花腐しのレビュー・感想・評価
全70件中、21~40件目を表示
さよならの向う側
荒井晴彦さん、遺作のつもりで作ったのでしょうか。余りにも私的(詩的)で素敵な人生模様ですね。自分の人生を陳腐化して画くなんて最高です。そもそも人間なんて何をやっても、いつまで経っても後悔(航海)しなきゃいけない生き物ですから······
モノクロに褪せるほど祥子がいない今
2024年5月4日(土)初鑑賞
U-NEXTで鑑賞
監督と脚本は『この国の空』『火口のふたり』の荒井晴彦
脚本は他に『さよなら歌舞伎町』『なん・なんだ』『レッドブリッジ ビギニング』『甲州街道から愛を込めて』『週末の探偵』の中野太
ポルノ映画
粗筋
浜辺で女優の桐岡祥子とピンク映画監督の桑山篤の水死体が発見された
ピンク映画監督の栩谷修一にとって祥子は同棲相手で桑山は仕事仲間であり友人だった
栩谷は滞納している家賃をちゃらにしてもらう代わりに取り壊し予定のアパートにたった1人住みついている男に立ち退かせようと伊関貴久に会いに行った
伊関にとって祥子は初めての女で祥子にとって伊関は初めての女だった
フォーラム系の映画館でポスターを見た時に綾野と柄本と背後の女の三角関係なんだろうな
さとうほなみという女性俳優がバンバン裸になるんだろうな
なんか見透かしてしまった感じで映画館では鑑賞しなかった
137分も気になった
90分前後の内容だろうと
冒頭からしばらくモノクロが続く
モノクロ映画かなと思ったら20分くらい経つとやっとカラーになるがそれも一瞬だけでまたモノクロになる
その後たびたびカラーになる
後半はカラーの方がが多い印象
現在がモノクロで過去がカラー
モノクロで再登場は蛇足かな
なぜか吉岡睦雄演じる桑山の遺影を見たら吹き出してしまった
特におかしい写真ではないのに不謹慎だね
日本の平凡な男性に朗報
さとうほなみが惜しみなく裸になる
一方でMINAMOとNiaは現代だからモノクロ
なぜヌードはモノクロになるとアートに昇華するのか
わからない
この作品でふと疑問に思ったことがある
ピンク映画とポルノ映画に違いがあるのか
なぜポルノ映画じゃなくてこの作品ではピンク映画なのか
日本映画ではポルノ映画とピンク映画に明確な違いがある
ポルノ映画は日活のような大手制作会社が制作した成人映画でありピンク映画はそれ以外の制作会社が制作した成人映画らしい
後者には新東宝も属するようだ
それにしても日本ではなぜピンクといえば卑猥なイメージが植え付けられているのだろうか
シャア専用ザクからエッチだなあと感じることはないけど
わからない
こういう内容では映画館で鑑賞するのはしんどい
たった1人で鑑賞するのならまだいいがなかなかそうはいかない
近くに野郎が座っているのも嫌だし女なら尚更嫌だ
そういうこともあってストリップ劇場にも行ったことがない
配役
ピンク映画の監督に栩谷修一に綾野剛
売れない脚本家の伊関貴久に柄本佑
女優の桐岡祥子にさとうほなみ
ピンク映画の監督の桑山篤に吉岡睦雄
ピンク映画の寺本龍彦に川瀬陽太
祥子の父に下元史朗
祥子の母に阿部朋子
中国人留学生のリンリンにMINAMO
韓国人留学生のハン・ユジョンにNia
ビルのオーナーの金昌勇にマキタスポーツ
大久保にある韓国スナックのママに山崎ハコ
ピンク映画制作会社社長の小倉多喜子に赤座美代子
ピンク映画のベテラン脚本家の沢井誠二に奥田瑛二
とても悲しかった
主人公たち、特にさとうほなみさん、何かとっても悲しかった。カラーの最初の頃が楽しそうで生き生きしている分、はっきりと理由は明示されないカラーの後半部分、切ない。
エンドロールの「さよならの向こう側」泣けてきました。
荒井監督は、やはり脚本作品が印象的です。古くは「遠雷」とか、「ヴァイブレータ」「共喰い」とか、阪本監督作品とか。正直、監督作品は全部見てると思いますが、どれも印象なかったんですが、「花腐し」は良かったです。何か、演出してるなと言うか。最後の、原稿の大写しから、ほなみさんの幽霊(?)、そしてデュエット。とても映画的でした。
ピンクについての思い入れですが、あれは映画館に問題ありです。見てみたいなと思っても、Gさんたちの巣食う場所になってると聞かされると近寄れません。
過去がカラー映像で、現在がモノクロ映像
『思い出はモノクローム』って好きな歌だけど、
この映画の思い出はカラーなんですね。
ピンク映画業界の裏話的な人間模様のスケッチ。
友達のピンク映画監督と心中した6年間暮らした女。
その彼女を悼む男の話し。
そして男(綾野剛)がボロアパートに住み着いてる男(柄本佑)を
家主から頼まれて追い出しに行って、なぜか長い身の上話をすることになる。
そして死んだ女の思い出を語り、
居座ってる男も初体験からずうっと付き合つてた女の話をする。
そして最後に愛した女が同じ女・・・だと気づく。
主演女優の“さとうほなみ“の熱唱は彼女へのお礼?!
山口百恵の『さよならの向こう側』
明るく終わって良かった。
でないとじめじめして暗いもの。
エンドロールが…
白黒のシーンは渋くてカッコよく
カラーのシーンはやや野暮ったくみえた。
ピンク映画へのオマージュをとゆうことなので
定期的にがっっつりめに濡れ場が入るので
主に主演3人がかなりがんばっているなーと思いつつ
まぁ面白いと思えなくもないが、刺さらないといえば刺さらない映画だなーとゆう印象だったのだけど
最高のエンドロールで星1.5増しになりました。
私は綾野剛の歌演技が大好きです。
この作品はもはや、エンドロールまでの助走が本編と言っても過言ではない気がする(多分過言。)
良いシーンもあったけど、濡れ場多いので
あんまここが良かったとか言いづらい。
1人の女をめぐる2人の男とゆう部分は、女としては知らんがな。のひと言だけど、そうゆう映画なのは分かってる。
映画館で鑑賞
ピンク映画のラプソディ
現在と過去を交錯させながら、ピンク映画監督と脚本家、女優の関係がユーモアとペーソスを交えながらドラマチックに描かれている。
夢や希望があった過去の回想をカラーにして、ピンク映画が斜陽の一途を辿る現代を敢えてモノクロにした所が面白い。懐古的、感傷的と言えるかもしれないが、ロマンポルノは知らないまでもレンタルAVの興隆を知る自分にとって、この物語は郷愁に浸りながら観ることが出来た。
物語は祥子が心中した所から始まる。現在の恋人でピンク映画監督の栩谷。かつての恋人で脚本家志望の伊関。二人がひょんなことから出会い夫々に祥子の思い出を語る…というのが大まかなプロットだ。
言ってしまえば、同じ女を愛したダメ男二人の後悔が延々と続くだけなのだが、不思議と退屈するようなことはなかった。彼らの語りから、祥子の半生と心中の理由が徐々に分かって来て自然と引き込まれた。
それにしても、祥子のことを思うと不憫でならない。女優として成功すること。女として幸せになること。この二つは必ずしも相反するものではないが、彼女はその板挟みにあい、結局どちらも手にすることが出来なかった。もし…という言葉はあまり使いたくないが、栩谷と伊関がしっかしていれば、彼女を死に追いやるようなことはなかっただろう。そういう意味では彼らの罪は重い。
印象的なのは終盤の展開である。これは良い意味で予想を裏切られた。ネタバレを避けるために詳細は伏せるが、これがあることで本作は自分にとって忘れられない1本となった。幻想的なタッチに傾倒し過ぎた感は拭えないが、何ともロマンティックな幕引きで、この結末には涙せざるを得ない。
思えば、序盤で突然雨が降ってくるシーンに不自然さを覚えたのだが、もしかしたらあそこからすでに栩谷にとっての”幻想”は始まっていたのかもしれない。
この結末は観る人によって様々に解釈することが出来よう。自分は、亡き祥子が栩谷を導いたのだと思った。
監督、脚本は荒井晴彦。様々な作品で脚本を書いてきた名ライターだが、今回は自身で監督も務めている。本作には原作があるが、主人公たちの職業をピンク映画業界に設定したのは翻案だそうだ。若松プロ出身でピンク映画の現場を経験してきた氏にとって、今作は自身の投影も込められているのかもしれない。
演出は全体的にリアリズムが貫かれており、さりとて重苦し過ぎず、中にはユーモラスなトーンも入っていて観やすかった。
例えば、雨の中で栩谷と祥子が抱き合うシーンなどは非常に映画的で印象に残る。二人はここでザリガニを見つけてペットにするのだが、このザリガニというのチョイスもシュールで面白かった。
また、本作には大胆なセックスシーンも登場してくる。R18のレーティングが設定されており、一連の描写はかなり生々しい。もっとも、終盤の伊関のアブノーマルプレイは悪ノリが過ぎるという気がしなくもないが…。
脚本家出身だけあって所々に印象深いセリフも登場してくる。「愛はセックスの邪魔もの」なんて言葉を聞くと普段なら鼻白んでしまう所だが、なぜか本作ではそれもリアルに聞こえてしまった。
他に、氏が脚本を務めたした「Wの悲劇」の名ゼリフや、「卒業」、「パイレーツ・オブ・カリビアン」といった映画ネタも出てきてクスリとさせられた。
キャスト陣の身体を張った熱演も見応えがあった。栩谷役の綾野剛はニヒルに徹し、伊関役の柄本佑はユーモラスな演技で作品に上手く抑揚をつけていた。祥子役のさとうほなみの堂々たる演技も大したものである。ゲスの極み乙女のドラマーとして活躍する一方、近年は女優としても幅広い活躍を見せている。実に多才な女性である。
会話劇が妙にリアルで引き込まれる
タバコ吸ったり、酒飲んだりしながら男二人が昔の女について語り合う。
話が進んでいくにつれて、それぞれが話す女が同一人物である事がわかる。女は他の男と心中していたが、報われなかった過去を知る二人はあまり驚かず、むしろ見てる観客の方がハッとさせられる。
最後は思い出の彼女がドレス姿で近づいてきて・・・・
自分は俳優の名前をなかなか覚えないが、綾野剛は非常に印象に残っていて「日本で一番悪い奴ら」、「最後までいく」等で見てすぐに覚えた。
演じる度に全く違う人物に見えて、良い役でなくてもキャラが立っていて魅力的に見える。
今作の綾野剛も味があって良かった。タバコを吸いまくって、常に疲れてるように見せながらも、どこか優しさを感じるいい演技だったなぁ。
エロいだけじゃなく味がある
2012年、ピンク映画の監督・栩谷は、同棲してた彼女が友人と心中し死んでしまった。立ち直れず、家賃も滞納してた時、大家から別のアパート住人に対する立ち退き交渉を頼まれた。その男・伊関は脚本家を目指していたが挫折し何をしてるのかわからない謎の男だった。栩谷と伊関は飲みながら話をしていくうちに、自分たちが本気で愛した女が同じ女で、女優の桐岡祥子であることがわかった。
そして・・・てな話。
現在がモノクロで過去がカラーという構成は珍しいな、って思った。
過去の方が幸せで色が有ったという事なのかな、って感じた。
栩谷役の綾野剛と伊関役の柄本佑の2人とも飲んだくれての会話劇が面白く、祥子役のさとうほなみは相変わらず濡れ場もいとわず良い演技を見せてくれた。
MINAMOとNiaのセクシー女優も目の保養になった。
女優さとうほなみの魅力
男女の性愛を描くのに長けた荒井晴彦監督の演出によって、さとうほなみの輝きがスクリーンに照射される。モノクロの画面に心中してしまった祥子が、雨に腐る情けない二人の男の記憶の中でカラーの画面で生きた女としてよみがえる。荒井監督の好きな大滝詠一の歌が効果的に使われている。
「顔、ぶたないで。私、女優なんだから」薬師丸ひろ子「Wの悲劇」の台詞が引用される。「ヒミズ」の二階堂ふみや「タイトル、拒絶」の伊藤沙莉のときと同じく、私はこの映画で女優さとうほなみを発見した。
かつて歌手で女優だった山口百恵の「さよならの向う側」が随所に流れ、情けない男と祥子、さとうほなみがカラオケで熱唱するエンドクレジットで映画的喜びに包まれる。
ピンク映画を知らない方もぜひ🙇🙏
瀧内公美さんと柄本佑さんのセックスが抗し難い説得力を持ちキネ旬ベストワンとなった2019年の「火口のふたり」に続く荒井晴彦さん監督作。
綾野剛くん × 柄本佑くん × さとうほなみさん
芥川賞を受賞した松浦寿輝の同名小説を“ピンク映画へのレクイエム”というモチーフを取り込んで脚色したとのこと。
ふたりのクズな男が同棲していた女のことを酒を呑みながらぐだぐだと語るスタイル。佑くんは書けないAVのシナリオライターで、剛くんは撮れないピンク映画の監督。家族を養えるわけもなく。
クズな自分をクズなふたりに重ねた。
大切なひとなのに大切にすることができない。
何故に失ったかもわからない。
ホント救われない。
最低だ。
ということで、恥ずかしいので決してお勧めできないけど自分的には大切な作品になった。今年の日本映画のベストワン候補だ。
ちなみに、、、
ほなみさん、「愛なのに」に続き凄い存在感だった。
好きだった。
女優賞を総なめにして欲しい。
佑くんはピンク映画に造詣が深いから安定感抜群。
アナルのくだりは最高だった。
終始陰鬱だった剛くん。
彼が主役だった。
一番のクズを演じた。
愚かな自分が重なった。
しかしよくもこんなマイナーな作品を撮ったもんだ。
そもそもピンク映画をご覧になったことがない方にレクイエムもくそもないわけで、観る人を極端に選びそうだけど、これをきっかけに知るというのもありだと思う。
終盤の佑くんとNiaさんのからみ、そして剛くんとMINAMOさんのからみこそがレクイエム。これがR18のピンク映画ですので何卒よろしくお願いします。
「花腐し」・・「はなくたし」と読む難しさと同じくらいに意味深い作品らしい
公開前から評判も上々で、大好きな綾野剛と柄本祐の両人も同時に観れるし良いことづくめ・・と期待大で劇場へ向かう。ある女性は男性と心中してしまいます。立ち退きを迫られる側と要求する側の2人のかつて愛した女性が心中をして命を絶った同じ人物だった・・・。なんてドラマッチックな展開なんだろうと思ったりもするけれど、個人的にはなんだか女々しいダメダメな男二人の物語だった!と言うのが正直な感想でした。もしも敏感に文学的な匂いを嗅ぎ取ることが出来たのなら、思いっきり愉しめたと思う。が、残念ながら私には面白さが見つけられませんでした。劇中に何か所か東日本大震災の時のことや政治的な発言が有ったが、なんだか前後の繋がりやストリーと無関係な気がして、どうしてここでそのセリフが?と突っ込んでしまう私。
芥川賞「花腐し」を読みたくなりました。
ピンク映画に綿密なストーリーが組み込まれた様な作品。 本年度ベスト!
まさか、こんなにエロい映画とは知らずに鑑賞(笑)
お目当てだった、さとうほなみサンの脱ぎっぷりに驚くも引き込まれる(笑)
そしてメッチヤ可愛いかった。
そして綾野剛&柄本佑さんの会話劇にも引き込まれた!
綾野剛さん演じる映画監督の栩⾕と柄本佑さん演じる脚本家志望の伊関。
この2人の会話劇がメイン。
アパートから立ち退かない伊関。
ひょんな事から立ち退きの交渉人となった栩⾕。
この2人を中心に展開するストーリー。
立ち退きの交渉をするものの2人が意気投合。
酒を飲み交わしながら昔付き合っていた彼女の話で盛り上がる展開。
実は2人の彼女がさとうほなみサン演じる同一人物の女優の祥⼦。
お互いそれに気が付かず彼女との出来事を語り合う感じ。
回想シーンはかなりエロい(笑)
さとうほなみサンの体当たり的な裸の演技が凄かった。
彼女が綾野剛さんや柄本佑さんと絡み合うシーンがエロ過ぎ。
栩⾕と伊関がタバコを吸いながらお酒を飲むシーンが多目で、一体タバコを何本吸ったのかが気になる(笑)
終盤、脚本家の伊関が書いた本作のタイトル「花腐し(ハナクタシ)」の脚本がパソコンに映され、栩⾕が脚本の一部を書き直そうとするけど時既に遅しって感じ。
祥⼦が本当は誰が好きだったのかを匂わせるラストシーンが印象的。
エンドロールの歌。
まさかのカラオケでした( ´∀`)
不完全燃焼の男たちの腐っていく性(さが)
夢を追っても、それを実現できる才能や根気に欠け、そのうち自分は何しているんだっけと自信も失って、ますます才能を枯渇させていく人は多く、どこかで平凡なところで妥協して生きていく人が、ほとんどではないか。この諦めも着かぬ人は腐っていくが、その腐敗から逃げた平凡な私たちは、実際どこまで腐っていくか、覗いてみたい気もする。それを見せてくれる映画かもしれないが、自分が腐るだけでなく、他の人も道連れにするのが辛い。もちろん、綾野剛、柄本佑というキレキレの男優二人の共演であり、腐った人間といっても画面はキレイなものだが、力演している、女優としてはこれからのさとうほなみが、二人との対照で余計に切なく見える。虚実とり混ぜのエンディングは好き嫌いは分かれようが、一般映画には十分なエロス、酒場の雰囲気も十分に楽しめる。自分の人生の全体が見えてきた中高年にも染みる。
「さよならの向こう側」は反則技
2000年に発表され、同年の芥川賞を受賞した松浦寿輝の同名小説を映画化したものでした。原作未読で詳細は分かりませんが、映画の舞台は2012年から13年に掛けての時期であり、民主党政権から自民党政権への政権交代や、東京五輪招致と言った時事的な話題が、世の中が「腐る」という本作の主題の象徴的な出来事として挿入されており、荒井晴彦監督の政治的スタンスを多分にまぶして語られることから、原作に一定の手を入れた上での映画化だったと思われます。
物語としては、ピンク映画の監督である挧谷(綾野剛)と脚本家の伊関(柄本佑)がひょんなことから出会い、伊関のアパート、そしてスナックで互いに昔の彼女のこと、仕事(ピンク映画)のことを中心に話していくうち、実はお互いの彼女は桐岡祥子(さとうほなみ)という同一人物だったことが分かるというもの。観客は端からそのことを知っているため、互いの元カノが同一人物であることが判明したこと自体に驚きはありませんでしたが、2人がそれと認識することになった理由が、ピンク映画を題材にした映画らしく、ニヤッと笑ってしまうものでした。
また、祥子は映画冒頭で別の男と心中していますが、祥子と同棲していた頃の2人の回想シーンはカラーで、2人が語らう現在のシーンはモノクロで描かれており、これがまた非常に情緒深い演出でした。
俳優陣としては、綾野剛、柄本佑、さとうほなみの3人の登場シーンがほぼ全てを占めるものでしたが、3人とも表現が素晴らしく、かつ色気ダダ洩れでウットリとさせられました。R18+指定の名に恥じず、セックスシーンも惜しげないものでしたが、お三方とも非常に綺麗な肌艶をされており、これは見習わないとアカンなと思った次第でした。無理だけど(笑)
ところで題名である「花腐し」ですが、誰がどう読んでも「はなくさし」だと思われるところ、実際は「はなくたし」と読むそうです。これは、「卯の花腐し」という言葉から来ているものと思われます。この言葉は、旧暦4月の季語だそうで、この時期に白い花を咲かせる卯木(ウツギ)の花である「卯の花」が、長雨、つまり梅雨によって腐ってしまうことを表しているんだとか。
で、本作の主題はまさに「腐る」ということで、ここで腐るのは人であり、人と人の関係性であり、そして社会全体です。祥子は心中してしまったし、挧谷や伊関もピンク映画の斜陽によりお先真っ暗。また挧谷と祥子、伊関と祥子の関係も破綻してしまった。そしてそれらを取り巻く社会も沈み続けている。そんな状況を、実に叙情的に描いた作品であり、今年観た映画の中でも1、2を争う面白さでした。
そしてストーリーや俳優陣の活躍とともに本作を特に印象深い作品にしたのが音楽。ところどころで挿入されたポップスの名曲が、まさにこの曲以外に考えられないという選曲で痺れました。山崎ハコ本人がスナックのママとして出演して、彼女の唄が流れたのも良かったし、マキタスポーツが演ずる金昌勇が劇中ギターを弾きながら唄った「君は天然色」も出色。先ほども、現在のシーンはモノクロ、過去のシーンはカラーで投影されることに触れましたが、「思い出はモノクローム 色を点けてくれ」という歌詞の通り、本作では「思い出」に色を点けてカラーにしていた訳です。
そして心を射貫かれてしまったのが、ゲスの極み乙女の一員としてミュージシャンとしても活躍するさとうほなみが唄った「さよならの向こう側」。言わずと知れた山口百恵のラストシングル曲にして、ファイナルコンサートのラストでこの曲を唄い、最後にマイクをステージに置いて去って行ったのはあまりにも有名な話。これを劇中カラオケでさとうほなみ演ずる祥子に唄わせ、さらにラストシーンで、ラストステージの山口百恵よろしくウエディングドレスを祥子に着せてこの曲を流されては、泣かざるを得ませんでした。いずれにしても、「さよならの向こう側」をこういう風に使われてしまっては、「やられた」と言わざるを得ません。というか、反則ですよね(笑)
そんな訳で、本作の評価は文句なく★5です。
名シーンかな “カラオケデュエット”
綾野剛さんのくぐもったセリフ運びに多少の違和感を感じながらシーンは進んでいくのだが、人々とのやりとりを見続けるうちに、その内なる喪失と悔恨の心情が怒涛のように迫ってくる。これぞ役作り!
綾野剛さんは「自分の役は荒井晴彦さんそのものでいいのだと気づいた」とどこかに書いておられた。当の荒井さんは「なくなっていくピンク映画へのレクイエム」と仰る。でも綾野剛はスクリーンの中で、ピンク映画にレクイエムを捧げているわけではない。ピンク映画にレクイエムを捧げる荒井晴彦にリスペクトを捧げている。そこが何とも素晴らしいのだ。
ラストシーンは現場で急遽振られたというさとうなほみさんとのデュエットだ。そのことがここでも怒涛のように押し寄せてくる。
全70件中、21~40件目を表示