劇場公開日 2023年11月3日

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「眼鏡が変える人生」おしょりん おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5眼鏡が変える人生

2023年11月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

単純

幸せ

ノーマーク作品でしたが、観たい作品の前に時間が空いたので、紹介サイトの内容に惹かれて鑑賞してきました。

ストーリーは、福井の農村の名家の跡取り・増永五座衛門と妻・むめが、村の活性化や地場産業づくりのため、五座衛門の弟・幸八に持ちかけられた眼鏡作りに私財をなげうって取り組み、困難を乗り越えて世間に認められる眼鏡を作り上げるまでの姿を描くというもの。タイトルの「おしょりん」は田畑を覆う一面の雪が硬く凍った状態を指す福井方言らしいです。その状態なら回り道をせずにまっすぐ進めるということから、眼鏡作りに突き進む姿を重ねたようです。なかなか味のあるタイトルです。

誰もが知る福井ブランドの眼鏡。そのルーツとともに、初期の真鍮眼鏡の作り方を知ることができ、大変興味深かったです。そこから困難を経て世に知られる存在となるまでの過程も熱いです。これに加えて、むめと幸八の恋愛要素、八郎の成長譚などのサイドストーリーもうまく絡めて、物語をさらに豊かにしています。

また、五座衛門の漢気も熱く描かれ、彼なくして福井の眼鏡産業の隆盛はありえなかったろうと思われます。もちろん彼の周囲にいた妻、弟、職人、その他の多くの人の支えがあったことは言うまでもありません。初めて眼鏡をかけた女の子が、新たな世界を目の当たりして人生を変えたように、増永眼鏡の人たちも、彼らが作った眼鏡を手にした人たちも、眼鏡によって人生が大きく変わったことでしょう。

全体的にお仕事系ムービーの鉄板展開で、安心して観ていられます。眼鏡作りにかける人たちの熱い思いに触れて、何度も涙しました。ただ、少しだけ不満を言えば、幸八の横恋慕要素は不要だと感じました。それより五座衛門とむめが支え合い、二人はさらに絆を深めたとした方がよかったように思います。むしろ幸八の頑張りが伝わりづらかったので、おそらく営業担当であったであろう幸八の奮闘ぶりをもっと描いてほしかったです。また、増永家の窮状も伝わりにくかったので、資金繰りが悪化して生活を切り詰めるような目に見える没落ぶりも描いて、そこからの一発逆転劇としてもよかったように思います。

とはいえ、使う人に寄り添うという福井の眼鏡職人のモノづくりの思いは、しっかりと伝わってきました。そんな眼鏡作りといい、冒頭の福井の紹介映像といい、福井の魅力を存分に伝える作品に仕上がっています。先日福井旅行に行ってきたばかりなのですが、また行きたくなりました。

キャストは、北乃きいさん、森崎ウィンさん、小泉孝太郎さん、駿河太郎さん、津田寛治さん、榎木孝明さんら。みなさんとてもよかったのですが、榎木孝明さんのシーンが短いながらも熱く印象的でした。

おじゃる