「たった数ヶ月」アウシュヴィッツの生還者 MARさんの映画レビュー(感想・評価)
たった数ヶ月
アメリカでボクサーとして活躍するハリー。アウシュビッツ収容所から生き延びた彼が闘い続けるのには、ある哀しい過去と理由があり…といった物語。
ナチスに連れ去られた恋人が生きていると信じ、また自分自身は収容所で生き残る為に、目を付けてきた高官に飼われるように、同胞相手に懸けボクシングをしていくが…。
実際にあった話を元に作成された映画作品とのこと。
収容所を題材にした映画は沢山観てきたが、何度観ても苦しいですね。
生きるためとはいえ、罪のない同胞に拳を叩き込み…そして負けた相手は。。
他方で描かれる戦後の生活についても、PTSDに苦しみ、設けた家庭でも良き父親になれず、戦争が残した傷跡に苦しみ続ける。
そもそもボクサーという職業が過酷だし、生きているかわからない想い人の為に闘い続けるなんてこと、自分にはとてもできないな…。仮に生きていたとしても、その記事や名前が目に留まる可能性が果たしてどれだけあるかもわからないですからね。
そして本作はキャラクター達が皆存在感際立ちますね。
ミリアムも、狂いかけのハリーを頑張って支えているし、最後はどんな気持ちだったのかな…ワタクシのような器の小さい人間には絶対ムリだな。
ハリーを気に入るシュナイダーは悪人だけど、どこか達観している感じ。どのような想いでこの戦争と向き合っていたのだろうか。
イズラエルさん、相手側ボクサーの側近でありながら、個人的な立場によりハリーにも近づき…。マルチアノ戦はどの目線で見ていたのかな。
ラストは秀逸ですね。例えたった数ヶ月だったとしても、20年以上も人生を懸けて闘う程の大きな存在になり得るんですね。色々と思う所があったなぁ~。
本当に辛い悲劇が実際にあった訳ですからね。これで良かった、なんて軽々しく言ってはいけませんが、個人的には胸にじんわりと暖かさが広がる終わり方だったかな、と思った作品だった。