「シチリア愛と演劇愛が詰まった映画」奇妙なこと Boncompagno da Tacaocaさんの映画レビュー(感想・評価)
シチリア愛と演劇愛が詰まった映画
イタリア映画祭の特別上映で監督とその娘で脇役の女優とともに主演のピランデッロを演じたトニ・セルヴィッロが来日して、ティーチインの回は観客もびっしり。
シチリア出身のピランデッロが代表作「作者を探す6人の登場人物」の着想を故郷シチリアの素人劇団との出会いから得たという想像によるフィクションで、脚本がよくできている。劇中劇とその観衆がまた演劇的で笑える。
舞台回しの葬儀屋の二人を演じたのも、シチリアのスピリットを大事にする舞台俳優らしく、ドタバタもどこかユーモラスかつ「ピランデッロ的」で、不条理に満ちている。昔のアグリジェントとその近郊に似せたロケ地はトラーパニとエーリチェだったようだが、いずれも私が旅した街で、風景も楽しい。最後に映画を同じくシチリア出身の作家シャーシャに捧げているのも熱い。
セルヴイッロはQ&Aで、映画と演劇の関係について「寝室が違う夫婦」と答えるなど、どこまでも洒脱でカッコいい爺さんである。
コメントする