縁路はるばるのレビュー・感想・評価
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軽快なラブコメの衣を着た香港の現在
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ラブコメとしては、このシャッキリしないメガネくんがなんでこんなにモテるのか、テメエしっかりしろよ受け身もロクに取れてねえだろと責め立てたくなるのだが、どうもこの映画の核はそっちにはない。メガネくんが出会う5人の女性たちはそれぞれの事情で香港の中心部ではなく、いわば僻地に住んでいて、都心に暮らしそれなりにIT企業で働いている主人公とは目に見えない格差が存在している。そしてのほほんと恋したいなあくらいの気持ちでいる主人公と違って、5人の女性はそれぞれに今の香港に暮らすことについて真剣に考えているのだ。中国本土に吸収されつつあり、なんとか民主化を貫こうとした運動も弾圧される。とくに政治的に生きていなくても、そんな世相とは無縁ではいられない。突然、会社を辞めて姿を消してしまう女性が、実はガンだったと明かされる展開があるのは、あれは突然逮捕されて収監された運動家の隠喩ではなかろうか。結局メガネくんは香港に根付いた女性と一緒になることを決意する。あれは、ノンポリの彼なりに、外に出ていくよりも香港を選択した、ということではないか。そして、今の香港人に与えられたさまざまな選択肢やのっぴきらない事情を凝縮させた、とても社会的な映画なのだと思う。
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