「人類には破滅しかないと確信する作品」ユニコーン・ウォーズ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
人類には破滅しかないと確信する作品
テディベアやユニコーンといった可愛いキャラクターに、人類の負の歴史を背負わせる寓話でした。テディベアは、現在はかつて住んでいた森を追われていましたが、レコンキスタというべきか、シオニズム運動というべきか、今森を支配するユニコーンに戦いを挑み、森を取り返そう侵攻していく。そして凄惨な戦いが繰り広げられるというお話でした。
キーとなるのはテディベアの支配層が宗教を利用して戦意高揚、国威発揚しているところで、この辺は古今東西何度も繰り返され、現在も目の当たりにしている話。そしていつも死ぬのは最前線に送られる若者たちというのもよくある話。でも本作で注目すべきは、顔に大きな傷を負って前線から戻ってきたゴルディを、これまた国威発揚のシンボルに仕立てて利用しようと企んだ支配層が、やがてゴルディのクーデターで殺されてしまうところでした。この辺りはざまあ見ろとカタルシスを感じたものの、狂ったゴルディはレコンキスタを止めるどころか、一気に加速させていくところが監督の容赦ない展開でした。
一方、ゴルディの双子の兄で、性格の優しいアズリンが、宿敵であるはずのユニコーンの子供を助けたシーンを見て、ほっと一息付いたのも束の間、ゴルディ率いるテディベア軍が侵攻してきてみんな殺されてしまう展開は、まあ予想通りとは言え、人類の未来には破滅しかないんだなと確信を得るしかないものでした。
でも一番面白かったのは、憎しみや狂気や嫉妬といった人間の負の部分の象徴であるゴルディと、優しさや寛容といった人間の正の部分の象徴であるアズリン、さらには力強さや勇敢さといったものの象徴であるユニコーンの子供が交じり合って生まれた人型の化け物(?)に付き従ったのが猿の集団だったというのが、なんとも皮肉な終わり方で納得のエンディングでした。
そんな訳で、本作の評価は★3.5とします。