「最後に待ち受けるのは希望か、それとも...」ミッシング すんさんの映画レビュー(感想・評価)
最後に待ち受けるのは希望か、それとも...
※結末に言及するため、未視聴の方はブラウザバック推奨です。
行方不明になった娘を探す夫婦、その周りで渦巻く社会や報道の形を上手く切り取って収めた映画だったと思う。
物語の主軸になるのは前述の夫婦と妻の弟、そして報道局員として働く1人の社会人だが、それぞれの演技がとても良かった。特に目を見張るのは主演の石原さとみとその弟役の役者さんで、弟役の方は元々存じ上げなかったがハマり役だったと思う。イタズラ電話で警察まで駆けつけて真実を知った時の石原さとみの演技は今後見ることができるだろうか、人間が壊れる瞬間をリアルに演じていた。また、弟も罪悪感と保身の間で揺れる心情も痛く伝わってくる演技だった。
さて、物語の前半は特に社会風刺が顕著だったと思う。SNSでの誹謗中傷はもはや言うまでもないが、それの引き金になっている報道の在り方に疑問を投げかけていたと思う。中村倫也演じる報道局員は事実をありのまま伝えるのが報道であると信じる一方で、その裏では非難の的になっている人たちがいること、そしてその人のために都合の悪い真実を隠すのは、「事実をありのまま伝える」報道の在り方と反してしまう。その相反する二つを内包した報道はどうあるべきか、結論こそ出ないものの疑問を呈するには十分な描写だった。
また性差についても風刺が込められているのかなと思った。妻は旦那や報道局員に対し怒ったと思ったら、すぐに泣きながら謝って来るような感情的な行動が多くみられる。一方で夫は妻と同じ気持ちを抱えながらも淡々とやれることをやって、泣く時には妻のいないところでこっそり泣くなど、強がって常に冷静でいようとする姿が見えた。特に喫煙所で子供連れの家族をみて1人泣くシーンは深く刺さった。正直この性差の見せ方は特定の方々には不快に感じられそうだが、個人的には筋書きの中にうまく溶け込ませていて良かったと思う。
(新社会人の報道局員の女性が怒られて泣きながら中村倫也の後継者になると言っていた割に、キー局へ転職する先輩を尊敬の眼差しで見ていたのも、この表現がしたかったのかなと思う。)
物語の終わり方については不満がある方も多いと思うし、私も最初は腑に落ちない点が多かったが、よく考えてみれば映画の宣伝文句にもあるようにこれは「希望を探す」物語なのだ。きっと物語の中で、今も娘は見つかっていないだろう。ただ弟との和睦や行方不明になるも見つかった別の少女の家族からの支援、それを受けて2年経った後もなお見つかると信じてひたすら走る夫婦の姿、きっと彼女たちは絶望の中に一縷の希望を見つけることが出来たのだろう。横断歩道で少女が振り返り微笑み、それを見た石原さとみが娘がよくやっていた唇を鳴らす動作をする、これがきっと彼女にとって明日への希望を見出した瞬間なのだろう。