「【”中途半端な人生を送っていたパッとしないラッパーが、オペラの魅力に嵌って行く様を、彼の煩悶する姿を絡めて描き出した作品。オペラをやるのに身分、社会的地位なんて関係ないのである”】」テノール! 人生はハーモニー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”中途半端な人生を送っていたパッとしないラッパーが、オペラの魅力に嵌って行く様を、彼の煩悶する姿を絡めて描き出した作品。オペラをやるのに身分、社会的地位なんて関係ないのである”】
ー 今作は、主人公アントワーヌを演じたヒューマンビートボクサーのMB14がオーディションを勝ち抜いた実際の経歴がストーリーに反映させているという。-
■ラップは巴里でも、下町の若者が愛し、オペラは上流階級に愛されているようだ。
だが、今作は下町の若者アントワーヌが、偶々オペラの練習場に寿司を配達に行った際にオペラの女性指導者ロワゾーが、アントワーヌが戯れに歌ったそのテノールの美声に惹かれて可なり強引にアントワーヌをオペラに引き込む所から始まる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・アントワーヌはラップバトルに出場するも、パッとしない。兄ディディエは闇ボクシングをしているし、クスリの横流しなどもしているようだ。
ー だが、アントワープは会計学校にも通い、現在の境遇から脱しようともしているのである。ー
・アントワープはオペラの練習にも励み、ジョセフィーヌと言う白人美女で自宅にホールがある金持と良い仲になるが、幼馴染のサミアとは疎遠になって行くのである。
ー ”ジョセフィーヌ、今宵はもう満足じゃ・・。”分かるかな?分かるかな??-
・ラップ仲間とも疎遠になる中、兄がクスリの件で警察に収監。
- 母親から掛かってきた電話に、咄嗟にアントワープは”ディディエは日本に行っている”と嘘をつく。ディディエが留置場にどう見てもオカシイ(富士山の前に清水寺がある訳ないじゃん!)日本のポスターを張って、母親と話しをするシーンは笑える。-
・オペラの練習も疎かに、学業も疎かになる中、アントワープはオペラの練習時に声が巧く出せず、女性指導者ロワゾーにこっぴどく叱られる。
ー だが、最初は嫌味な男だった金髪7・3分けの男が彼を慰めるのである。アントワープは自分みたいな下町育ちがオペラをやっても良いのかな、と悩んでいたのである。ー
■アントワープはロワゾーに2パックのCDを貸し、ロワゾ―はアントワープに蝶々夫人のCDを貸すシーンは良かったね。
音楽をやるのに貧富の差は関係ないよね。
ロワゾ―が実は末期の癌に罹っていた事も、物語に深みを与えている。
<そして、アントワープはオペラ座で、オペラ歌手としての試験を受ける。それまで距離があったサミアがアントワープの部屋で試験の事を知り、下町の仲間、皆でオペラ座に駆け付けるシーンは良かったな。その姿を見てアントワープは”トゥーランドット”の「誰も寝てはならぬ」を見事に歌い上げ、審査員や仲間達からスタンディングオベーションを受けるのである。
MB14の美声には驚くが、流石<THE VOICE>で決勝まで行っただけはある。物凄く練習したのだろうなあ・・。
今作は、”オペラをやるのに身分、社会的地位なんて関係ない!”という事を描いたヒューマン・ドラマなのである。>
<2023年8月13日 刈谷日劇にて鑑賞。>