「天使の一撃は正確すぎて現実味がないが、それがないと重苦しくて悶えてしまう」コヴェナント 約束の救出 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
天使の一撃は正確すぎて現実味がないが、それがないと重苦しくて悶えてしまう
2024.2.27 字幕 TOHOシネマズ二条
2023年のイギリス&スペイン(123分、G)
アフガニスタン戦争下にて、命の恩人である現地通訳救出の顛末を描いた戦争映画
監督はガイ・リッチー
脚本はガイ・リッチー&アイバン・アトキンソン&マーン・デイビス
原題は『Guy Richie‘s the Covenant』で、「ガイ・リッチーによる契約」という意味
物語の舞台は、2018年のアフガニスタン・ラシュカルガ
アフガニスタン戦争にて、破壊兵器の探索を任されている一等軍曹のジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)率いる小隊は、現地の情報をもとに、疑念のある場所の探索を任されていた
ある日、新しい通訳としてアーメッド・サリム(ダール・サリム)が着任し、キンリーと行動を共にすることになった
キンリーは現地民からの情報を得て行動するものの、土地勘のあるアーメッドは情報の精査も正確で、次第に信頼を得ていく
そんなある日、ファラジ(Ash Goldeh)という男から工場の情報を得たキンリーたちは、120キロ離れた丘の上にある工場を目指した
だが、その動きはタリバンに監視されていて、隠れていたタリバン兵から総攻撃を喰らってしまう
キンリーたちは応戦するものの、敵の数に圧倒されて小隊は壊滅、なんとかキンリーとアーメッドだけは生き残ることができた
キンリーは被弾しており、アーメッドはなんとかして基地へと帰ろうと試みる
だが、タリバン支配下の地域を100キロ移動するのはリスクが高く、アーメッドは現地民のアドバイスを受けて山道を行くしか方法はなかった
敵から奪った車での移動は目立つため、途中で車と手押し車を交換する
その後も、幾度となくタリバン兵との接近や、応戦を繰り返すのちに、なんとか基地近くでアメリが軍に保護されることになったのである
物語は、前半を基地までの帰途を描き、後半にキンリーが目覚めてから、アーメッドを捜索する様子が描かれていく
捜索しようにも、滞在ビザを取れなければ意味がないのだが、移民局の動きは鈍く正規ルートではいつ承認されるかわからない
そこでキンリーは、ヴォークス大佐(ジョニー・リー・ミラー)に強引な提案をし、単独でアーメッドの探索に向かうことになったのである
現地の協力者を助けるという映画は数多くあるので、ネタとしての新鮮味はない
だが、本作は「アーメッドがキンリーを助ける過程」を綿密に描き、さらにアーメッドを救出する過程も緻密に描いていく
その重圧がリアルテイストになっているために、FOB2(天使)が登場した時の高揚感は思った以上に熱いものになっていた
あの爆撃でダムが破壊されないかにヒヤヒヤしてしまうが、性格無比の射撃でダムには一切傷をつけずに敵だけを殲滅していくので、考えるだけ無駄な作業だったりする
この辺りは「盛っている」のだが、これぐらいでちょうど良いバランスになっていたのではないだろうか
いずれにせよ、いつものパターンかのように「USA! USA!」の展開になっていくのだが、本作の場合は「道具として捨てられている現実」というものにも言及していく
バイデン政権によって、アフガニスタンから撤退したことで、タリバン政権が生まれ、それによってかつてアメリカに協力したとされる数百人の現地民が殺されていることを伝えていく
アーメッドに功績があっても、その内の一人になっていた可能性があるので、それが起こらなかったこと自体が奇跡だったと言えるのではないだろうか