「女性は、男のこのナルチシズムをどう見るのかな」花腐し　La Stradaさんの映画レビュー（感想・評価）

　映画監督になりたかったが結局夢破れて自堕落に暮らす二人と男と、映画女優への道が断たれた女が過去を振り返るグズグズしたお話です。互いに傷を舐めあう様な自己憐憫の物語ではあるのですが、フィックスのカメラで真正面から捉える映像の連なりにいつしか引き込まれてしまいました。僕の中にも確かにある甘美な自己愛につい足を取られそうになってしまいます。

　ダメな人間がダメな世界に沈んで行くお話なのに、本作にはどこかそんな人達を抱きしめる様な暖かさも感じます。本作の脚本・監督の荒井晴彦さんは脚本家としてヒット作も産み、高い評価も受けて映画界の真ん中を歩いて来た方でしょうが、その人が描く売れない映画監督の話を現実に映画界から離れた元監督の方々はどんな思いで観るのでしょう。そして、荒井監督はそんな人々にどう観て貰いたいのかな。そんな事を考えてしまいました。

　一方、本作は間違いなく「男性が撮った映画だ」と思いました。女性は、男のこのナルチシズムをどう見るのかなぁ。