「すごく惜しい作品。ただしすごく良いなと思う台詞もあった。」アシスタント 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)
すごく惜しい作品。ただしすごく良いなと思う台詞もあった。
MeToo運動が本格化するきっかけを作ったハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件にヒントを得て作られたんだと思いますが、日本の芸能界も某大手事務所創業者のしでかした性犯罪がようやく社会問題化したし、園子温や榊英雄や木下ほうかなど映画業界の枕強要問題もあったので、芸能界における性的暴力問題は題材がすごくタイムリーで良いなぁと思いました。
ところが、作りがとてもドキュメンタリーチックといいますが、セリフも少なくて画や編集が良くも悪くもルーズなんですよね。音楽もほとんどない。
これを良いと思う人はたくさんいると思いますが、私は逆で、もっとドラマチックに描いて欲しかったと思います。
ドキュメンタリーチックが良いなら、それはワインスタイン問題を取材したドキュメンタリーを見ればいいだけなんで。
せっかく映画にしたのにドキュメンタリーらしさを最優先する必要はあったんですかね?
だから、映画にエンターテインメントを求めている自分にはすごく惜しい作品になってしまいました。
取材で得た事実でも映画にまとめて俳優に演じさせた時点でもうフィクションなんで、中途半端にリアリティーを求めるよりもドキドキハラハラするサスペンス映画にでもしてもらったほうが良かったですね。
ただ、ラスト付近にすごく良いなと思う台詞もありまして。
それが、女性キャラクターが主人公に言った「大丈夫。彼女は賢いから彼を利用するわよ」みたいな台詞です。
これが芸能界における性的暴行事件問題の本質なんですよね。
メリットの方が大きいから性交渉を受け入れる人も少なからずいるんです。
被害者は必ずしも利用されたんじゃなくて、利用したパターンもあるんです。
監督さんもこの本質に気付いているなら、ここをもっと掘り下げてくれれば格段に面白い映画になれたんだと思います。
ただ、フェミニストからはボロカスに叩かれますけどね。
女性はいつだって被害者じゃなきゃいけないから。