ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のレビュー・感想・評価
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不思議な世界観をテンポよくさくっと見るにいい映画
不思議な映画というのが初めの感想です
紙芝居ちっくな定点映像とその中の人たちが見ているこちら側にお伽話を語るような構成の映画
どこを切り取っても絵になるように作られていて見ていて目が楽しい映画でした
物語も不思議で実話だよという風に語りかけられるし、
能力習得のプロセスも具体的に書かれているのでワンチャンありそうと思ってしまえるくらいの能力。ないんですけど
思い返しても不思議だな〜〜〜という感想が似合う映画でした
? 疲れた。 もう一度見る? 英語のヒヤリングに良いかも。 日本語...
?
疲れた。
もう一度見る?
英語のヒヤリングに良いかも。
日本語の吹き替えでもう一度見た。
なるほど。
それで、ヘンリーシュガーって実在?
小説や絵本に限りなく近い映画
これまでのウェスアンダーソン映画の美術や演技にもどこか絵本のような可愛らしさがあったけれど、今回はなんといっても台詞がほぼ小説の読み聞かせのようになっているのが印象的。
映像よりも台詞で語る。
それぞれのキャラクターが小説の一人称(ないし作者)になっている。
面白いと言えば面白いけれど、あまりの台詞量の多さとその淡白さに40分以上続けば疲労感の方が勝る結果になっていたように思う。
ある意味40分の短編だからこその試み。
(20分の別の短編の「白鳥」も鑑賞。同様の試み。というより短編集の一つのような感じ。個人的には「白鳥」の方が好み)
ヘンリーシュガーの内容としては案外よくある話で、男の実存主義じみた話。
市民ケーンの時代から続くテーマ。
透視を身につける過程はわくわくしていたのに、いざ身につけてしまうと虚無感しかない。じゃあそんな時はどうするの?と。
上手く行った先の、自分の思うがままに生きた先の、虚無感。
ウェス・アンダーソンのワンダフルな寓話
ウェス・アンダーソンの新作は現在『アステロイド・シティ』が公開中だが、それに続いて早くも。
と言ってもこちら、Netflix配信の39分の短編。
小品だが、見逃すには惜しい。『ファンタスティックMr.FOX』と同じくロアルド・ダール原作で、短編集が基。
短編とは言えアンダーソン節は健在。
ある作家が話すヘンリー・シュガーという男。
大金持ちの父の遺産で何不自由なく暮らし、一切働いた事はなく、何もかも高級嗜好でギャンブル好き。
性格は…、ベネディクト・カンバーバッチが演じているので自ずと察しは付く。
決して悪人ではないが、善人でもない。劇中のこの台詞、実にズバリ的を射ている。
カンバーバッチ十八番のスマートだが、何処かピントのズレた変人。
そんな彼の人生が一変する事が…。
ある時不意に手に取った一冊の本。
目を使わず物を見る事が出来る男の記録。
…何、これ?
しかし妙に気になって読んでいくと…
著者はインドのとある病院の医師。
その医師の前に現れた一人の初老の男。彼は、目を使わず物を見る事が出来るという。
実証してみると、確かに。目隠しの状態で指の本数を言い当てる。
何かのトリック…? 男はサーカス団員でもある。
が、男は至って大真面目でイカサマや嘘を言ってる感じではない。
男はこの能力を備わった経緯を語り出す…。
男はイムラット・カーン。
10代の頃森で、不思議な男と出会う。目の前で空中浮遊…!
この男の下で修行。何年何十年掛かるか分からない。
そして身に付けたのが、目を使わず物を見る能力。
それは一体どういうものか…?
本人曰く、目ではなく、身体の別な所で見る感覚。
極めた者にしか分からないような、分かるような、でもやっぱり分からないような…。
サーカスに入り、今に至る。各国の病院を訪れ、自分のこの能力を見て貰う。何処もまともに取り合ってくれなかったが、興味を抱いたのがこの病院の医師だった。
さらにカーンの能力を知ろうとした矢先、カーンが急逝。
その奇妙な男や能力を書き記録したのが、この本なのである。
普通だったら、何だこの眉唾物と思うだろう。
が、おそらく世間というものをほとんど知らないヘンリー・シュガーは、これに衝撃とある事を思い付く。
この本に書いてある通り修行して、この能力を身に付けて、ギャンブルで大稼ぎする…!
えー、もう一度。普通だったら、こんな胡散臭い事なんてやらない。
が、おそらく世間というものをほとんど知らないヘンリー・シュガーは、本当に修行。
蝋燭を見つめて、次第に“見る”事が出来るようになって、苦節3年。
苦労も何も知らないヘンリー・シュガーがこんなに努力したのは初めての事だろう。遂にその能力を手に入れた!
早速カジノへ。念願通り大金を手に入れる。
これがフィクションの本や映画だったらどんな結末になるか…? 何か事件に巻き込まれたり、転落が待ち受けていたり…。
が、これは彼が自らを語る“実話”。そんな劇的な事は起こらない。
一体どういう着地に…?
大金を手に入れたのに、ヘンリー・シュガーの心は晴れない。寧ろ、虚しい。
これから世界中のカジノを回って荒稼ぎしても晴れる事はないだろう。何故なら、
この能力でカジノで稼げる事は分かり切ってるから。スリルもワクワクもない。
ヘンリー・シュガーは金を辺りにばらまく。その行為を咎めた警官の言葉に、雷に打たれたように。
金をばらまくほど有り余ってるなら、貧しい病院や孤児院の子供たちに寄付しろ。
これまで何もせず、不自由なくのらりくらり暮らしてきたヘンリー・シュガーに目的が出来た。
世界中のカジノを回る。同じカジノには半年開けて。同じ街にも長居しない。変装もして。
信頼の置ける会計士をパートナーにし、ギャンブルで稼いだ金を寄付し、新たな病院や孤児院も作る。
それを実行させた。今世界中には、ヘンリー・シュガーの寄付で出来た病院や孤児院がたくさん。
しかし、誰もヘンリー・シュガーの事を知らない…。
ヘンリー・シュガーは亡くなった。会計士や彼の変装に携わったメイクアップアーティストがヘンリー・シュガーの事を知らせようと、執筆を依頼したのが語り部の作家である…。
39分という短尺ながら、カンバーバッチ、デヴ・パテル、ベン・キングズレー、レイフ・ファインズと一本長編映画が作れるくらいの豪華なキャスト。一人数役。
登場人物たちが“第四の壁”を越えてこちらに話し掛け、小説の文章のように延々喋り続ける。
カラフルな構図、舞台のような美術セットが動く場面転換。
ジュールでユーモラスで、センスを感じる。こんな作品が出来るのも、唯一無二のアンダーソン・ワールド。
そこにロアルド・ダール独特の雰囲気も交じり、これは立派な現代の寓話。
アンダーソンは今後もロアルド・ダールの短編の映像化を企画しているという。
まだまだ現代の寓話の世界に入り浸りたい。
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