「和を尊ぶ日本人的な価値観への挑戦状」劇場版ブルーロック EPISODE 凪 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
和を尊ぶ日本人的な価値観への挑戦状
「最高のエゴイストだけが最高のストライカーになれる」という考え方は、チームワークを重視する日本のスポーツの在り方にクサビを打ち込むような斬新さがあるし、そうした考え方の下で、個性溢れる選手たちが、超絶テクニックを駆使して競い合う様には、アニメならではの見応えがある。
その一方で、登場人物が、何の努力もせずに高度なパフォーマンスを発揮できる「天才」たちだったり、主人公が、何事にも無気力で、面倒くさがりだったり、主人公の相棒が、大富豪の御曹司だったりといったキャラクター設定には、今一つ共感を覚えないし、あまり魅力も感じられない。
やる気のなかった主人公が、白熱した真剣勝負を通じてサッカーの面白さに目覚めるといった「胸熱」な展開はあるものの、友情よりも強いチームの一員になることを選択するというビジネスライクな決断には、ドラマチックな葛藤が生まれる反面、どこか釈然としないものも感じてしまった。
令和のZ世代には、こうしたキャラクターや設定がウケるのかもしれないが、スポーツといえば、血と、汗と、涙と、根性を思い浮かべるような人間には、少なからず違和感を覚えてしまうのも確かである。
劇中で、ブルーロックを潰そうとしている勢力も、きっと、こうした古臭い感性の持ち主なのだろう。
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