アウシュヴィッツの生還者のレビュー・感想・評価
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数カ月のことが生涯心に残る大切な時間に。
アウシュヴィッツの生還者の実話。
アウシュヴィッツでナチスの娯楽としてユダヤ人同士をボクシングさせて負けた方は殺されるというまさにサバイバルゲームを勝ち残り、さらには監視をかいくぐって生還する。
数カ月のみの恋人だったレアとの思い出を生還の糧とし、アメリカに渡った後もさがすものの別の女性と結婚して幸せな家庭を築くものの、サバイバルボクシングのことがトラウマにもなるし、レアのことは忘れることができない。
先が長くないレアと再会することができ、今までのトラウマの部分が払しょくされるほどに。短い会話ではあるが、一言一言が数十年分の重みを感じる。
アウシュヴィッツには行ったことがあるが、たくさんの命が奪われて、というだけではなく、失われた命にも生還した命にもそれぞれにストーリーがある。
たくさんのストーリーをこれからも大切にしていきながら、アウシュヴィッツのことは風化させてはいけない。
最後にはわだかまりが解かれた
主人公ハリー・ハフトは、アウシュヴィッツ強制収容所における凄惨な体験からPTSDになっていた。ミリアムと結婚後も当時の記憶が悪夢となって蘇る。当時の体験から、息子アランには自分の身を守る術を身に着けさせるため、ボクシングを厳しく教えた。アランが明らかに乗り気で無いのにもかかわらずだ。そして信仰を理由に追われる恐怖を知って欲しく無い思いから、アランには自身のアウシュヴィッツにおける体験を伝えなかった。
それらは全てハリーなりのアランに対する愛情なのだろう。しかし、それが理由でアランとは距離ができていた。だが、積年の願いだった昔の恋人レアとの再開が叶い、アランにアウシュヴィッツにおける体験を伝える気になった。ラストのアランの笑顔、そしてミリアムと手を繋ぐシーンは、彼が言いようの無い鬱積した気持ちから解放され、アランとのわだかまりが解かれたことを示している。
実話がベースなのもあり、ストーリー自体はやや単調で盛り上がりにかけるが、良い映画だった。
生きるためのボクシング
2022年に公開された
アウシュヴィッツのチャンピオン と同様
看守たちの娯楽として、生きるためのボクシングを
強いられたハフト🥊
負ければ「死」あるのみの非道なゲーム。
彼らにとって忌まわしいこのスポーツを
自由の身になってからも
生活の為、生き別れとなった恋人を探す手段として
続けなければならない苦悩
ホロコースト時代と14年後のハフトを
描くことで逃れられない過去との葛藤に
苛まれる姿が痛々しくも辛いです😢
幸せな結婚をしたはずのハフトが
息子との向き合い方が上手くいかない理由も
息子を思っているからで
ラスト、過去を語ることができたあの瞬間
やっと心からホロコーストより解放されたように
前進出来たように思えました。
アウシュビッツからの生還者ハリー・ハフトの
半生を息子アラン・スコット・ハフトが綴った
実話です📖´-
生き延びても地獄
収容所から生還しても、PTSDでフラッシュバックに苦しめられ、残りの人生も地獄に近い。
痩せ細った囚人たちを戦わせ、負けた方にはその場で死を、最強王者にはその親友と戦わせる。これが単なるドイツ軍将校の余興だという…
ホロコースト関連のものを見るたび、人の残虐性に底はないのかと思う。
洗脳のせい?集団心理から?
ナチスもヒトなのに、ここまで徹底して人間性を捨てられるのが、いつも、あらためて衝撃。
そういえば「ヒトラーのための虐殺会議」で、誰かが「徹底性がドイツ人の美徳」と言っていたのを思い出した。
現在パートのハリーがお肉がダブついていてボクサーの体型ではなく、ボクシングシーンが緩い。
本物のハリーは、ロッキー・マルシアノと戦ってたんだ!?
実話ながら、レアと再会できてよかった。その後も奥様のミリアムと寄り添って生きていけたようなのも良かった。
ベン・フォスター、恐るべき肉体改造も含めて、熱演。
でも、映画はちょっと冗長な気がする。散漫というか。
ベン・フォスターの男臭さ
ベン・フォスターは地味だけど強烈な男臭さを感じさせてくれる俳優。共演する女優さんも引き立つ。
激ヤセと激太りの役作り。ストイックな俳優根性にも脱帽。ベン・フォスターをはじめて認知したのはフランスの女優兼監督のメラニー・ロランが撮ったガルヴェストン。ベン・フォスターの男臭さに惚れた。エル・ファニングはベン・フォスターの男臭い自己犠牲のお陰でまばゆいほどに耀いていた。
にしても、これがハフトの息子が出した本が原作の実話とは。
ナチの将校たちのゲス加減が半端ない。これはボクシングではない。
ホロコーストのユダヤ人は好きで減量してるわけではない。痩せこけた彼らを無理やり戦わせ、負けた方を銃殺して見せしめにする。人間の尊厳をこれほどまでに貶めることができることに驚いた。
かつてコロセウムを建造し、殺しあいや虐殺を見世物にしたヨーロッパ人にとってはこの状況はさほどでもないのだろうか?
配給されたタバコを食糧と交換し、同胞を犠牲にして生き残った主人公の罪悪感とフラッシュバックとの戦いに明けくれた人生の過酷さは想像にあまりある。ただただ恋人レアに生きてもう一度会いたいという一途な信念は執念という他はない。
情報手段として新聞と雑誌しかなかった時代にボクサーで名を上げれば、レアが気づいてくれるかもしれないという一縷の望みに賭け続けたハフト。
彼を利用してひと儲けしようとしか考えていない男たちのなか、強制収容所のユダヤ人の消息を調査する機関の女性ミリアムに支えられ、その好意に答えようとしながらも、PTSDに苦しめられ、うまくいかないシーンはナチの将校たちの遊び感覚で行われた褒美の酷さにゾッとした。
プロボクサーのボクシング映画として試合映像はいまいちだったが、あれほど激ヤセしたのだから、そのうえ、ボクシング練習も充分にするのは無理だろう。
エリザベート1878ではおてんばで自己中心的だったヴィッキー・クリープスが演じた控え目だけど芯の強い女性ミリアム。ハフトの突然の旅行計画を不審に感じる。レアに会って帰って来たハフトとミリアムのふたりを背後から撮ったビーチのカットはなんとも言えない。
父親から戦争中の出来事を聴かされたハフトの息子の立場になってみると、とても自分だけの胸に閉まっておくのは辛すぎたのかもしれない。
ナチに関する映画は何年経っても繰り返しいくつも制作される。人体実験データ収集が主たる目的だった原爆投下も同じく人間が行った蛮行なのだが、圧倒的に映画作品は少ない。被爆者の口頭伝承にはおのずと限界がある。巨額の制作費がかかるだろうが、記録映像や被曝データを解析し、独自の視点から世界に訴えることができる映像作品を作ってもらいたい。
見くびられて生きてきた人間は、それを武器にできる
kinocinemaみなとみらいにて鑑賞してきました。
ハリーを演じたベン・フォスターの、収容所時代とボクサー時代の演じ分けが素晴らしいですね。
身体の対比がすごいです。
アウシュヴィッツから生還してからも、そこで過ごした地獄のような日々がフラッシュバックする日常。
終盤には、収容所時代の一番の友達ジャンと試合を組まされ、殺すしかなかったことが明かされます。
ミリアムを演じたビッキー・クリープスも、子供が生まれてからは強い母になってましたね。
最後は生き別れたレアと再会出来て、感慨深い会話を交わし‥。
題材が題材だけに、重いシーンもありますが、私は観ても損はないと思いますね。
ただ、恥ずかしいことに私は遅刻して、本編開始1分後位に滑り込みました😅
面目ない。
つきまとう過去と忘れられない人。
アウシュヴィッツから生還したハリー・ハフトの半生の話。(実話)
過去に強制収容所に捕らわれてたハリー、生還したハリーはボクサーとして活躍をしていた...生き別れた女性に会いたい為に自分の過去、収容所のネタを記者に売り、世に広めてもらう、知り合いのツテなどから情報収集...収容所の出来事、忘れられない女性レアを探すハリー・ハフトのストーリー。
思ってた以上に楽しめました。
白黒の作品アイコン、フライヤーの感じがそそらず、スルーしてたんですが観て良かった!
観ての感想は過去にこんな事があったら簡単に忘れられないですよね!
情報収集からのレアの住所を入手、歳月が経ちハリーにも家族が出来、探してた女性レアにも家族がいたけど、お互いに忘れられない存在だったってのが観てて良かったし泣けた。
レアに会うまでは過去の記憶に悩まされてたハリー、レアに再開出来た事で全てがスッキリし、息子、妻との関係もフラットな感じになった様に見え、ラストのビーチでのハリーとミリアムの手を繋いだ後ろ姿のシーンは素敵でした!
【ナチス収容所から拳一つで生還した男が大いなるトラウマを抱えつつ、深い愛と新たなる希望を描いた作品。今作は、序盤は見ていてキツイシーンが続くが、最後半は胸が熱くなる作品でもある。】
ー ハリー・ウッドと言うポーランド出身の実在のボクサーを主人公に、愛と憎しみと大いなる後悔に苛まれる男と、彼が愛した女性達との関係性を描いた作品。-
■NYでボクサー生活を送るハリー(ベン・フォスター)はアウシュヴィッツでの体験を新聞記者(ピーター・サースガード)に語る。
兄から”絶対に語るな”と言われた内容を。
それは、彼がナチス親衛隊の娯楽の為に何度もリングに上がり、同胞のユダヤ人を倒したこと。倒された方はその場で銃殺されるために相手を殴り倒すしかなかった事など。
彼は、ユダヤ人コミュニティからの批判覚悟で、当時付き合っていた恋人レア(ダール・ズーゾフスキー)がナチスに連れ去られた後の消息を知りたかったのだ。
更には、強力なボクサー、ルチアーノとの試合をしたり・・。
◆感想
・ナチス収容所のモノクロ風景と、NYで暮らすハリーの姿をカラーで映した対比が印象的である。
ー 一見、何の不自由もない生活をしているように見えるハリー。だが、彼は常にナチス収容所での過酷な体験がフラッシュバックの様に蘇り、精気を無くして行くのである。
更に言えば、ベン・フォスターの同一人物には見えない驚異的な減量と増量は凄い。
(最初、別人が演じているのかと思った程である。)-
・レアを探すことに協力的な女性ミリアム(ヴィッキー・クリーブス:ドンドン、ビッグな女優になって行きますね。)と恋に落ち家庭を持つハリーだが、過去のトラウマのせいで、息子アランに厳しくボクシング指導したり、情緒は不安定である。
ー この辺りは、もう少し丁寧に描いて欲しかったなあ・・。-
■ナチス収容所でのボクシングシーンで親友のジョンと戦う事になったハリー。ジョンは”ドイツ兵に殺されるより、お前に殺されたい。”と言うがハリーは手が出せない。
だが、最後は彼の願いを聞き入れるシーンは沁みた。
・そんなある日、新聞記者からレアの居場所を書いたメモが届く。急な家族旅行を計画しある海岸に行くハリー一家。訝るミリアムに、”海岸に居てくれ。アランを連れてドライブに行く”と言い、レアの家へ。
ー そこには優しそうな旦那さんや女の子が居て・・。離れに居るレアの所に歩み寄るハリー。レアは病を患っていたが温かい笑顔で彼を迎え、二人は昔のようにイディッシュ語で色々な話をするのである。ルチアーノの試合の前日に結婚していたことなど。そんな二人を遠くで見守るアラン。レアはアランを見て”ハンサムね。奥さんに似たのかしら。”と言って笑ったり。-
<苛烈な経験をしながら、尊厳を失わず家庭を設け、必死に生きるハリーの姿。そして最後の最後に且つて愛した人と出会う事が出来たハリー。
彼は、浜辺に戻り、愛しているミリアムとデッキチェアーに横たわり、そっと手を繋ぐのである。
良かったな、ハリー。頑張ったな、ハリー。
今作は、序盤は見ていてキツイシーンが続くが、最後半は胸が熱くなる作品である。>
現実は非情ではあるが...
事実に基づいてつくられているため、ご都合主義の奇跡は起こらない。不利な試合では下馬評通り一方的に打ち負かされる、生き別れた恋人と再会するのはお互いが家庭を持った後である、PTSD(に加えて恐らくパンチドランカーの症状)により精神的に不安定になるなど、主人公の思い通りにならない展開が続く。しかし、このような展開が続くからこそ、最後の浜辺でのシーンが際立つ。
本作では、世界大戦時のアウシュヴィッツと戦後のアメリカといった時代と場所が異なる2つのシーンが入り混じって描かれている。大戦時のシーンをモノクロで描く表現方法は、主人公の心境を表すと同時に視聴者にシーンの変化を一目で示すことができるといった効果も兼ねた優れた演出だと思う。
(オンライン試写会に関しては念のためすべてネタバレ扱い)
今年261本目(合計912本目/今月(2023年7月度)48本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
もうきのうになりますが、fanvoiceさまのご厚意でオンライン試写会に参加できました。
実在する人物がベースであることもあり、またナチスドイツのことは周知の事実なので、あることないこと描くことはできず、その意味で半ドキュメンタリーものという見方が可能です。
ナチスドイツによる弾圧と、ボクシングに関すること(時代は大きく分けて2つ(3つ)に分けられます)がほどよいマッチで入っていたのも良かったです。この手の映画はどうしても趣旨的に終始暗めな印象になることが否めませんが、ナチスドイツに触れつつ、ボクシングに関しても詳しく描写があり良かったな、というところです。
なお、減点まではしませんが、ドイツパートにおいてなぜか英語で話している方がいます(ただ、日本では字幕で聞き取れればよいだけの話なので、どうでもいいことでしかない)。
正規の公開日にはぜひおすすめ、といったところです。
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