劇場公開日 2023年8月11日

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「ベン・フォスターにしか体現し得ない傷だらけの境地」アウシュヴィッツの生還者 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ベン・フォスターにしか体現し得ない傷だらけの境地

2023年7月31日
PCから投稿

『グッドモーニング、ベトナム』や『レインマン』など80年代から名作を手掛けるバリー・レビンソン監督が、たとえスピルバーグ のような多作ではなくとも、80歳を超えた今こうして新作を届けてくれるのは嬉しい(ただし撮影は2019年)。本作は近年の彼の作品で最も覚悟みなぎる一作と言っていいだろう。まずもって主人公のユダヤ人収容所内での壮絶な日々をモノクロームで描き、戦後のアメリカ時代を、古いアルバムを開くような淡い色合いで彩っていく芸術性の確かさ。その上、ボクシングの死闘があり、愛する人を巡るドラマがあり、心の内側には決して消え去ることのない傷跡が刻まれていたりと、様々な要素が絡まり合って人生を紡ぐ。全ての核となるのはベン・フォスターだ。彼の痛々しいほど徹底された肉体改造と、苦しみや悲しみを心の底から吐き出そうとする人間性がしみじみと胸を打つ。激しさと繊細さと愛を織り交ぜた、味わい深い一作である。

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牛津厚信