「シリアス。単なる相棒物語ではない。」コヴェナント 約束の救出 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
シリアス。単なる相棒物語ではない。
2024年映画館鑑賞5作目。
「落下の解剖学」を観るつもりが、何故か公開予定から消えてしまった(地方では興行的に厳しい?)ので、急遽観た作品。
※数日経っても余韻が残る作品なので、採点を3.5から4.0に変えました(2024年2月28日)
舞台は、戦争末期の2018年アフガニスタン。舞台がこの国なら一筋縄の話にはるはずがない。タリバンと対峙するアメリカ軍人キンリー(ジェイク・ギレンホール)とアフガン人通訳アーメッド(ダール・サリム)の友情がテーマだが、この2人の演技が良い。
言葉ではなく、表情と身振り手振りで意思を通じ合う。しかし、この映画、単なるバディ、相棒の感動物語ではない。
事実に着想を得た作品だけあって、とてもシリアスで、メッセージ性を感じざるを得ない。内戦に他国勢力が介入して同胞同士が敵味方になる社会。確実な約束のない米国行きのビザと金で雇われたアフガン人通訳たち。タリバンと多国籍軍の間で上手く立ち回って命を守り金を稼ぐアフガン人(アーメッドの弟)。戦争をビジネスにする民間軍事会社。
最後は、手に汗握る銃撃戦の後、もう終わり、と2人が死を覚悟した瞬間、民間軍事会社の力(金、軍を動かすコネクション、正規軍の圧倒的火力)で2人は危機を脱する。これが現代の戦争の現実だと突きつけられる。
アーメッドは何故キンリーを命がけで助けたのか?キンリーは何故アーメッドを命がけで助けたのか?この映画では、その理由を分かりやすく呈示しない。解釈は観客に委ねるということだろう。
アーメッドが手押し車を押すことに力尽き、葛藤の涙を流すシーン。
キンリーが無事故国してもアーメッドに囚われ、「呪われた」と言うシーン。
ラストに、キンリーが見せた表情。それは、命の恩人を助けられたという安堵感だけでなく、「これでやっと呪いがとけた」という開放感を表現しているように見えた。
エンディングの米国軍人とアフガン人通訳とおぼしき人々の写真の数々。加工が施されていない人物は、恐らくもうこの世にはいない。残された人々の無事を祈るばかりである。
レビュー拝見しました。またコメありがとうございました。
道具と同じく、人間も国家も進化したような気になっている現代ですが、争いの構造は大昔から変わっていないのですよね。世界史に登場する皇帝も、現代の大統領もどうして同じ脳内構造になるのか、非常に興味深いものがあります。