劇場公開日 2023年9月1日

「津軽塗りが無性に欲しくなる」バカ塗りの娘 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5津軽塗りが無性に欲しくなる

2023年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

本作も地味な小規模作品なのだが、やはり以前に予告編を観て惹かれていた。
ちょっと似た設定(職人の頑固な父と娘の物語)の“高野豆腐店”が 非常に
良かったので益々期待を高めて観賞。

【物語】
舞台は青森県弘前。美也子(堀田真由)は津軽塗職人の父・清史郎(小林薫)と二人暮らし。スーパーで働きながら父の仕事を手伝っていた。祖父は大臣表彰も受けた津軽塗の名人だったが、家業を継いだ父は偉大な祖父には及ばず、かつ上顧客はいるものの金にはならない仕事に情熱を失いつつあった。母親は貧乏暮らしに耐えかねて家を出て行き、家業を継ぐ期待に嫌気をさした兄も家に近寄らなくなりつつあった。

美也子はこの先何をしたいか自分でも分からないでいたが、父の手伝いだけは没頭することができ、津軽塗への思いが徐々に強くなって行く・・・

【感想】
本作も悪くなかったが、“高野豆腐店”には及ばなかった。

序盤はむしろ“高野豆腐店”を上回る出だし。
なぜ津軽塗が「バカ塗り」と呼ばれるか、という説明描写から始まり、津軽塗りがどんなものかというところが説明臭くなく描かれ、思わずスクリーンに見入ってしまった。
単純だが、津軽塗の器が無性に欲しくなった。

小林薫と堀田真由の父娘も良かった。
頑固職人に小林薫はピッタリ。 堀田真由は津軽塗りにハマっていく若い女の子を演じるわけだが、“今風の普通の女の子”感と職人の世界のギャップがとても良かった。

一方で俺の評価を下げたのは後半の兄の登場。
なんでここでまたLBGTが・・・
それぞれ、自分の道を見つけて、自分の選んだ道を歩んでいくということを描きたかったのかも知れないが、別にLBGTを持ち出す必要もあるまい。
というか、作品を壊していると思う。
LBGTの人々を描く映画があっても良いのだけれど、近年あまりに映画で取り上げる作品が多過ぎることにウンザリするのと、特に本作の空気には合わないと思う。

それが無ければ本作も★5になり得たかもしれない。
もったいない。

泣き虫オヤジ