てるけど、目の前にいるのはまったく別人である栩谷さんという人物だという当たり前のことを強烈に感じたのは今回初めてでした。
タバコとスウェット、下駄を履いているだけでなんでこんなにかっこいいのかわからない…。
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